113話 ライバル達は
……で、薫が体調不良になって1週間が経過した。いくらなんでも長すぎる……何もアナウンスがないし、私からメール送っても返信こねぇし。なんなんだよ。
今日は久しぶりに小会議室に呼ばれたけど、薫は体調不良で休み。私とマネージャーの2人きりということになる。誰得?
「明日香いる〜? あぁ、いたいた」
「なぁマネージャー、薫どうしたんだよ?」
「さぁ……明日香とお見舞いに行こうと思ったんだけどそれも事前に拒否する内容のメールが届いてね。私もどうすりゃいいのかわからないのよ」
お見舞いも拒否? なんだよそれ。
モヤっとする……ICLに向けて、今が票の集め時だってのは薫が一番理解しているはずなのに。
「そんじゃなんで私を呼んだんだよ」
薫もいなけりゃ百合営業なんてできやしない。呼ばれてもレッスンくらいしかできないけど……。
「今日は他のアイドルの動向を詳しく知ってもらおうと思って呼んだのよ」
他のアイドル……つまりICLの同グループのアイドルか!
「ど、どんな感じだ? やっぱりウェザーガールズ優勢っぽい?」
「そうね……ウェザーガールズは東京を中心にいろんな箱を確保してミニライブを開いているわ。戦い方的にはフルーツパフェと同じね。そして何より関東地方限定とはいえ、テレビの天気予報コーナーに出ている。これが大きいわ」
さすがトップアイドルの一角……テレビにもちょろっとなら簡単に出れちゃうわけか。
「コツコツと百合営業している私たちでは追いつけないか……?」
「そんなことないわよ。だって前回の生放送だってバズったじゃない」
まぁ確かにバズったけど。テレビに比べちゃうとな〜。
「次にidol QEDね。彼女たちは地元福井を中心に北陸地方で確実な人気を得ているわ。大手眼鏡メーカーともコラボして、『ICL応援idol QEDモデル』のメガネも販売しているわ。ちなみに私も買って、今つけているわよ」
キラーンとマネージャーのメガネが光った気がした。すっげぇ興味ない情報……。
「最後にリキュールレディだけど、彼女たちはDotubeで一緒に飲もう配信を毎日行っているわ。サラリーマンに人気らしいわよ。5回に3回は吐いてるらしいけど」
どこに需要生まれてるんだよ……多様性の時代ってすげぇ。
どのアイドルも頑張っているんだなぁ。そんな中私たちだけ足止め中か。なら……
私は事務所を飛び出し、電車で揺られ数駅。
薫の家の前に、気がつけば立っていた。




