表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
冬の山小屋の中で  作者: ツヨシ
1/2

山に登った。

真冬に。

夏だろうと冬だろうと、山に登る。

今日の天気は快晴と言うことだったのだが、山の天気はまるであてにはならない。

吹雪だ。

前がよく見えない、と言うよりも、目もまともに開けていられないほどの猛吹雪だ。

それも突然に。

さっきまで雲一つない青空だったと言うのに。

――確かこの近くに山小屋があったはずだが。

絶望的なほどに視界が悪い中、なんとか小屋にたどり着いた。

もう運がよかったとしかいいようがない。

転がり込むように中に入る。

入ると、隅に男が寝ころんでいた。

目を閉じて仰向けに。

服装から登山者のようだ。

この山小屋は登山者以外が利用することはまずないのだが。

「ちょっと失礼します」

返事はない。

どうやら眠っているようだ。

とりあえず荷物をおろして座る。

そのまま男を見ていたが、微動だにしない。

寝返りもなければ寝息も聞こえてこない。

寝ていると言うには違和感がありすぎる。

――ひょっとして……。

俺は男に恐る恐る近づいた。

口と鼻に手を当てる。

男は息をしていなかった。

念のため脈をみる。

なかった。

つまりこの男は死んでいるのだ。

――ええっ!

でもどうしてだ。

少し前までは完全に晴れていたのに。

遭難して死んだとしたのなら、あまりにも早すぎる。

崖から落ちたと言うわけでもなく、この男は山小屋で死んでいるのだ。

戸惑った。

迷った。

見知らぬ死体なんかとさして広くない山小屋で、一緒にいたくはない。

当然だ。

そうかと言ってこの猛吹雪の中、外に出るわけにもいかない。

そんなことをすれば、自分が死体になってしまう可能性が高いのだ。

それはいくらなんでもできない相談だ。

腹を決めた。

このままここにいよう。

やせた中年男の死体と一緒に。

相手は死体だ。

動くこともしゃべることもないのだ。

一旦そう決めると、思ったよりも落ち着きを取り戻してきた。

おまけに眠い。

疲れているのだ。

死体を見ていたが、俺はやがて眠りについた。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ