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⑤《The Battery Man -充電器男-》

 「まずは全容把握ね。私と桜は、貴方達2人みたいに分かりやすいスーパーパワーじゃないのよね。」


 腕を伸ばしながらオリヴィアが前に出る。彼女の言う通り、発火できたり爬虫類人間になれたり、できることがハッキリしていた善名と烈子に比べて、オリヴィアと桜がやったことは身体の一部を発光させただけに過ぎない。それだけでは、何ができて何ができないのかを断定することはできない。

 本当にただ目が発光するだけの可能性もあれば、一歩間違えれば大惨事を引き起こしかねない能力の可能性もある。第一印象だけで全容を把握したつもりでいると痛い目を見ることは、若くして芸能人である自分が1番知っているつもりだと、彼女は自負している。


 「とりあえず、目以外も発光するのかどうか試そうよ。」


 「身体の色んな場所を光らせるイメージでやってみりゃ良いんじゃねえか?」


 「そうね。とりあえず色々リクエスト頂戴な。」



◇◇◇◇

◇◇◇◇



 「髪の毛。」


 ピカッ


 「顔面。」


 ピカッ


 「指先。」


 ピカッ


 「歯。」


 ピカッ


 「一気に全身。」


 ピカーッ!


 「まぶしっ!」


 「うおっ!」


 2人のオーダーに合わせて、指定された部分を次々と発光させていくオリヴィア。どうやら身体の一部分でも全身でも、好きな場所を発光させることが可能らしいことが判明。ON/OFFも一瞬で出来るらしく、前2人よりもコントロールが効きやすい能力だと言えそうだ。


 「光るだけなら簡単だわ。」


 「オリヴィアのスーパーパワーはあんまり日常生活に支障が出なさそうだね。」


 「良かったわ。ロクにコントロールも出来ずにピカピカ光られたら仕事にならないもの。」


 「なんやなんや?今のオリヴィアか?(※本日3度目の着替え)」


 「お、着替え終わったか善名。今オリヴィアの能力見てたんだよ。アタシらが言った身体の場所光らせるってんで。」


 「ジェニーも何か言ってみれば?」


 「ほんまか?じゃあv」


 「下品よ!」


 ビシュンッ!


 「うわぁ!」


 「危ね!」


 「アカンッ!」


 善名の言いかけた下品な言葉を遮るように(にら)みを利かせたオリヴィアの目から、善名の足元に向かってレーザービームが発射される。咄嗟(とっさ)に避けた3人だったが、ビームが当たった場所の地面は焼け焦げ、かなりの範囲が(えぐ)れていた。


 プスプス……


 「あらごめんない。」


 「なんやお前!散々ウチのこと危険物扱いしよってからに!お前のほうがよっぽど取り扱い注意やないか!」


 「し、仕方ないじゃない!私だってこんなアメコミヒーローみたいに目からビームが出るなんて思わなかったわよ!」


 散々文句を言われた善名がオリヴィアに反論して、激しい口論に発展。人間的に真逆な2人は、こうして昔から良く口喧嘩をする。

 そんな2人の横で、桜と烈子がコソコソとオリヴィアの能力を考察する。


 「なあ、どう思うよ?オリヴィアの能力。」


 「うーん…まだハッキリとは断定できないけどある程度は予想できたかも。」


 「マジか。」


 「うん。だからちょっとオリヴィアにやってもらいたいことがあって……お~い、オリヴィア〜。」


 名前を呼ばれ、口喧嘩を辞めてオリヴィアと善名が桜の方に振り向く。


 「なにかしら。」


 「ちょっと今から言うことやってほしくて。」


 「ええ、もちろん。桜は優しいわね〜貴方みたいに話しやすい人の言うことは喜んで聞いてあげたくなるわね!ねえ?」チラッ


 「あ"?なんや?」ギロッ


 「ま…まあまあ2人とも。今は喧嘩なんかしてる場合じゃないよ。」


 「そうだぞ。そんで桜、オリヴィアになにさせんだ?」


 「あ、うん。オリヴィアさ、手の平に光のキューブみたいなのって作れたりしない?」


 「光のキューブ?ガラスの箱みたいなものを手の平に作るイメージでってことかしら?」


 「そうそう。ゆっくりで良いから。」


 「わかった。やってみるわ。」


 桜の言う通り、心を落ち着けて手の平を凝視するオリヴィア。すると程なくして、小さな光がオリヴィアの手の平に集まって、1つの塊を形成していく。程なくして、集まった光は彼女の手の平の上で透明な光の箱の形となった。フヨフヨと浮かびながら、優しく発光している。


 挿絵(By みてみん)


 「こうかしら?アドリブでキューブの中にも結晶体作っといたわ。」


 「お〜。やっぱセンスだな。なんでもすぐコツ掴んじまうのスゲーわ。」


 「ウチの花火とどっちが凄い?」


 「僕からしたらどっちも凄いよ。」


 「うぇーいwほら聞いたかオリヴィアほらウチも凄いって。」


 「はいはい。」


 「オッケー。そしたらそのキューブを消してみて?」


 「こうかしら?」


 桜に言われた通り、手の平のキューブに意識を集中させるオリヴィア。するとすぐに、キューブは光を放って消滅した。


 「OKオリヴィア。じゃあ次は大きな壁みたいなものを作るイメージで。」


 「こうかしら?」


 両手を前に出して、意識を集中させるオリヴィア。すると再び光が集まって1つの大きな塊になっていき、一瞬で大きな光の壁が完成した。


 「それよりと大きくできる?」


 「イメージしてるけど、今はこれ以上大きくならないわね。」


 「縦10m・横5mくらいか……烈ちゃんこの光の壁を思いっきり殴ってみて。」


 「良いのか?力加減とかまだ良く掴めてねえから、どうなるかアタシにもわかんねえぞ?」


 「もちろん、オリヴィア本人には当たらない場所を殴ってね。オリヴィア、嫌だったらやらないけど、大丈夫?」


 「………信じてるわよ?」


 「………何かあったら僕が責任取るから。」


 「吹っ飛んだらウチが飛んで拾いに行ったるから。」


 オリヴィアの作った光の壁に向かって、パンチを構える烈子。力を込めた全身が、再び怪物に変身していく。


 「行くぞオリヴィア!オラァ!」


 バキィ!


 ビシビシビシビシ……パキッ!


 凄まじい勢いのパンチが光の壁に炸裂する。烈子の鉄拳が当たった衝撃で、猛烈な風が吹き荒れ、桜は数mほど飛んでいってしまう。

 が、オリヴィア本人はその場から動いていない。彼女の作り出した光の壁は、大きなヒビこそ入っているものの、烈子の放った凄まじい一撃から、しっかりとオリヴィアを守りきっていた。


 「オリヴィア大丈夫か!」


 「ええ、なんとか無事よ。結構頑丈ね。」


 「熱も通さへんねんな。」


 ボォォォ←勝手に火を当てている


 「火炎放射の許可は出してないわよ。今すぐ止めなさい。」


 「これだけデータが取れればもう断言しても良いかな。オリヴィアのスーパーパワーは「光エネルギーの操作」と見て間違いないと思う。発光したり、光のビームを出したり、光でシールドを作ったり、汎用性◎!」


 「ON/OFFが簡単だったのが1番嬉しいわ。」



◇◇◇◇

◇◇◇◇



 「よーし!がんばる!」


 大トリを飾るのはこの少年、春風桜である。彼がやったことと言えば、手の平を少し光らせただけである。他の3人と違って、判断材料が皆無に等しい。

 しかし、やる気だけは1番あるようで、両手で握り拳を作って気合十分だ。


 「いっくぞー!とりゃ!」


 元気いっぱいに両手を上げてバンザイのポーズをとる少年。その様子を3人の少女も「お〜。」と声を出して見守る。

 炎、光、変身…インパクト十分(じゅうぶん)な光景を見てきた4人の期待は自然と上がっていたのだろう。少年が一体どんなことをするのか、全員で固唾を呑んで見守った。





















 ■30 Minutes Later…■






















 挿絵(By みてみん)


 「ほ…ほら!スーパーパワーが上手く使えなくたって桜は…や、優しいじゃない!」


 「そ、そうだぞ!全然!全然なんにも悪くないぞ!アタシなんてほら!こんなバケモンになっちまってよ〜コレじゃジムにも気軽に行けねえよ!」


 「アカーーーーーン。」


 あまりの情けなさに涙する少年と、そんな彼を必死に励ます3人の少女。

 そう、確かに少年はスーパーパワーを使えたのである。

 使えたことは使えたのだ……しかし。


 「発電するだけ……僕はただの充電池人間……。」


 「スーパーパワー!スーパーパワーよ!さっきもみんなで色々試して、烈子以外の私たちも車1台分くらいなら片手で持ち上げられるくらいの力はあったじゃない!す、凄いことよ!」


 「何もできない…落ちこぼれ……(泣)」


 すすり泣く少年。一体何があったのかと言うと、先程のバンザイのあと、結局何も起きなかったのだ。

 ただただ高校2年生の少年がバンザイのポーズをしているようにしか見えない光景が数分続いたあと、何か起こっていないかと桜の身体に触れた烈子が感電したことで、「電気を操る・発電する能力」であることだけは判明したのである。

 しかし、その後の検証で色々試した結果、電気を遠距離に放ったりといったことはできず(できないことはないのかもしれないが少年にセンスがなかった)、本当にシンプルに身体にものすごい電気が流れるだけの使い方しかできなかったのである。


 「んぅ〜………(泣)」


 「よ〜し…よしよしよし……。アタシの胸で泣け。気が済むまで泣け。」


 「さっきと立場が逆転したわね。」


 「お前ら2人で慰めあっただけやないか。」


 「ただいまー!」


 「「「「 !!!!!????? 」」」」


 その時、桜の妹、桃が帰宅。もちろん桃は4人がスーパーパワーを手に入れたことなど知る由もない。そして余計な心配をかけさせるわけにもいかないため、当然スーパーパワーのことは知られてはならない。急な御帰宅に4人が焦ったのは、桜以外の3人が能力を発動したままだったからである。

 発光をやめるオリヴィア、炎状態だった髪を普通の毛に戻す善名、人間の姿に戻る烈子、烈子の胸から離れる桜(兄として情けない姿を見せたくなかった)。

 4人は急いで、誤魔化さんとする。


 「…………何やってんの?4人でニコニコして変なポーズして。」


 「な、なんでも無いよ!おかえり桃ちゃん、土日は終日練習で大変だね!」


 「あ…ありがと…今日はみんな遅くまでいるんだね。」


 「え!?ええ!今日は私たち、お泊りしようかな〜なんて思ってるのよ!ねえ?貴方たち。」


 「お、おお!そうそうお泊りな!久しぶりにな!」


 「晩飯ウチらが作ったるから、桃はゆっくりしいや!」


 「みんなどうしたの?なんかおかしくない?」


 「桃ちゃんが疲れてるんだよ!部活頑張ってるもんね〜!ね!」


 「………そうなの。ま、いいや。」


 なんとも言えないような表情のまま家に入っていく桃。なんとか誤魔化せた4人は、顔を見合わせる。


 「………もうバラさへんか?」


 「だ、駄目だよ!タダでさえ日常生活大変なのに!これ以上負担かけたら桃ちゃん本当に壊れちゃう!」


 「けどまあ……隠し通すのは無理だろうな。」


 「そうね……落ち着いたらちゃんと言うべきだと思うわ。」


 「………とりあえず今はまだダメだからね!」


 そう、少女たちはともかく、実の兄で一緒に暮らす桜がいる以上、早かれ遅かれスーパーパワーのことはバレてしまうだろう。自然にバレることを待つよりかは、自分たちから説明したほうが、ショックは少ないのだろうが…それでも今は言うべきタイミングではない。今月に高校に入学したばかりで、部活に新生活にと忙しい桃。風の噂で聞いたが、自分が不登校だということが早々にバレて、イジられることもあるらしい。そんな中で桜を心配させまいと、家では明るく振る舞っているが、嫌なことを言われた日には、夜な夜なグズっていることを兄は知っていた。

 そんな桃ちゃんに、それ以上のストレスを与えるわけには行かない!のである。

 今はまだバラさないという約束を4人で交わし、とりあえず春風邸に入っていくのだった。



◇◇◇◇

◇◇◇◇



 ■Late Night That Day … ■


 地下のラボに籠もって機械に向かう桜。時計の針は深夜2時を回っている。それでも、少年は機械に向かう。

 そんな発明中のお供は、ラジカセから響く音楽。曲はやはり"The Rubberband Man"だ。


 「まだ起きてたの?」


 そう言いながら階段を下りてきたのはオリヴィアだった。オシャレなパジャマの上から、白いケープを羽織っている姿が様になっている。


 「うん。」


 「そんなに没頭して…一体何を作ってるのよ。」


 「見たい?いいよ、オリヴィアになら見せても。」


 そう言ってラボの奥の方の電気をつける桜。

 カチャン!カチャン!と1つ1つの照明が点灯していき、ラボの奥にある真っ暗な空間にあったものが、ついにその姿を現す。







 挿絵(By みてみん)






 「何よコレ…!」


 「パワードスーツってところかな。人間が活動できないところで色々な作業ができるようにするためのアーマー的な?墜落する飛行機に飛んで追いついて、機体を下から持ち上げて落下を防いで地上にゆっくり降ろしてあげたり、火の手が回りすぎて消防隊も入れないような火事の現場に入っていって中にいる人を救出したり、雪山で遭難した人を熱反応で探知して探したり寒さを完全にシャットアウトしたり色々できるようにしてる。」


 「早口で良くわからなかったけど、人助けのためだってことはわかったわ。」


 「問題はエネルギーなんだ…さっき理論上って言ったのは、コイツを実際に着て動かすのに必要なだけの電力を(まかな)えるようなバッテリーや電池が、今の技術じゃ作れなくてさ。結局コンセントに繋いだままじゃないと、まともに動かなくて。現場投入なんて何十年、下手したら何百年とか先の話になるかも…。あとそもそも重くて普通の人間は、着ても動けないし。」


 「…………………………ねえ桜。」


 「何?」


 「いつでもどこでも限界なく発電ができる電力源と、重いアーマーを着ても普段通り動けるような力持ちがいれば使えるの?」


 「そうなんだ……だけどそんな人、今の地球上のどこ探したっていないもんだからさ…アハハ。」


 「いるじゃない。1人だけ。」


 「………へ?」


 「いるじゃない!私の目の前に!」


 「め、目の前?」


 「貴方よ!桜!貴方のスーパーパワーは電気でしょ?片手で車を持ち上げられるパワーだってあるじゃない!」


 オリヴィアの発言を聞いて、目を見開き輝かせる桜。誠意制作中のパワードスーツの下へ駆け寄って行き、胸の部分に手を当てて(つぶや)く。


 「僕がバッテリーになれば良いんだ……電気を遠くに飛ばせなくたって良い!僕なら自動的に身体で発電できるから、着ているだけで常に充電し続けられる…!見つかった…!僕のスーパーパワーの最高の使い方!」


 嬉しそうに飛び跳ねる少年。そんな幼馴染みの様子を見て、優しく微笑むオリヴィアであった。

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