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分水嶺〜群馬の片田舎〜  作者: 木村空流樹


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37 スパゲッティ

 手押し車はコロコロ回る。


 店に入るとエアコンの冷風が顔に当たる。汗が滝のように流れ出した。暑い暑いなんてものではない。


 席に着くとお品書きをみる前に、コップの水を飲み込む。ばあちゃんとあやめは一息付いた。


「ここだべ。ここだべ……。入って観たかっただべな。スパゲッティ屋さんだべ。ご近所の渡さんが話てくれて、車ばあるだべ。直ぐに着くって言ってたけども、歩いて一時間はかかってるべ。ああ。涼しいだべな」


 ばあちゃん家にはクーラーはない。扇風機があるのみだ。


 ばあちゃんは興奮した雰囲気で話している。


「このお昼のメニューのしらすスパゲッティで良いんじゃない?」


「だべな。だべな。洒落た食べ物だべな」


「すいません〜」


 あやめは手を振った。そして、頼んだ品は直ぐ来た。お冷やを飲みながら、あやめは汗を拭っている。


「ばあちゃんは沼田城を見た事があるの?」


「ばあちゃんが小さい頃から公園だべ。石垣が少し残ってるだべ。そこいら掘り返したら、本丸の居住区が出て来て、珍しいもんも出て着ただべ」


「珍しいもの?」


「茶碗とか何かが出てきただべ。確か、戦国時代の物だっただべ」


 あやめがピクリと驚く。


「戦国時代って?矢沢武将の時代の?」


 ばあちゃんが首を捻る。


「徳川の時代は真田信之が逸話が残ってるだべ。萬燈に乗ってた小松姫の嫁いだ先だべよ。確か、真田昌幸が父親だっだだべ。」


「そっか、戦国時代って入り組んでるだったっけ……」


「矢沢武将の逸話は我が家の家系に残ってるのがあるべ。説明するのが難しいから家に帰ったら話てあげるべよ」


「え?ちょっと、聞きたい……」


 無愛想な定員がスパゲッティを持ってきた。サラダも付いている。


「わ、わ、美味そうだべ!ささ、あやめちゅん、冷める前に食べるだべよ」


 おばあちゃんはスプーンとホークを器用に使って、スパゲッティを一口サイズにして、口に運んだ。


「シコシコして旨いだべな。サラダも付いててお得だべな。なな、あやめちゃん。食べるだべよ」


 あやめは頭が回らなかった。ばあちゃんは矢沢について知っていると云った。だが、あやめが知るその人なのかが分からない。


「真田昌幸の時代は詳しくないの?戦国時代?」


「真田昌幸の時代は織田信長が本能寺の変で亡くなる前から沼田に縁がある人物だべ。武田軍武田信玄の息子の部下だべな。国衆として沼田城を建設した沼田氏の子孫、沼田顕泰が殺されたり、上杉謙信が統治しょうとして、武田軍が出てきた時代だべな。土着の国衆が蔓延ってた戦乱の時代だべ。半月で統治者が変わるだべよ」


「何か詳しくない?」


「沼田広報誌に載ってるだべ。沼田城の再建設に向けての話し合いがなされてるだべ。本丸を再現しょうとしているだべ。その繋がりで、初代藩主の真田信之が取り出さされてるべよ。それにやすこが小学校の頃、沼田史を勉強で調べてたべ」


 あやめはスパゲッティを掬った。一口食べると、チルドの味がした。


「ネットで調べられる情報なのね。じゃあ、後で調べてみるわ」


「仮設市役所のふるさと展示でも見て帰るだべか?歴史が好きなら、楽しいと思うべ。沼田について色々見られるべよ。食べたら歩くべ」


 おばあちゃんは口いっぱいに物を詰めている。いつもの食べ方と違い嬉しさが溢れていた。

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