126話 薫の初恋
「ほい、じゃあ次のジャンケン行くよ〜! ジャンケン、ポン!」
私、チョキ
薫、パー
伊佐美さん、パー
霧島さん、チョキ
薫と伊佐美さんの逆決勝戦の結果、薫が負けて薫の暴露話ターンになった。
「felizジャンケン弱いな、ウケるわ」
霧島さんがビール缶片手に笑いながらいじってきた。felizはジャンケンではここ2連敗だもんな。
「じゃあくじ引きしまーす。えっと……『初恋について教えてください』」
は、初恋!? 薫の初恋か。気になる。
そもそも薫って恋したことあるのだろうか。薫はモテるからこそ、薫から好きになるようなことってあんまり想像つかない。『甘酸っぱい片思いをしているの!』っていうキャラじゃないしな。
「初恋か、これは困ったね」
薫は案の定あごに指を当てて悩み込んでしまった。
フォローしようかと思ったけど百合営業中の私たちにとって恋に関するワードはかなりセンシティブだ。頭の悪い私のフォローではかえってフレンドリーファイアになってしまう可能性がある。ここは薫を信じてステイだ!
「お〜? なんだなんだ、今2人は付き合ってるんだろ? 彼女の前で初恋の話をするのは気がひけるか?」
わかりやすく霧島さんが煽ってきた。ここまでわかりやすいと逆に返答しやすいのかもしれない。霧島さんなりの優しさなのかな?
「ふふ、それは違いますよ」
「ん?」
「だって私にとっての初恋は……あ、明日香ですから」
ちらっと私を見て、すぐ目を逸らしてそう答えた薫。その返答に霧島さんは「ヒュー」と口笛を吹いた。
「じゃあ次行ってみよー! ジャンケン、ポン!」
私、グー
薫、グー
伊佐美さん、チョキ
霧島さん、グー
伊佐美さんの1人負けだ。
「あちゃ〜。私か〜。くじは……『アイドル生活でのぶっちゃけ』」
あぶな! そのカード私たちが引いてたらヤバかったじゃん! だって『ぶっちゃけ私たちの関係って百合営業なんすよ』で終わりだもん! ジ・エンドだよ。
「よーし、答えちゃうよ〜」
私たちにとっては特に意味のない行為だけど、伊佐美さんは答える前に飲むというルールに則ってさらにアルコールを体に染み渡らせた。
「えっとね〜、私はお酒好きなのは本当なんだけど〜、ぶっちゃけみんなでワイワイ飲むよりしっぽり飲む方が好きなの〜」
「ハハハッ! まじ暴露じゃんウケる」
「乾杯〜」
酔った伊佐美さんと霧島さんは特に理由なく乾杯して酒を飲んだ。本当に1人飲みのが好きなのだろうか。とてもそうは見えない。
カオスな生配信も終盤に差し掛かっていた。




