100話 変わる待遇
「う〜ん、大阪ね」
新大阪に着くと藤ちゃんは伸びをした。その姿すらも神々しく映る。これだから推しは困る。
「……明日香、ジッと見過ぎだよ」
「あ、悪い悪い」
……ん? 別に謝ることないよな。なんで謝っちゃったんだろ。……まぁいいか。
「あの……アップるさんはなるべく目立たないようにお願いします」
ウチのマネージャーがコソッと藤ちゃん達に呟いた。
アップるの変相はさすがに慣れているだけあって別人に見える。でもやっぱりオーラが違うような気もしないような?
しばらく歩くとスレンダーな女性が立っていた。
「うむ、よく来たな」
「なぁ薫、誰だあの人」
「アップるのマネージャーさんだよ。一度事務所で見たことがある」
「うぇ!? まじ?」
どっかのモデルさんかと思った。ウチのマネージャーとは大違い……なんて言ったらぶっ叩かれるんだろうな。
「さぁ明日のライブのリハに行くぞ。私に続け」
「はい。じゃあfelizさん、また後で」
詩奈乃ちゃんから手を振られた。これは良い思い出になるだろう。
「……ってあれ? ここで別れるならなんで一緒に来たんだ?」
「アップるたっての希望らしいわ。あ〜〜、生きた心地しなかった。トップアイドルの引率って息が詰まるわね」
「おい、普段から息が詰まる思いでやってくれよ……」
私の言葉は耳に入りませーんと言わんばかりにマネージャーはそっぽを向いてしまった。この大人、マジで一回どうにかしてほしいな。
「さてマネージャー、私たちはこれから何をすれば良いんだい?」
「とりあえず荷物をホテルに置いて、そこからアイドルファンの多い日本橋付近で手繋ぎデートコースね。初日はそれくらいよ。むしろホテルに帰ってからが大変かも」
「ん? どういうことだい?」
「……まぁそれはその時のお楽しみってことで」
というわけで私たちが泊まるホテルに来たわけだが……
「でっっか!」
超ゴージャスなホテルに到着してしまった。嘘だろ? そんなことある? こんなところに泊まって良いのか?
「あなたたちはICL出場アイドル、必然的にこうして環境も整ってくるのよ」
すげぇ……トップアイドルの階段を登っていくとこうなるのか。
この前の京都旅行でのしゃぶしゃぶみたいなものがまた食べられたりするのかな。だとしたら楽しみかも。
ゴージャスなホテルにタジタジになりながらもとりあえず大きな荷物を置いて、日本橋へと向かった。
「さぁ、行ってきなさい!」
いつも通りというべきか、私たちの百合営業がサラッと始まった。