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第18球  東峰大相模に勝て!

 

 GWゴールデンウイーク初日。

 野球部の命運をかけた、練習試合当日。

 試合会場である青北高校には、GWだというのに多くの学生が見学に訪れていた。


「おいおい、何でこんなにいるんだよ、ただの練習試合じゃねーか」

「どうやら俺達ではなく、向こうにいる連中に興味があるみたいだ」

「そりゃそうだよね。なんていったって去年甲子園行った学校だもん」


 沢山の生徒を前にビビる光一。

 文学や城田が言った通り、生徒達の目当ては東峰大相模高校だった。

 野球愛好会が、部の創設をかけて去年の神奈川王者、東峰大相模高校と試合をする。

 そんな噂が流れ、少し気になった青北の生徒達は休日にもかかわらず学校に足を運んでいたのだった。


「なあ宗一郎、余りこういう無茶はやめてくれよ。野球部を説得するの大変だったんだぞ」

「はっはっは、恩にきるよ拓ちゃん」


 グラウンドから離れている場所に来賓用のテントが張られ、そこには宗一郎と東峰の理事長が座っていた。

 宗一郎は東峰大相模高校の理事長と知り合いであり、無理を頼んで練習試合を組んでもらったのだ。

 テントには他に、えりなや静香や茜などの生徒会メンバーが支援の為に来ていた。

 静香はグラウンドに集まっている生徒達を眺めながら、


「凄いことになったね、えりな」

「ええ、まさかこんなに集まるなんてね。でも良かったかもしれない、これだけの生徒を前で醜態をさらせば、流石に彼らも部を作りたいなんて思わないでしょう」

「……もう、えりなったら」


 辛辣な態度のえりなに、静香は頬に手を当て「はぁ~」とため息を吐いた。



 東峰高校のベンチも、多くのギャラリーにざわついていた。


「うわー女子ばっか」

「しかもみんなレベル高ぇし。いいなー、こんな中の一人くらい俺の彼女になってくれねぇかなー」

「にしてもよ、急に練習試合が組まれるのって珍しいよな。それに青北高校なんて名前、聞いたことねーし」

「監督は知ってるんですか?」


 部員の一人が確認すると、東峰大相模の監督はこう険しい表情で伝える。


「お前等は余計な事を考えずに、ただ相手を叩き潰せばいいんだ」


 そういう彼は東峰の二軍監督であり、ここに来ている部員も二軍のメンバーだった。

 一軍監督と一軍選手達は遠征に行っているため、二軍の彼等に白羽の矢が立ったのだ。


(ったく、なんでこの大事な時期にこんな無名校の相手をしなくてはならんのだ。理事長に頭を下げられたから仕方なく引き受けたが、やってられんぞ。こうなったらさっさと大差をつけて、コールドで終わらせてやる)


 実にならない試合を組まされご立腹な監督は、再び選手達に気合を入れた。



 東峰の二軍監督が怒り心頭な中、青北ベンチもざわついていた。


「おい、あれ一軍じゃないぞ」

「え、マジ?」


 光一が相手ベンチを観察しながらそう言うと、みんなは「マジかよ!」と喜ぶ。


「二軍なら俺らにもワンチャンあるんじゃね?」

「まぁ、勝つ可能性がわずかでも上がったのは確かだな」

「ちっ、なめやがって。吠え面かかせてやるぜ」


 希望に満ち溢れている一年生達に、大山が注意する。


「おいおい、二軍って言っても東峰の二軍だぞ?その辺の高校より遥かに強いって事を知らないのか?」

「えっ、そうなの?」


 不思議そうに首を傾げる小西。

 大山が言ったように、今目の前にいる敵は二軍といえど“強豪校の二軍”だ。

 一軍には入れなかったかもしれないが、練習した時間も試合の経験も、大山達よりも圧倒的に勝っている。

 技術や体力は言わずもがなだろう。

 二軍といえど、そこらの高校よりは何倍も手強い相手だ。


「はぁ……だめだこりゃ」


 大山が頭を悩ませていると、慎吾が雄馬に宣言する。


「俺が点を入れる、お前は絶対打たれるな」

「……はなっからそのつもりだよ」


 やる気満々の雄馬の様子に、慎吾はニヤリと笑った。

 因みに彼等の服装はいつものジャージではなく、無地のユニフォームを着ていた。

 これは学校の体育倉庫の奥にしまっていた、廃部になった野球部が使っていたユニフォームである。

 なので、かなりくたびれていた。


 試合の時間になると、東峰が用意した審判がグラウンドに出てくる。


「集合!!」


 合図が叫ばれ、両チームはグラウンドに駆けだし、一列に並んだ。


「これより青北高校対東峰大相模高校の練習試合を開始します。先攻は青北、後攻が東峰。ルールは9回七回コールドは適用。フェンスがないため、打球がバックネットに当たったらホームランとします。では、礼!!」

「「お願いします!!」」


 全員が挨拶をし、青北はベンチに戻り、東峰は守備に入る。


『一番、ライト、宗谷君』

 選手のアナウンス――いわゆるウグイス嬢――をするのは、生徒会書記の茜だった。

 呼ばれた宗谷は、左バッターボックスに入る。


(これがバッターボックスから見る景色か、なんか息苦しいな)

 グラウンドには見慣れない青いユニフォームを着た敵がいる。

 それも、誰もが威圧感を放っていた。

 宗谷は自分で気付いていないが、かなり緊張している。


「プレイボール!」


 審判の合図により、青北野球部の命運をかけた試合が、今始まったのだった。



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本日の夜、もう一話投稿します。

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