118話 百合営業ダイジェスト
朝目が覚めてから不思議なことが立て続けに起こった。
まず薫が私よりも遅くまで寝ていた。そんなイメージまったくないのに。
次に起きた薫は私より長く寝ていたはずなのに目にクマができていた。これも意味不明だ。
そして起きた薫は私に謝ってきた。「ごめんね」と。何を謝られたのかさっぱりわからないから「は?」としか返せなかったし、それ以上聞こうと思ったら薫の方が真っ赤になってトイレに逃げてしまった。
ここまで訳のわからないことがものの数分の間で起こると頭がパンクしそうになる。元から私の頭の容量は大きくないし。
よくわからないままご飯を食べて、よくわからないまま薫の家を一緒に出た。今日は学校は休みだから、マネージャーに呼ばれてはいないけど事務所に行こうと思う。
「手、繋ぐか?」
「そ、そうだね。それが自然だね」
なんだよ、歯切れ悪いな。薫らしくない……。
事務所についたけどマネージャーに連絡するの忘れてたな。まぁ向こうもホウレンソウがなってないし、お互い様だろ。
『マネージャー、今薫と事務所に来たけどなんかやることある?』
とりあえずこのメールだけ送っておくか。返信来るまでレッスン室にでも……と思ったらすぐに返信が来た。暇なの?
『薫もいるの? じゃあ百合営業ね』
まぁもう覚悟もしてるしわかってもいたけど百合営業ってサラッと決まるんだなぁ。
そういえば百合営業をするって決めたのって事務所のお偉いさん達なんだったっけ。そのアイドルがICLに出るってなってるんだから今ごろ成功したぞ〜なんて大はしゃぎなんだろうか。
「百合営業だとよ」
「そ、そうかい。通常営業なわけだね」
なんだ? 仮病使ったら本当に体調が悪くなったパターンか?
心配しつつも百合営業が始まった。といっても特別なことはせず、ただの百合デート作戦ということらしい。
若者が集まるパンケーキ屋さんに行って、それぞれ好きなパンケーキを注文。出てきたパンケーキを「あ〜ん」ってする王道百合営業、まぁ今までのに比べたら軽い軽い。楽勝だ。
楽勝……のはずなんだけど、なんか薫はもじもじとしている。
「なんだよ、初恋に気がついた乙女みたいな態度じゃん」
「言い得て妙……いや、なんでもないよ」
よくわからないまま百合営業が進んでいった。
この薫の謎のおかしさはずっと続いた。1ヶ月経っても治らないから心配になる。
遊園地に行ってもカラオケに行っても他のアイドルのコンサートを観に行ってもこうだ。いったいどうしたんだろうと思っているうちに……
ICLの1次リーグ、投票日の初日、12月1日を迎えたのだった。
ワクチンの副反応で昨日ダウンしてしまったので明日の更新はお休みさせていただきます。
ごめんなさい(´°̥̥̥̥̥̥̥̥ω°̥̥̥̥̥̥̥̥`)