10話 放課後デート作戦①
どーでもいい授業を聞き流していつも通り放課後を迎える。今日は事務所に行くように言われてないし、帰るか……って思ってたんだけど薫が私を手招きしているのが視界に入ってしまった。
しゃあなし、行くしかないかと思い、薫の元へ。
「……なに?」
「冷たいな、パートナーに向かって。放課後デート作戦の指令、届いたよ」
「えっ、マジ?」
本当か? と思ったけど一応スマホを確認してみる。本当だ……マネージャーから<放課後はちゃんとデートするのよ?>ってメッセージが届いてるじゃん。
「というわけだ、行こうか明日香」
「いや……どこに行くんだよ。ノープランだろ?」
マネージャーからのメッセージも15分前に届いたものだし、考えているはずがない。場所も指定されてないし、どうしろってんだよ。
しかし薫はそんなこと構わないという余裕の表情だ。何か考えがあるのか?
「もちろん行き先は考えてあるよ。屋台ドリンクだ」
「や、屋台ドリンク?」
なんでそんなところに……いや待てよ、これまでの傾向的から考えるにもしかしたらそういうことか?
「学校帰りの学生が多いからか?」
「おっ、正解だ。珍しいね」
心底驚いたという薫の顔がムカついて仕方がないけどそこに突っかかってるといつまでたっても先に進めない。
緊急クエストにはなったがやるしかないな、「放課後デート作戦」、絶対にクリアしてさっさとこの百合営業期間を終わらせてやる!
◆
放課後の駅近には当然のように高校生・大学生が集結していた。スマホ片手に喋る恋人たち、アイドル雑誌を見ながらキャーキャーいう女子たちと色々な人種が集まっていた。
よく見れば同じ事務所のアイドルが握手を求められている。私たちよりちょっと格上のアイドル。街中を歩くと当然のように握手を求められるレベルまで早くたどり着きたいな。
「で、屋台ドリンクといっても色々あるけど、どこに行く気?」
「そうだね……流行りのタピオカというものを飲んでみたいね」
「それ結構前にブーム過ぎたぞ……」
薫の中では本気でまだ大ブームの中にいると思っていたのか見たことないほどの驚いた顔をしている。しかもさっきの発言から察するにタピオカ未体験ってことだよな、この時代に……。
まぁでも優等生が集まる学校に通ってたんだ、真面目ちゃんばっかりで放課後にお出かけしてタピるなんて文化無かったのかもな。
「まぁまだタピオカの店もあるだろうし、ハマってる人はまだ通ってるだろうから行ってみるか? 初めてなんだろ?」
「い、いや……ブームが過ぎたならもういいさ。他のお店を……」
何か焦っている様子の薫。ははーん、このブームの話では私に勝てないと見て焦ってるな? まぁそれはそれとして……
「薫は少し肩肘張りすぎなんだよ。少しは力抜け。仕事も大事だけどアイドルである前に私たちは華のJKなんだ。胸張ってタピりに行くぞ!」
そう言って強引に薫の手を引っ張って行ったことのあるタピオカのお店に足を向かわせる。
本当は安定感のあるステラバックスコーヒーとかタローズとかのがいいのかもしれない。でもタピオカを知らずに終わる薫がなんか寂しく感じたから思わずこんな行動をとってしまった。
もしかしたら薫のプロ意識を傷つけたかな……と思ってチラッと表情を伺うとほんのり顔が赤い。ひえっ! やっぱりプチおこじゃね?
余計なことしたかもと思いつつ、あれだけ偉そうなことを言ったんだからもう引き返せない。とりあえずタピってもらうか。
というわけで以前イチゴと来たタピオカのお店に到着。ブームが過ぎたとはいえまだそこそこのお客さんは来ている。百合営業の方も問題はないだろ、きっと。
「ほれ、何頼む?」
「悩みどころすらわからないね……無難なものは何かな?」
悩んでいる薫の顔は何か新鮮だな。メニュー表をかがんで見ているけどその顔に思わず見惚れそうになる。
本当、油断してたら見惚れるほど美人なんだよなコイツ。羨ましいというか、相方でいてくれて心強いというか。
「ガチ初心者ならシンプルにミルクティーでいいんじゃね? 私は映えを考えて抹茶にしとくわ」
薫が楽しむ分、私がちゃんと百合営業の効果の方を考えておかないとな。イソクサグラムに写真を載っけるとしたらできるだけバズらせた方がいいだろ。
「すみませーん。ミルクティーと抹茶1つ」
「はーい、1150円ね」
「ふぅん、高いな……」
お店の人が作るために奥へと行ったことを確認してから薫がこそっと呟いた。まぁ、気持ちはわかるぞ……。
珍しく薫に同調できた。
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