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第1球 野球部がない!?

新作です!

野球に興味がない方もいらっしゃると思いますが、読んだ読者様の心が熱くなれるよう全身全霊で書いていきます!

 


 あたたかな風が心地良く、桜が満開に咲き開く春。

 新しい場所、新しい出会い、そして新しい挑戦。

 誰もが期待と不安を胸に抱き、新生活へのスタートを切る。

 青森県から、祖父の母校がある神奈川県にはるばるやって来たこの少年もまた、新しい一歩を踏み出していた。


「ついに来たぜ、青北高校!!」


 門の前に立ち、四月から通うことになった学校を見上げ、心を弾ませる。

 今にも走り出してしまいそうな少年の名前は、進藤雄馬しんどうゆうま

 短めの黒髪で、顔は端正。イケメンというよりかはひと昔前の男前な感じだ。

 背も高く、体格もがっしりとしていて、肌は浅黒く焼けている。いかにもスポーツマンといった印象の少年。

 肩にスポーツバッグを掛けているところを見ると、スポーツ少年であることは間違いないだろう。

 そんな彼は指で鼻の下を擦りながら、「へへっ」と嬉しそうに笑う。


「なんかこう、アガってくるな。やべえ、早く投げたくなってきたぜ」

「きゃっ!」


 雄馬が興奮していると、小さな悲鳴と共にこつんと背中に衝撃がきた。

「ん?」と後ろを振り返ってみると、小さな少女が転んでいる。

 彼が慌てて手を差し伸べると、女の子は「あ、ありがとうございます」と手を握りながら立ち上がる。

 その後、バッと頭を深く下げた。


「ごめんなさい!全然前見てませんでした!!」

「いいよ、こんなところで立ち止まっていた俺も悪いんだし。こっちこそ悪いな」


 お互いに謝っていると、門の前でびしっとスーツを着ている男性職員が、雄馬と女の子に声をかけてくる。


「そろそろ入学式が始まるから、早く体育館に向かいなさい」

「「は、はい!!」」


 返事をした二人は、体育館へと歩きだす。

 雄馬は女の子に「じゃあ、またな」と言うと、女の子は「うん!」と明るい笑顔を浮かべたのだった。


 体育館に入った雄馬は、ふと違和感を覚える。

(なんか……女ばっかりじゃねーか?)

 パイプ椅子に着席して周りを見渡すと、真新しい制服に包まれた女子生徒ばかり。

 ちらほらと男子生徒もいるが、指で数える程度しかおらず、圧倒的に女子生徒の方が多かった。

 どうなってんだ?と不思議がっていると、入学式が始まった。

 理事長や校長先生の長い話を聞いて眠たくなっていると、突然場内が騒がしくなる。

 目をぱちくりさせて(なんだ?)と周囲の反応を窺うと、生徒達の目線は全て壇上に注がれていた。

 雄馬も追うように顔をそちらに向けると、壇上には一人の女子生徒が凛と立っていた。


「きゃー、えりな様よ!!」

「あの人が噂の冬月さん?」

「美しいわぁ」

「立ち姿が格好良すぎます」

「文武両道、容姿端麗、一年生にして生徒会長に抜擢されるほどの人望……」

「素敵だわぁ」

(なんだなんだ、そんなスゲーやつなのか?)


 手を組み、目をハートにさせてうっとりする女子達を見て、戸惑ってしまう。

 雄馬は改めて壇上に立つ女子生徒を見やる。

 茶色がかった長髪は日差しに当てられ輝いていて。

 顔は端正だが可愛いというより美しいさが勝っている。さらに付け加えれば凛々しい。

 背筋もピシッと伸びていて、胸の膨らみも大きい。

 胸から下は机に隠れているので確認できないが、多分スタイルも良いのだろう。

 雄馬から見ても綺麗だと思うし、彼女からは気品あるオーラが漂っている気すらある。

 女子生徒達がざわつくのも、無理はなかった。

 彼女の名前は冬月とうつきえりな。

 青北高校の理事長の孫にして、一年生ながらに生徒会長に抜擢された才女である。


「皆様、静粛に」


 透き通った声でえりながそう言うと、場内が一瞬で静寂に包まれた。

 それを確認したえりなは、挨拶を始める。


「新入生の皆さん、そして保護者の皆様、ご入学おめでとうございます」


 それから、えりなは新入生達に向けて話しをする。

 校長や来賓の挨拶は真面目に聞いていなかった者も、全員がえりなの話を黙って聞いていた。


「では新入生の皆さん、これからの三年間、実りのあるものにして下さい。生徒会長、冬月えりな」


 挨拶が終わって頭を下げると、場内に割れんばかりの拍手が巻き起こった。


(へー、あんな奴初めて見たぜ)


 壇上を降りていくえりなを眺めながら、雄馬は彼女のカリスマ性に関心するのだった。


 入学式が終わり、生徒達は体育館から出て自分のクラスに向かっていく。

 雄馬のクラスは1年5組だった。

 周りを見渡すと、やはり女子ばかり。


(なんだよつまんねーな)


 男子とわいわいしたかったがそれも出来ず大人しく指定された席で座っていると、若い女性教師が入室してくる。


「はい皆さん、席に座ってねー」


 彼女がそう言うと、生徒達は慌てて自席に戻る。


「新入生の皆さん、ご入学おめでとうございます。私はこのクラスを担当することになりました三里律子です、よろしくね。今日はもう特にする事はないので、みんなの自己紹介をしちゃいましょうか。では、出席番号順でやるので、安藤さんからお願いします」

「えっ!?あ……はい」


 突然始まった自己紹介。

 女子生徒達が無難な自己紹介を続ける中、雄馬の出番がやってくる。


「じゃあ次は進藤雄馬君、お願いします」

「はい!」


 雄馬は大きな声で返事をすると、勢いよく立ち上がった。


「俺の名前は進藤雄馬!青森県出身です!!甲子園を目指して青北高校に入学しました、よろしくお願いします!!」


 ハキハキと宣言する。

 周りの女子達はポカーンとした顔をして、


「ねえ、甲子園だって」

「なにそれウケる」

「えっ冗談だよね」

「そうに決まってるでしょ、だってこの学校って……」

(な、なんだ……?俺変なこと言ってねえよな?)


 周囲の反応に雄馬が戸惑っていると、三里先生が言い辛そうに説明してくる。


「あのー進藤君? まさか知らないで入学したとは思わないんだけど、一応言っておくとね、この学校には今野球部はないのよ」

「は?」


 野球部がないと言われて驚愕する雄馬。

 三里先生がなんて言ったのか頭が理解しようとしなかったが、なんとか気を取り戻して反論する。


「んな馬鹿な!?だって爺ちゃんはこの高校で甲子園優勝したんだぞ!?甲子園で優勝した学校に野球部がない筈がねえじゃねえか!!」

「ん~確かにそんな記録はあったって聞いてたけど、それはもう50年以上も前の話よ。野球部は10年ぐらい前に廃部になっているわ」

「野球部が廃部……そんな……嘘だろ」

 野球部が無くなっていると聞いて失意に飲み込まれる雄馬に、三里先生が優しく声をかける。

「まあそんなに気を落とさないで、野球以外にも楽しいことはたくさんあるから」


 そんな風に三里先生が慰めるが、今の雄馬の耳には全く入ってこなかったのだった。




一話を読んでくださってありがとうございます。


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野球部復編が終わるまでは毎日投稿します。

本日夜にもう一話投稿します。

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― 新着の感想 ―
[一言] 一話そうそう1人孕ませてますね
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