プロローグ
プロローグ
ダンジョン、それは地球を滅ぼす悪魔の穴
ダンジョン、それは自然を生み出す奇跡の穴
ダンジョン、それは命を奪う絶望の穴
ダンジョン、それは富を生み出す欲望の穴
千九百年代初頭、世界大戦が行われようとしていた最中、それは突如として現れ、世界中を恐怖のどん底へと叩き落した。
地球の人口は十分の一以下となり、諸外国へと戦を仕掛けること等不可能となった。
各国はそれぞれ自国のダンジョン対策に躍起になり、周辺諸国の事等考える余裕は無かった。
アメリカとソ連は国土の八十パーセントを失い、中国は人の住める場所を全て失い散り散りとなった。欧州諸国は一丸となりダンジョンへと立ち向かったが、人類が住める土地の九十パーセントを失った。アフリカ諸国の人口はアジア、ヨーロッパへと雪崩込み、アフリカ大陸は人類の領土ではなくなった。
そんな中島国である日本、オーストラリア、イギリス、この三つの国だけが国土を維持し……、ダンジョン誕生から僅か一年経たずして、人類は地球の支配者から引きずり降ろされる事になった。
人類が居なくなった土地にはモンスターが跋扈し、自然が溢れ、空気が澄み渡り、砂漠が消えた。
産業廃棄物や核廃棄物によって汚染された台地は、緑豊かな自然を取り戻した。
しかし、動植物の植生は様変わりし、モンスターに狩られるばかりの動物達は姿を消し、ペットと呼ばれる文化も消え去った。
人類は風前の灯火、誰かがそう呟いたが、人類は未だ、滅びを受け入れたりはしなかった。
千九百年代初頭、滅びた周辺諸国に難民を受け入れ、ダンジョンへと調査隊を編成、大日本帝国は十数万の将兵を失う。
その十年後、帝国軍調査隊の一部帰還者が特殊な力に目覚め、ダンジョンのモンスターを蹂躙し始める。
更に五年後、最初の覚醒者が死亡、その肉体を解剖し、ダンジョンによる進化の可能性を発見、帝国軍のダンジョンに対するアプローチが変化する。
学徒動員、帝国軍は人工的に覚醒者を作り出すべく、『モンスターの生きた肉体』を当時十歳から十六歳までの子供に移植、第一次ベビーブームの到来と共に実験を拡大し第一世代人工覚醒者実験が大々的に執り行われ、日本中に活気が戻る。
更に五年後、第一世代初の暴走事故発生。周辺住民十万人を巻き添えにしミサイルによる討伐を実施、大本営迄暴走者が喰い込むも辛うじて討伐に成功、被害は数百万人にも及ぶ。
更に一年後、第一世代覚醒者に次々と暴走の兆候が見られ、第一世代覚醒者をほぼ全員を拘束、東京駅地下ダンジョンへと幽閉。
更に一年後、東京大震災が起こる。東京都を中心にマグニチュード14と想定される超大規模な地震が発生、東京は廃墟となった。
更に一年後、無人の東京に二度目の大震災発生、第一次東京大発生が起こる。東日本一帯に類を見ない凶悪なモンスター達が溢れだし、東京は自然へと還った。
同時期、群馬県防衛線決壊、帝国軍は大本営を失い、愛知県まで防衛線を後退させる。
同時期、東北から北との一切の連絡が途絶える。
五年後、大日本帝国軍解体、日本自衛軍へと名称を変更、指揮系統の再編を行う。
同時期、日本国、民主主義政策を試験的に一年間取ったが、日本人には未だ早いと断念、最後の皇族尊様を擁立、新しい日本として、新日本国建国。
千九百年中頃、第二次ベビーブーム到来、この頃からほぼ全ての資源をダンジョンから得る時代へと変わり、農家が激減する。
同時期、第一次覚醒者と思われる人類が東京ダンジョンを脱出、東京を再建し始める。
同時期、新日本自衛軍ダンジョンへの攻勢を開始。
二十年後、自衛軍の奮闘により群馬県防衛線であったはずの場所を奪還、未知の建築物を発見。
同時期、『新日本魔窟総合研究所』設立、初代所長に尊様の御子で在らせられる、恒様御就任。
一年後、第一次大阪大発生発生、勇敢に臣民をお守りになられた尊様御崩御。
同時期、尊様の御長女で在らせられる、祷様二代目新日本国天皇陛下へと御即位。
同時期、《いの》祷様指揮による、人類総衛士化計画発動。新日本魔窟総合研究所主体の第二次人工覚醒者計画が始まる。
同時期、人工覚醒実験への抽選から漏れた臣民へと、ダンジョンへの開放が開始、監理の為に魔窟討伐省設立、便宜上冒険者組合と呼ばれる。
十年後、東京から大阪へと入電、ワレ・トウキョウ・ダッカンセリ
それから数年後
大正百年、西暦二千十二年
第三世代覚醒者と呼ばれる世代が、産声を上げたたと同時に、更なる思惑が動き出す。