表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
4/6

第一話毒殺[後編]


 「僕が告白を断れば済む話だろう?」

 

 この話が生徒会室で出てから約三日、雪橙と凛花は毎日、生徒会の執務が終わった後に会議をしていた。

 議題はどうやって椿から告白されるか、である。


 「うーん、そうだね、告白される場所は中庭辺りでいいかい?」


 学園の王子様ーー雪橙がお姫様ーー凛花に向かって笑顔で話す。その口調はゆっくりしていて、そのまま世間話に話題転換しそうな雰囲気だ。


 「そうですね、じゃあ昼休みにでも告白してもらいましょう。多分、明日には告白するように仕向けられます。」


 対照的に淡々と無表情で状況報告だけを済ます凛花からは早く椿ちゃんと一緒帰りたい。という思いがひしひしと伝わってくる。


 それよりも、


 (早すぎでしょ‥)


 凛花のたった三日で告白をさせるように仕向けるという有能っぷりに驚きと若干引きつつ、表面上では平静を保って言葉を発する。


 「そうだね、じゃあ今回はこれで終わりだね。」


 「はい、ありがとうございました。」


 その言葉を最後に凛花は椿と帰るために一目散に生徒会室を出ていった。


 (もう少し、ゆっくりしていってもいいのに‥)


 誰もいなくなった生徒会室で雪橙は一人寂しくため息をついた。



 ◇◆◇◆◇


 リーンコーンカーンコーン


 聖ラリアール学園の昼休みを告げる鐘が鳴り、授業の終わりが終わる。


 それと同時に、


 「凛花様、お昼ご飯、ご一緒しません?」


 「いえ、凛花様、私と一緒に!」


 「何を言っているの!?凛花様は私と食べるの!」


 女子生徒が我先にへと凛花の周りに群がる。


 それを凛花は、


 「ごめんね、今日は中庭で先輩と椿ちゃんと大事な用事があるの、また誘ってね。」


 と、それはそれは美しい笑みを浮かべて断りを入れた。


 それを聞いた女子生徒は学園の王子様とお姫様の中庭での密会に興奮を隠せずにいた。


 「ついに雪橙様に告白するのですか!?」


 「学園の王子様とお姫様、お似合いですわ〜」


 「凛花様のお相手には雪橙様が相応しいですわね」


 口々に仲睦まじい二人を思い浮かべる生徒達は、優しく微笑んでいた凛花の表情が微かに不機嫌なものに変わったのに気づかなかった。


 「凛花ちゃーん」


 明るい女子生徒の声が教室内に響き渡る。


 「椿ちゃん!」


 微かに不機嫌だった凛花の表情が見る見る間に花が咲くような笑顔に変わる。


 「凛花ちゃん、早く中庭に行こっ!」


 凛花のような人目を惹く華こそないけれども、年頃の娘にぴったりの明るく可愛らしい笑みを浮かべて椿は凛花の腕を引いて立たせた。


 「うん、行こっか」


 そう言って、お互い幸せそうな表情で凛花と椿は手を繋いで教室を出ていった。



 ◇◆◇◆◇


 「遅いなぁ」


 季節の花が咲く中庭の東屋で雪橙が座って待っている。その姿はそれだけで絵になる。


 その時、


 「お待たせしました〜」


 照れて固まっている椿を引っ張りつつ、不機嫌さを隠しもしない凛花が現れる。


 「じゃ、私はこれで、頑張ってね椿ちゃん」


 そう言って、凛花は予定通り去ったふりをして近くの植え込みに隠れた。


 「あ、あ、あぅう‥」


 二人っきりになって雪橙を見るなり椿は意味不明の言葉を途切れ途切れに発し始める。


 その顔は耳まで真っ赤で、大きな黄色の目が泳いでいる。

 真っ赤に染まった顔の隣で緊張を誤魔化すためか茶髪を忙しなくいじっている。


 (これは時間がかかりそうだな‥)


 告白されてきた回数が二桁を越えれば大体パターンがわかってくる。こういう時は大体5分くらいかかるのが当たり前なのだ。


 (凛花ちゃんが告白してきたらどんななんだろうな?)


 絶対に有り得ない状況を思い浮かべて暇を潰し始める。


 (大体こんな感じかな‥)


 顔を真っ赤にし、緊張している凛花の姿を思い浮かべる。


 ーードキン


 (‥‥ん、ドキン?最近僕おかしいな‥)


 (それにしてもおかしくなるのは凛花ちゃんのことを考えている時なんだよなぁ、これってまるで‥)

 

 「あっ、あっ、あのっ!!」


 もう少しで雪橙が答えを出しそうな時に椿の必死な声が遮る。


 「うん?何かな?」


 「あっ、わ、私、初めて会った時から如月先輩のことが好きでした!!」


 「私と、つ、付き合ってくださいっ!!」


 ギュッと目を瞑り心臓の辺りを手で抑える椿。そんな椿の一生懸命の告白を聞いて雪橙はある一つの悩みの答えを出していた。


 (好き、そう好きか、あぁ、そっか僕の凛花ちゃんへの想いは恋だったのか‥‥なら、)


 雪橙は視線を上げ、ゆっくり椿と目を合わせる。


 「ごめんね、僕は君とは付き合えない」


 「あっ、そっ、そうですよね」


 その瞬間、椿は諦めたような雰囲気を滲ませた。


 「あっ、あの理由を聞いてもいいですか?」


 「僕ね、好きな子ができたんだ」


 そう言って雪橙は植え込みに隠れていた凛花を引っ張り出して


 「東雲凛花ちゃん、この子が僕の好きな子だよ」


 誰もが見惚れるような王子様の笑みを浮かべて告白する。


 「凛花ちゃん、僕と付き合ってください」


 「はぁぁぁぁぁ!?」


 凛花が大声で叫ぶ。その顔は嫌悪に染まっていてゴキブリを見るような目で雪橙を見ている。


 王子様の笑みを浮かべて凛花の方を向いている雪橙、そんな雪橙をゴキブリを見るような目で見ている凛花、呆気に取られている椿、その場はカオスとしか言えない光景が広がっている。

 

 「‥‥如月先輩、私、凛花ちゃんとはなんでも分け合って過ごしてきたんです」

 

 そんなカオスな中、ポツリと椿が口を開く。

 

 「だけど、凛花ちゃんごめんね、私、先輩だけは譲れない!!!」


 雪橙の方を向き、椿は大声で叫ぶ


 「先輩、必ず貴方を振り向かせて見せます!!!だから友達からよろしくお願いします!!!」


 そう言って、椿は中庭から走り去っていった。


 椿が見えなくなった瞬間、凄まじい殺気を感じて雪橙は振り向く。


 雪橙の後ろには、どんな殺し屋も逃げ出すような殺気を流しながら天使の笑みを浮かべている凛花が立っていた。


 「ーーー先輩、やっぱり殺されてください♡」


 目が笑っていない天使の笑みを浮かべ、凛花がそう告げた。


 

 

投稿が遅れてしまってすみません。現実の方のゴタゴタが終わってのでこれからは安定して投稿できると思います。引き続きよろしくお願いします。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ