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犬猿アイドル百合営業中  作者: 三色ライト
2章 1周年記念ライブ編
61/143

61話 真の実力

「ムカつくムカつくムカつくーーーー!」


 地下一階のレッスン室にみかんちゃんの声が響く。


「まぁまぁ、落ち着いて〜」

「いつまでも揉めていても仕方ないよ、みかんちゃん」


 そんなみかんちゃんの背中をさすって、イチゴちゃんとメロンちゃんが宥めていた。それを私は……ただ一人レッスン室の端でポツンと立って見守っている。


「りんご! 悔しくないの? あんなこと言われて!」


 突然話を振られて……って、まぁいつものことなんだけど、とりあえず緊張して固まってしまう。


「え、えっと……本当のことだから……」


 私が足を引っ張っているのは明白だ。明日香さんはそんな私の背中を押してくれようとした。でも私はそれに応えられていない。

 そして私は薫さんとフルーツパフェとの間の軋轢よりもずっと気になっていることがあった。

 そう、風の噂によると今日は事務所にアップるがいるという。当然のことだけど、彼女たちは私の真実を知っている。顔を合わせたくはない。


 思い詰めている私の頬を、優しくみかんちゃんの手が叩いた。


「いい? りんごは私が負けを認めるくらい可愛いの! あとは自信だけ! それだけなんだから!」

「う……うん」


 1年近く同じやりとりをしてきた。それでも私は変わることができなかった。ずっと私は、恐れている。


 時が流れ、あれだけ元気だったみかんちゃんも日本の夏に負け、解散することになった。


「それじゃあまた明日! りんご、明日こそ見返してやるわよ!」

「う、うん……」

「まぁリラックスしてね〜」

「お疲れ様でした」


 事務所を出て散り散りになっていく。今日も私はロクに踊り、歌を練習することができなかった。

 そんな私が足を運ぶのは、先ほどまでいた地下一階のレッスン室ではなく、その下、人気のない地下二階のレッスン室。ここなら滅多に人は来ない。


 コソコソと隠れるようにレッスン室へと入っていった。

 スマートフォンの音量をMAXに上げ、音源を用意する。

 音楽が流れるまでの10秒を、肌で歓声を感じるようにイメージした。


 ♪♪♪♪♪


『I want you♡ 世界の真ん中にハートを散りばめ〜♪ てんこ盛りフルーツで、愛を……トッピングするの♪』


 私たち、フルーツパフェの歌を全力で踊り、全力で歌う。

 そう、私はさっきまでのダメダメアイドルのりんごじゃない。ここにいるのは、アップるの元リーダー。世界最高のアイドル候補、華志月りんごだ!


 ノリに乗ったその時、ガチャっとドアが開いた音がした。

 なぜかその瞬間にはヤバいと思わず、ただただ体が硬直してしまった。ドアを開けた主は……


「えっ……りんごちゃん、マジ?」


 私を勇気づけようとした、明日香さんだった。

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