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第三話 【刺殺】



 

 「凛花ちゃん、その手元にある銀色の物体は何かな?」


 国の上級国民だけが通う聖ラリアール学園の生徒会室で学園の王子様ーー如月雪橙が微笑んで問う。


 「先輩を刺殺する為に作らせた特注のナイフです!」


 学園のお姫様ーー東雲凛花が笑って返す。その笑顔は天使のように愛らしいが、言っている事は非常に物騒である。


 「フフッ、面白い冗談だね」


 「ウフフ、冗談だと思うなら試してみますか?」


 僅か数十秒の間にお姫様と王子様の静かな攻防戦が行われる。


 ーーお姫様は王子様を殺すために、王子様はお姫様に好きになってもらうために。


 そのためにこの二人は他の生徒会役員が帰った生徒会室で殺し合いを始めるのだ。




 放課後の生徒会室に静かな殺気が張り詰める。


 凛花がゆっくりと雪橙との間合いを詰め、雪橙はナイフの軌道を慎重に読み取っている。


 「はっ!」


 雪橙との間合いが大股3歩ほどになった時、凛花が床を思いっきり蹴って雪橙に近づく。


 雪橙との距離が後1メートルあるかないかくらいになった瞬間、凛花は手に持っていたナイフを大きく振りかぶって雪橙の胸元に当てようとする。


 「ほっ!」


 ナイフが当たる瞬間、雪橙は自身の体を大きくひねって右に動き、ナイフをかわす。


 (ナイフの軌道、読んでて正解だったね。)


 冷静に思考を巡らして、凛花の次の挙動を予測する。


 (多分、凛花ちゃんは一回体制を立て直すはず。その隙に僕は間合いをあけよう。)


 今での凛花以外に暗殺されかけた経験が生きてくる。だてに暗殺されかけた回数が三桁を越えていないのだ。


 (かわされちゃいましたか。次はどうしましょう。このまま連撃すべき?それとも一度体制を整えなおすべき?)


 空振りした姿勢のまま、凛花は思考を巡らす。


 (う〜ん、どっちがいいかな。確実に仕留めたいからなぁ。まぁ、一度体制を整えなおすべきかなぁ。‥‥‥‥‥‥よし、決めた!)

 

 自分の出した結論を信じ、凛花は空振りした姿勢から足を九十度動かし、雪橙の方を向く。


 そしてそのまま床を蹴って雪橙の喉元を狙う。


 (えっ!?これこのまま連撃を入れるの!?)


 予想外の行動を起こされ雪橙が動揺し、僅かに隙ができる。


 (よし、先輩に隙ができた。このまま、首を掻っ切る!)


 勝利を目前にし、凛花の口角が自然に上がる。


 (不味い、隙ができちゃった。ナイフは‥‥‥‥完全には避けられないな。‥‥‥‥なら!)


 凛花のナイフがあと少しで喉に刺さる時、雪橙が凛花の手を掴み、横にずらす。


 「‥っ!」


 ピッ、と音がして雪橙の美しい顔に一筋の赤い線が広がる。


 (よし、ナイフはかわせた。それでこのまま、)


 「はっ!」


 そう叫ぶと同時に、雪橙は自分の長い足を活かして凛花に軽い蹴りを入れた。

 勿論、凛花の体に傷をつけないように、細心の注意を払った。


 「あっ、」

 

 そう小さく叫んで凛花はバランスを崩し、倒れた。

 それと同時にカランカランと小気味良い音を立てて凛花が持っていたナイフが床に転がる。


 (今だ!)

 

 床に転がったナイフをすかさず雪橙が拾い上げる。


 これでもう、凛花は雪橙を傷つける手段を失った。


 「‥僕の勝ちだね」


 軽く微笑んで雪橙が告げる。


 「あ〜あ、今日も負けちゃいましたかぁ」


 蹴りが入った脇腹をさすりながら起き上がった凛花が不服そうに話す。


 「まぁ、今回は僕の状況判断能力が素晴らしかったからね」


 「レディに蹴りを入れる事のどこが素晴らしい状況判断能力何ですか?」


 「まぁ、そこは凛花ちゃんが僕を殺そうとして来ているし、おあいこって事で」




 ーーコンコン


 「失礼します。お嬢〜帰らないんですか〜。」


 二人が軽口を叩いていると、生徒会室の扉がノックされ、外から赤色に近い茶髪の青年が入ってくる。


 身長は雪橙より頭一つ小さく、どこか大型犬のような印象を受ける。


 「神原、迎えに来てくれたのね」


 先程まで雪橙と交わしていた年相応の軽口は引っ込み、代わりに大人びた主人の口調が出てくる。


 「あぁ、先輩紹介します。彼は神原秀(かみはらしゅう)。私の付き人です」


 「どうも、神原ッス。」

 


 礼儀正しい凛花の声とは対照的に秀の声と話し方は礼儀?なにそれ美味しいの?と、言った風である。


 「それじゃ、先輩私帰りますね」


 そう言って凛花は鞄を開き、帰り支度を始める。


 そんな凛花を尻目に秀はズンズンと雪橙に大股で近づくとこう言った。


 「貴方がお嬢の殺し相手なんッスよね?」


 「まぁ、そうだけどどうかしたのかい?」


 総理大臣の息子にここまで馴れ馴れしく喋りかけられるのはその鈍感さ故だろう。

 いや、そもそも雪橙が総理大臣の息子なのか知っているのかどうかすら怪しい。

 

 「お嬢がいつもお世話になってるッス!ありがとうございますッス!」 


 と、大声で話した。


 (殺し合いをお世話になっているねぇ。)


 「あぁ、うん、どうも」


 どこかずれた感性に雪橙が内心呆れつつも、外側は笑顔で返す。 


 あっそうだったと秀が呟き、凛花の方を確認すると小声で


 「後、お嬢が貴方に出会ってからなんだか楽しそうなんッス。いつも屋敷では無表情で冷めた目をしていたんッスよ。」 


 今の表情豊かな凛花からは想像できない事が秀の口から出てきた。そのことに雪橙が少し驚いていると


 「だから、最近は屋敷でも楽しそうにしてくれて俺たち従者も嬉しいんッスよ。」


 と、秀が話した。その口調と顔からは凛花の事を大切に思っている従者ならではの感情が伝わってきた。


 「秀、帰るわよ」


 帰り支度を終えた凛花の声が響く。


 「ウッス、車は用意してあるんで早く玄関に行きましょう。」

 

 「では、先輩また明日」

 

 その言葉を最後に凛花と秀は生徒会室から出て行った。


 


 (凛花ちゃんが屋敷でも楽しそうにしている?僕に出会ってから?‥‥‥それってもしかして脈アリなのでは?)


 微かな希望を胸に抱きつつ、誰もいなくなった生徒会室で雪橙も帰り支度を始めるのであった。




 




 

新しいキャラの秀君、可愛がってあげてください。

閲覧ありがとうございした。

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