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犬猿アイドル百合営業中  作者: 三色ライト
2章 1周年記念ライブ編
54/143

54話 衝突

「りんごちゃんは凄い! りんごちゃんは可愛い! りんごちゃん世界一!」

「う……うぅ……」

「……………………何をやっているんだい?」


 私が声を張り上げていると薫が入室してきた。部屋には困惑した表情の薫と、喉が枯れた私と、涙目のりんごちゃん。カオスだ。


「決まってるだろ、りんごちゃんを褒めて褒めて褒めまくって自信をつけてもらうんだ」

「決まっている……のかい? まぁ明日香らしいまっすぐな方法で嫌いではないけど」


 ……ん? 今私が馬鹿にされているのか?


「それで? 効果はありそうかい?」

「……見りゃわかるだろ。ずっとこの調子だよ」


 りんごちゃんは涙目になったまま固まっている。薫はそれを見てため息をついた。


「……少し荒療治の方がいいかもね。時間もないし」

「荒療治って?」

「強引に治すということだよ。例えば今から大勢の人前で歌わせるとか」

「りんごちゃん死んじゃうだろ……」


 私たちが勝手にりんごちゃんのことについて話し合っていたらイチゴとみかんちゃんが走って部屋に入ってきた。


「ちょっとみやのーん? りんごはウチのメンバーだからいじめちゃだめだよ〜?」

「そうよ! 優しくしなさい!」


 りんごちゃんを庇うように、イチゴとみかんちゃんは私たちと対立する。

 仲間を思う気持ちはいいことだと思う。でも……それとこれとは別問題。それは優しさじゃなくて甘さだと私は思うから。

 だから私はひとこと言ってやろうと思った。しかし、それを阻んだのは薫の声だった。


「そんなでは……」

「え?」

「そんなでは、いつまで経っても君たちは中堅のままだよ」


 鋭く冷たい、薫のひとこと。

 その言葉は、イチゴやみかんちゃん、めろんちゃんの表情を強張らせるのに十分だった。


「ちょっとちょっと、何やってるのよあなた達!」


 嫌な予感がしたのか、マネージャーが部屋へと入ってきた。悪い空気が漂っているこの部屋に、マネージャーの怒気が追加される。


「薫、何か言ったんじゃないでしょうね?」

「別に。本当のことを言ったまでだよ。怒るということは図星ということさ」

「そのノリはfeliz内のみでやりなさい! 他のグループを巻き込んでやることじゃ……」

「ならなぜ1周年記念ライブを合同でやることにしたんだい? 事務所の決定には従うけど、理解はできない。……悪いけど、今日はここで帰らせてもらうよ」

「ちょ、薫!?」


 静止するマネージャーを振り切って薫は帰ってしまった。その気持ちを理解できないことはない。

 百合営業の中で見えたけど、薫は本当にアイドル活動に対してストイックだ。だからフルーツパフェの緩い感じが気に障ったんだろう。


「さて、私は……雰囲気を直すかね」


 認めたくないながらも好きになってしまった薫のためだ。帰ってきやすいように、フルーツパフェとの溝を埋めておこう。健気だろ? 私。

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