⑨《Vogue -流行-》
※今回は本編開始前にヒーローの皆さんから言いたいことがあるそうです。
「ちょい待ちや。」
「あらどうしたの?」
「前回の投稿、見たか?お前ら。」
「ん?おお、登場人物紹介だろ?それがどうしたんだよ。」
「あれウチらの紹介文のあとに写真載っとったやないか。ほれほれほれほれ!これ!」
「載ってたな写真。それがどうした?」
「これ見てぇな。」
「これウチものごっつエエわ。」
「あ〜…なるほどな。もう自慢したい…わけなお前は。」
「貴方まだ良いじゃない。私なんてこれよ。」
「これ先月出た私の写真集の水着のページの写真じゃないこれ。え、なん…なんでこれなの?」
「それはお前アレやろ、乳デカいからやろ。」
「は?私も貴方たちみたいにスーパーパワー使ってる写真が良かったんだけど。」
「いやしゃーないやんか。タダでさえ表現しにくいスーパーパワーやねんから。」
「いやいや、いやいやいや、良くないわよぜんっぜん良くない。だいたいなんでコレなの?もっと他にあったでしょ。」
「まあまあまあ、良いじゃねぇかお前ら。アタシなんて見てみろよほら、もう完全に怪物の写真だぞ?コレ。もう元の顔なんて、読んでるヤツら誰も覚えてねえよ。」
「お前が1番映りええやないか。」
「ね。カメラ目線でポーズなんかしちゃって。自意識過剰なのよ。」
「お?なんだお前ら、ムカつくな今日は。」
「おーい!どうしたの?」
「あ!桜じゃない。聞いてよ、前回の私の写真が」
「あー………良いんじゃない?3人とも良い写真で…………。」
「なんで貴方そんなにテンション低いのよ。」
「見るからに落ち込んだなコイツ。どうしたお前もなんか納得いかねえ写真にされたのか?」
「あ、ウチ見たで桜の写真。たしか…ほい。」
「春風桜の部分が1つもないんだよ?もう僕じゃなくて良くない?誰でもいいじゃん。」
「………あー…えーっと……か、カッコいいじゃない!謙虚であなたらしい良さが出てるわよ!」
「せ…戦闘機より速えー!スゲー!ってなる良い写真だと思うぞ!アタシなんて見てみろよ!もう変身後の写真しか載ってねぇんだぞ?あ…あーあー!アタシの本当の顔覚えてるヤツなんて何人いんだろーなー!」
「桜である必要性無いなぁ。」
「良いよ……慰めなくて………。」
「ほ、ほら私の写真なんて写真集のヤツをそのまま…。」
「あ、僕この写真好きだよ。このオリヴィアの写真集の中で1番好き。」
「え?ど、どうして?」
「えー?だって………」
(水着だからかしら………/////)
(乳デカいからやな。)
(オリヴィアが好きなのか?)
「1番オリヴィアの笑顔が良く撮れてるから。」
「そうか……ごめんな桜。今すぐアタシらをボコボコにしてくれ。」
「なんで!?嫌だよ!?」
※烈子さんの通常時の写真置いときます。
「そんな感じで添えるなよ!」
↓以下、本編↓
「おい!」
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■1979.May.07:45■
ある日の平日の朝、少年は音楽を聴き、新聞を読みながら陽気に鼻歌を鳴らしていた。
「『ハイパーマンまたも出現!車で逃走の強盗捕まえ逮捕に協力!国は謎の4人組ヒーローの行方追う。』……か。エヘヘ。」
「また"The Rubberband Man"?っていうか珍しいねお兄ちゃん、新聞なんか読んで。」
「へ?う、うん。ちょっとね…。」
平静を装った少年。この新聞に書かれている記事…そしてそこに写っている写真のヒーローが、自分であることは絶対に妹にバレてはいけない。
そうなのだ。あの豪華客船、ロイヤルオーシャン号の一件から早くも2週間が過ぎ、世間はすっかり、謎のヒーロー4人組の話題で持ちきりになってしまった。
あれ以来、パワードスーツを着て街に繰り出しては、道を渡る前に信号が変わって轢かれそうになったおばあちゃんを助けたり、ビルの工事現場から落ちてきた鉄骨をキャッチして通行人を助けたり、車で逃走する強盗を車ごと止めて捕まえたりと、地に足をつけて地道に活動を続けていたのだ。
他の3人が学校に行っている間にも、人助けを繰り返しているうちに、すっかり世間の人気ものになってしまった。
最も、少年が嬉しそうな理由は、有名になったことではなく、助けた人たちがその後も無事に生活していることをインタビューで知れたことによる物だが。
「誰なんだろうね?その人たち。」
「う、うん……誰なんだろ。意外と身近にいる人だったりして…エヘヘ。」
「何でそんなニヤニヤしてんの?変なお兄ちゃん。それより見て見て!次のチアの大会、モモ、1年でチームに選ばれたんだよ!ほら!」
「へ〜!凄いよ桃ちゃん!ウチの高校、全国的に有名なのに1年でレギュラー…ん?」
妹から見せてもらったチアのユニフォームを見てギョッとする桜。
「………こんなんだったっけ。チア部のユニフォーム。」
「うん!今年からデザイン新しくなったんだって!モモがセンターのパートもあるんだよ!」
「そ……そうなんだ(露出が多い)…!」
「だから……お兄ちゃん見に来てね?」
「うん……頑張って見に行くよ…。」
「…………行きたくない?学校の人がいっぱい来るから?」
「……………頑張るから。」
「………うん…。」
◇◇◇◇
◇◇◇◇
今日も今日とて、ラボに籠もって発明に没頭する桜少年。その目の前には当然ながら、ハイパーマンのパワードスーツがある……のだが、今日開発している物はそちらとは全く関係ない物だ。
(不燃性の素材と……あとは伸縮性…かつ、できるだけ見た目がスカジャンに見えるような…よし。)
親に頼んで、アメリカから取り寄せた特別性の素材や成分を解析して、服の形にイメージ画像を作っていく。
プレゼントする人が気に入ってくれると良いが…そんな思いを胸に、性能だけでなく見た目にもこだわった服が、ロボットアームによってどんどん形になっていく。
(こっちは……付属するバングルで操作して、光を屈折させることで透明になれる光学迷彩のカーディガンとロングスカート…見た目も大人っぽくて落ち着いた感じに…と。)
設計図とにらめっこする少年。そこにはいつにも増して真剣な顔で発明に向き合う男の姿があった。
特にスカジャンの方。いちいち全裸になっていたらジェニーが可哀想だ。風邪を引いてしまうかもしれないし、何より年頃の女の子が、人前で裸になる可能性を孕んでいるなんて、とてもじゃないが放っておけない由々しき事態だろう。
だから、どれだけ身体が燃えても絶対に大丈夫な服を作ってあげたい。そんな思いを胸に、少年が研究を続けていると──────
ピピピピピピピピピピ!
「お。」
研究室の机に置いていたタイマーが午前10時を知らせる。それと同時に急いで立ち上がる桜。小走りで向かった先には、もちろんパワードスーツ。
「パトロールの時間だ。」
ヒョイッ…とパワードスーツの中にすっぽり収まるように後ろに軽くジャンプする桜。少年の身体がピッタリとスーツの中に入った瞬間、スーツの開いていた部分が一斉に閉じ、マスクがガシャン!と音を立てて閉まる。
ウィィィィィン………!
丸型の天井が2つに割れるように開き、少年が乗っている台が、開いた天井へ向かって上っていく。
そして少年が身体に力を込めてスーパーパワーを使った瞬間、パワードスーツの線部分が光り輝き出す。
そして、背中のジェットエンジンから勢い良く火花を散らすと、少年の身体は中に浮き上がった。
「それじゃあ、パトロールへレッツゴー!」
シュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
次の瞬間、凄まじいスピードで前に進む少年。ここからは春風桜ではなくハイパーマンとして、街に繰り出す時間だ。澄み渡る青空の中、風を切ってスーパーヒーローが飛んでいくのだった。
◇◇◇◇
◇◇◇◇
──────東京都内。
「アレは………煙?大変、火事だ!」
高層ビルから黒い煙が何本も立ち上っている。集まるパトカーと消防車を遠くから視界にとらえる。
接近しながらズーム機能で現場の状況を確認すると、燃えるビルの窓から女性が助けを求めている。
しかし、消防車の梯子では到底届かない高さ+救助ヘリで近づこうにも、女性がいるのはビルの中で、しかもベランダなどの足場は存在せず、壁の代わりにガラスが一面に張り巡らされたタイプの外装だ。女性の方から窓を割れば地面に落ちてしまうし、何故かレスキュー隊も中に入ろうとせず、現場は大変なことになっている。
「急がなきゃ!」
スピードを上げるハイパーマン。ビルに近づいてくる音に気づいたレスキュー隊や大衆が、飛んできたスーパーヒーローの姿を見て指をさす。
「何だアレは!」
「鳥か!ミサイルか!」
「いや!ハイパーマンだ!」
そんな彼らの声には耳を貸さず、急いで女性がいる階のガラスの前で空中停止するハイパーマン。ガラスの材質を確認し、レスキュー隊が突入できなかった理由を理解する。
(強化ガラスだ…だからレスキュー隊の皆さん、入ろうにも入れなかったのか!)
「ハイパーマン!助けて!早く!」
「わかりました!少し後ろに下がって!」
ハイパーマンが、後ろに下がるようにジェスチャーをすると、それを素直に聞いて女性がバックする。
そして女性が安全な距離まで離れたことを確認したハイパーマンが、パンチでガラスを突き破ってビルの中へ。
「大丈夫ですか!?」
「ええ……!ありがとうハイパーマン…!」
「さ、早くこっちへ!他に逃げ遅れた人は?」
「今日は私以外誰もいなかったから大丈夫よ。今日は警備員の私だけ。」
「良かった……さ、早く捕まって!下まで行きますよ!」
女性をしっかりと抱きかかえて、ビルの外に脱出するハイパーマン。そのままゆっくりと降下していき、無事に女性を救急車の前へ安全に下ろすことに成功した。
「ありがとうハイパーマン……アナタは命の恩人よ!」
「ケガがなくて良かった…それでは!」
シュゴオオオオオオオオオオオオオオオオオオ!
ジェットエンジンを起動させ、再び空高く舞い上がるハイパーマン。
再び凄まじいスピードで、ビルの間を縫って飛んでいってしまった。
辺りに響き渡る大歓声の方は全く振り返らず、ヒーローは次の助けを待つ人々のもとへ急行するのだった。
◇◇◇◇
◇◇◇◇
「あれは……いっぱいのパトカーだ。」
たくさんのパトカーが止まっている現場に遭遇したハイパーマン。
ズーム機能で見てみると、銀行強盗が子どもを人質に何かを叫んでいる。片手に持った銃を空に向けて発砲しているため、警察も迂闊に手が出せないようだ。
「あっちはまだ僕に気づいてないな…よーし!」
すると、ズーム機能からロックオンモードに視界を切り替えたハイパーマン。狙いはもちろん銀行強盗……ではなく、彼の持っている拳銃だった。
手の平に電気を集めていくハイパーマン。そして十分にエネルギーが溜まった所で、遠くにいる銀行強盗の拳銃に向かって電気のビームを放つ!
ビシュンッ!
放たれた細い電気のビームは、ロックオンされた軌道を真っ直ぐに飛んで行き、見事に銀行強盗の持っている拳銃だけを撃ち抜いた!
「よし!」
狙い通りにビームが命中したことを確認しながら、自分自身も現場に急ぐハイパーマン。
彼が到着した頃には、銀行強盗は取り押さえられ、子どもは保護されていた。
「大丈夫ですか!?」
空から現れたスーパーヒーローに向かって、現場にいた刑事が口を開く。
「遠くから強盗の拳銃を撃ち抜いたのは君か?ハイパーマン。」
「はい……すみません。」
「………いや、謝ることはない。むしろ助かった。こうして人質の子も無事だ。礼を言う。」
帽子を取って敬礼をする刑事に向かって敬礼を返すハイパーマン。
そして、その横に立っている人質にされていた子どもに声を掛ける。
「大丈夫かい?」
「うん!ありがとうハイパーマン!」
「良かった!それじゃ!あとは刑事さん達の言う事をちゃんと聞くんだよ!」
子どもに向かってフレンドリーに手を振りながら飛び去るハイパーマン。
保護された子どもは、スーパーヒーローの姿が見えなくなるまで手を振り続けていた。
◇◇◇◇
◇◇◇◇
「ハイパーマーン!」
飛行中に呼びかけられたハイパーマン。声のした方を見ると、子どもたちが手を振ってこちらに呼びかけている。
速度を落として、子どもたちのもとへ向かうハイパーマン。
「みんなどうしたの?何かあった?」
「猫ちゃーん!」
「ね、猫?」
子どもたちの中で、1番小さな女の子が指さした方向に、気から降りれなくなっている猫がいた。
「おろしてあげて〜!」
「OK!」
◇◇◇◇
◇◇◇◇
■That Night …■
「本日もハイパーマンが現れ、人々を救いました。一体彼は何者なのでしょうか?」
夕食を食べながら、テレビのニュースを見ている桜。すると、一緒にテレビを見ていた桃が言う。
「誰なんだろうね?」
「へ!?あ、う…うん。本当に、誰なんだろうね。」
「モモの予想だとね〜、すっごくカッコよくて、イケメンで、ムキムキマッチョで背が高い俳優みたいな人だと思う。」
妹の口から出る言葉の1つ1つを、苦笑いしながら聞く桜。
笑顔でニュースを見ていた妹に向かって、桜は真剣な表情で口を開いた。
「……………あのね桃ちゃん。」
「ん?なに、どうしたの?お兄ちゃん。」
「実は僕…………!」
「え、え、なになになに。」
「流石にそろそろ散髪しようかなって思ってるんだ………!」
「ああそうなの………。」