41話 百合は続くよどこまでも
劇的な告白をしてから1週間が経った。その間私たちは……特に何もなかった。なぜなら私のヤケになった無敵モードが終わり、正気になった途端に恥ずかしさがこみ上げてきて部屋で一人のたうちまわっていたから。当然あの日のことを思い出してしまうから薫にメールを送ることもできない。
そういえば……薫からは好きとは言われてないな。キスについて咎められることもなかったから大丈夫だとは思うけどやっぱり心配だ。よし、電話で聞こう! と思ってスマホを持ってはやっぱり恥ずかしくて無理ぃ〜! ってのを1週間続けている。我ながら何してるんだか。
そんな時だった。スマホに1通のメールが届いた。
「か、薫か!?」
慌ててメールを開くとfelizのグループにマネージャーからメールが送られてきただけだった。何だよ、マネージャーかよ。なになに……<あなた達すごいわよ! 至急事務所に集合すること!>って、急だな。まぁいいけど。
出かける準備をして部屋のドアを開け……ようとしたところでまた鏡を見て可愛いかチェックをする。久しぶりに薫に会うと思うとこうせずにはいられなかった。
「よ、よし! 行くか!」
意を決して部屋を飛び出す。電車に乗り込み移動して、いつも通りの事務所5階の小会議室へ。小会議室ではマネージャーと、先に着いていた薫が私の到着を待っていた。
「よ、よう薫。久しぶり」
「うん。久しぶりだね、明日香」
薫はいつも通りの冷静さだ。なんか私だけが緊張しているみたいで嫌だな……よし、私も堂々としてるぞ!
「早速本題に入るわよ! あなた達よくやったわ! この前の清水の舞台での一件がSNSでバズってね。そのおかげで大手週刊誌でも取り上げられたのよ!」
「おぉ〜! ずごいじゃん!」
百合営業のためにキスをしたわけではないけど、そうやって効果に繋がったならそれはそれで良し。
「新規ファンクラブ加入者はなんと7千人! これはすごい数よ!」
「えぇ、マジ!?」
とんでもない数じゃん! そりゃ緊急で呼びつけるだけあるわ。
じゃあもう当初の目的は果たしたから百合営業は終わりか。ま、まぁこれからは本当に恋人になるわけだから? 寂しくなんかないけど?
「なら百合営業はここで終わりかい?」
薫が私と同じことを思っていたようで疑問をマネージャーにぶつけた。
「何言ってるのよ、今やめたらせっかく百合営業で集めたファンが逃げちゃうじゃない。継続よ継続」
「そうかい。でもキスまでしてしまったからね。これ以上何をすればいいんだろうか……」
ん? 何か今の発言は引っかかるな。何でだろ。理由はわからないけどちょっと心が痛かったような……。
「でもそのおかげで一歩前進できたね。ありがとう明日香。キスのことなら私は気にしていないから大丈夫だよ」
ん、んん? なんかおかしくない? どこか引っかかるぞ?
「いや……私は……」
「それにあんな大胆な嘘告白をするだなんてね。目を合わせてくれないのは緊張していたからだったんだね。ごめんよ、変に疑ったりして」
「えっ、ちょっと待って! 薫はその……あの告白をどう思ってるの?」
何か嫌な予感がしてきた! やめろ、私の嫌な予感は当たるんだよ!
「どうって……頑張ったね、明日香。という感想だけど?」
その瞬間一気に体の力が抜けて膝から崩れ落ちた。
「あ、明日香!? どうしたんだい?」
心配そうな表情で薫が近づいてくる。
「う、うるさい! 薫なんか大嫌いだー!」
私が叫んだ時にチラッと見えた薫の顔。ほんのり赤くなっていたような気がしたのはきっと気のせいだろう。コイツはナチュラルに私をおちょくってる奴だ。
ちなみに私の叫びは事務所中に響き渡ったそうで、あとでマネージャーが頭を下げに行ったというのは内緒の話な?
これにて第1章完結となります!
第2章、1周年記念ライブ編は5月上旬より連載再開予定です。
鋭意製作中ですので今しばらくお待ちください!