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犬猿アイドル百合営業中  作者: 三色ライト
2章 1周年記念ライブ編
62/143

62話 2年前

 ーーーー約2年前ーーーー


「今日から君たちは[アップる]として活動をしてもらう。これからよろしく頼むよ」

「「「「「はい!」」」」」


 小さな事務所の社長室に集められた私たちは、右も左も分からないままアイドルの道へと入った。

 社長に顔見せをして、自己紹介をする間も無く実力を測るための試験が始まった。ここにいる子たちはみんな、社長が良いと思って集めた子たち。ダンスや歌のセンスは未知数だった。


「まず、藤宮子!」

「はい!」


 事前に手渡されていたDVDで振付や歌詞は把握しているはず。だからみんな、100点のパフォーマンスができるのは当然のことだと、私は思っていた。

 でも……


「うん、まぁまぁだな。次、王林」

「はいアルよー!」


「次、成瀬紅玉」

「格の違いを見せてあげますわ」


「次、小金井詩奈乃」

「頑張っちゃうもんね〜!」


 4人のパフォーマンスは、上手い。アイドルとして、これに文句をつけるものは少数の変わり者だけだろう。

 でも、変わり者の私から言わせれば、足りない。アイドルは歌って踊れればそれでいいわけじゃない。アイドルが提供するものは、感動とか、希望とかといった、目に見えないものだ。それを表現するのは難しいのはわかっている。でも、私なら……


「最後、華志月りんご」

「……はい」


 ♪♪♪♪


 私なら、その無体物を、まるでそこにあるかのように表現できる、届けられる!


「おおっ……」

「社長、これは……」


「……ッ!」


 ここにいる社長にも、マネージャーにも、他のメンバーにも。そして未来のファンにだって届けられる! この、歌と踊りを通した感動を!


「決まり、だな」

「えっ?」

「君がアップるのリーダーとなるのだ、華志月りんごくん。君こそトップアイドルを束ねるのにふさわしい」

「そ、そんな! 私がリーダーだなんて……」


 そんなつもりでやったわけではない。どちらかといえば奥手な私が、ステージでしかイキイキとできない私がリーダーだなんて……


 しかし、他のメンバーからの反対の声はなかった。紅玉さんは反対しそうなイメージがあったけど、そうでもないみたい。


 それから数日が経ち、私たちの情報もそろそろホームページに載ると言う時、事件は起きた。

 レッスン後、私以外がバテてしまい、クールダウンの時間になる。


「……マネージャー、私、アップる辞めます」

「……私もデス」

「わたくしもですわ」

「私も、かな」


「「えっ」」


 私以外のメンバーが皆、アップるを辞めると告げた。


「な、なぜ!? 今から頑張っていこうってときに!」

「悔しいけど、私たちの力ではりんごに追いつくことなんて不可能だわ」


 他のメンバーも口々に私に迷惑がかかるからと、辞める意思を告げた。


「ちょ、ちょっと1日落ち着いて考えてくれ、さ、今日は解散!」


 無理矢理マネージャーが締めて、解散となった。私は理解してる。きっとこのまま4人は辞める。なら……


「マネージャー、お話があります」


 ◆


 それから、1年後。

 私は毎週のように事務所に足を運んでいた……といっても、事務所の玄関前にだけど。

 アップるの面々とは顔を合わせたくは無い。彼女たちはもう中堅アイドルの中でも抜けている存在だ。私の居場所は、もうそこにはない。


 今日もこのまま帰ろう、そう思った時だった。


「あーーーー! あなたもアイドルになりたいの? そうよね! そうに決まってるわ!」

「えっ……」


 突然オレンジ色の髪の毛の少女に話しかけられた。


「それなら私のチームに入りなさいよ。トップアイドル間違いなしっ! いっくわよ〜!」

「ちょ……え? えぇっ!?」


 こうして私は無理矢理フルーツパフェのメンバーとなった。ここは居心地が良いし、何よりやっとできた私の居場所だ。ここを失いたく無い。だから……


「私はもう、全力で歌ったり踊ったりなんてできない……」

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