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犬猿アイドル百合営業中  作者: 三色ライト
1章 百合営業作戦編
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6話 デート作戦③

 2、3個アトラクションに乗ったらもう周囲は暗くなってきた。さぁ、ここからがパレード。カップル達が活動的になる時間帯である。


「さて、ある意味ではここが本番だね。すでに私たちがここにいることは知られた。後は週刊誌に載る大きなネタを提供するのみだ」

「そうだな。さっき握手するためだけにチュウチュウランドに来た熱心なファンの方もいたし、ここにいるのは間違いなく広まっている」


 といっても恋人がいたこと無い私にとってナイトパレードで何をすればいいのかなんてわかるはずがない。というわけでここは……


「ねぇ、その辺のカップルがしたことを真似るってのはどう?」

「……いいね。面白そうだ」


 面白いかはさておき、間違いなくカップルとして不自然ではない行動が取れるという点で名案でしょ? 私って冴えてる!


「ならあそこのカップルを参考にしようか」


 薫が指定したのは同年代くらいに見えるカップル。たしかにいい雰囲気を感じるし、真似するにはちょうど良いかもね。


 まずは……普通に手を繋ぐんじゃなくて恋人繋ぎか。ちょっと恥ずかしいけど勇気を出すか。なんか今日はずっと薫がリードしている気がするし、ここは私から攻めないと!


 指と指を絡ませる……な、なんかエロいな。やめろ、変な意識するな私!


「……へぇ」


 なんだその反応は! 恋人繋ぎをしたのに「へぇ」で終わる奴があるかぁ!

 くそ、これじゃあ薫の一挙手一投足にドギマギしていた私がバカみたいじゃん。


「ふふ。情熱的だね、明日香」

「ま、まぁこれくらいはな?」


 嘘だけどな。本当はもういっぱいいっぱいだよ。でもそんなこと知られたら恥ずかしいし、ここは余裕ですけどって態度を無理して作ってやる。


 あ、あのカップル肩を立ったまま合わせやがった。くそ、あれもやるのか……距離が近いから緊張するな。でもやるしかない! えいっ!

 まるで特攻するかのような意気込みで隣にいる薫に肩をぶつける。そしてちょっと首を傾けて体重をふんわりと薫に預ければ完ぺきだ。


「やるじゃないか、明日香」

「ま、まぁな」


 もうわりとガチでいっぱいいっぱいだ。頼むそこのカップル。もうこれ以上何もしないでくれ!

 そんな念を送るのも虚しく、ついに観察していたカップルは向かい合った。まさか……やめろ、やめてくれ!

 それは……唇と唇の重なり。愛の確認手段の1つ。通称、キスであった。


「あ……ぁ……」


 細い声しか出ない。これはマズイ……。が、見なかったフリをしよう。そうだそうだ。何も起きていない。何も見ていない。心を無にするんだ……さすればきっと私は救われることでしょう……。


「……明日香、あのカップルを真似るんだろう?」


 ちょ、おい! お前私の(心の)声ちゃんと聴いていたのかよ? 見なかったフリしようぜって(心の中で)言ってるだろうが!


 薫はまったくふざけていたりからかっていたりするわけではない、いたって真剣な表情をしている。まさか……本当にする気なのか? こんな偽りの恋人関係なのに……キス、する気なのかよ……。


 向かい合って両肩を掴まれる。その瞬間少しピクッと身体が震えたけどそれすら薫に支配されている状態だ。私はもう、袋の鼠。煮るも焼かれるも薫次第だ。


「か、薫はいいのかよ……こんなところで私が相手で」

「……あぁ。トップアイドルになれるなら、ね」


 そっと顔を近づけてくる薫。不思議ともう抵抗しようという気は起きなくなり、ただただ体を薫に預けることにした。目を閉じて、キスを待つ。覚悟は……できた。


 ツン、と唇に何かが触れた。あぁ、さらば私のファーストキス。私のファーストキスは犬猿の仲の相方に奪われるんだ。

 ……ん? なんかコイツの唇、やけに細くて硬いな……と思い、ちょっと目を開けて確認するとそこには……唇と唇の間に薫の人差し指が挟まっていた。え……じゃあ今のキスって……


「ふふ。騙されたかい? やっぱり可愛いな、明日香」

「なっ……やっぱりお前、大嫌いだ!!!」


 この叫びは園内中に響き渡り、チュウチュウランド七不思議の1つになったという。

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