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[超短編] 5分でキュン♪

えんぴつ返して!!

作者: まえのそら

彼には、借りたえんぴつを返せない理由があった。

小学6年生、もどかしい2人の恋物語。


「あのさ、拓都くん! 

  この前貸したえんぴつ、返して!! 」


登校するとすぐに、彩渚(あやな)は、隣に座る拓都(たくと)に声をかけた。昨日よりも、少し強い口調で。


「あ……、忘れた」


「え〜、今日も? もう何日も経つじゃんか!

なくしたんでしょ?! 」


「なくしてはない! 明日持ってくる」


拓都は動揺しているのを隠すため、必死で平静を装った。なぜなら、制服のポケットには、返すはずの鉛筆が、もう何日もずっと入っていたからだ。


その鉛筆の先には、


「好きだ」


こすれた字で、そう書いてあった。

慌てて消そうとしたため、字がすれて不恰好になっていた。



彩渚と拓都は、幼稚園から小学6年生までの長い付き合いだ。姉同士が同級生と言う事もあり、低学年の頃までは、よくお互いの家で遊んでいた。

しかし、いつの頃からだろうか、何となくお互いに気まずさを感じでいた。


彩渚は活発な女の子で、なんでも思った事をハッキリと言えるタイプ。学級委員長なんかも任される、しっかりものだ。


一方、拓都はお世辞にも頼りになるタイプではなく、いつもクラスの男子達とヘラヘラとしていた。


「先帰ってて! 先生に頼まれたやつ出したらすぐ追いかける! 」


その日の放課後、彩渚は友達にそう伝えると、そのまま机に座り何か書いていた。


「何のやつ? 」


拓都が帰り際、机を覗き込み声をかけた。


「球技大会のやつ、集計してクラスごとに希望ださんといけん 」


「ふ〜ん、大変そう 」


拓都はそれだけ言うと、いつも通り友達と教室を出て行った。


10分くらいしてからだろうか、拓都が1人走って教室に戻ってきた。その手には、彩渚に返すはずの鉛筆が握られている。

彩渚しか残っていない静かな教室に、拓都の息遣いが響く。


「これ、やっぱり返す! 汚してなかなか返せんかった! 」


拓都は真っ赤な顔で、鉛筆を差し出した。


書いてある文字に気がついた彩渚の顔も、段々と赤く染まっていった。


「ごめん、ボールペンで書いたけぇ、こすっても消えんかった 」


そう言って謝った拓都に、彩渚はお道具箱から油性マジックを取り出すと、こう言った。



「ちゃんと分かるように、

  マジックでなぞって!」



2人は職員室に立ち寄ると、急ぐ事なく、ゆっくりと一緒に帰り道を歩いた。


少しでもお楽しみいただけましたでしょうか?

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― 新着の感想 ―
[良い点] 初めまして! とても素敵なお話でした!! ぎこちない恋心、と思いきや、女の子のほうはおませさんでカワイイ(*´艸`*) えんぴつを返せない理由が盲点でした。 [一言] もし意図されてのこと…
[良い点] なんてマセた小学生なの〜! ふいうちの方言にやられました(><)
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