竜戦の熱気と
ラルアハは目を細めた。
鎧竜レイドア、普通の地竜と比較しても10倍はあるだろうか、通常の地竜自体、人間の2倍から3倍あるにもかかわらず、もっと大きい、遠目に見ても目の前に砦が聳え立っているように見える。
飛竜戦と違い、厄災級を取り巻く雑魚の地竜が直接壁になっており、イエドア戦のように直接攻撃を入れることはかなり難しそうだ。
走竜ロウドアに関してはこの位置からは見えなかった。
イエドアの死を悟ったからか、地竜の動きが慌ただしくなって砂煙を上げている。
ラルアハは2本の剣を腰に携えて、少し不機嫌そうにそれを見ていた。
■ラルアハ
所持トクル量: 12,902
筋力:S
体力:A
俊敏:S
魔力:B
神器:リベラの剣
トクル所持量が10,000を超えるものが持てるとされる対竜戦用神器を持つ。
剣身が青く発色しており柄の部分にトクル教会の紋章が刻まれている。
一振りに装備者のトクルを10消費する。
それは一般人の月の給金ほどに掃討する量だ。
神器所有者は、その名誉と共に竜戦参加義務が与えられるため、トクル量を維持することがかなり難しくなる。
当然無計画に神器だけを振り回しているわけにはいかないため、トクル消費の無い一般的な武器も使っている。
しかし、その武器もかなりの業物だ。
アルゼルート剣術の特徴である剣技、魔術のパッケージ化に合わせて、効率的に魔術発動が可能となるように作られている。
目の前の地竜をどこまで自身の部隊で捌けるか考えていた。
■ハリス
所持トクル量: 72,883
筋力:SS
体力:S
俊敏;A
魔力:S
神器:ソウルの斧
所持トクル量、潜在能力ともに化け物である。
斧刃が太陽のように赤く、眩しく発色しており、厄災級の竜と言えどもこの斧の一振りでかなりのダメージを与えることが出来るであろう。
ヘヴンリアの戦士の特徴としては魔術力を身体強化に当てて自由闊達に武器を使いこなす点にあるが、ハリスはその頂点と言っていい戦闘力を持っている。
重要な技に絞って極限までトレーニングをするラルアハのアルゼルート流剣術とは対照的だ。
「行くぞ! 皆私に続けぇ!」
ハリスの号令により接近戦部隊の突撃が始まった。
それに呼応するように地竜もこちらへ向かってきた。
総大将のハリスが先陣を切っている。
彼の場合、神器しか持っていない。
出し惜しみはしない、ということだ。
ハリスと最初の地竜とぶつかる。
ブッシャアアアアア!!
ハリスの最初の一振りはかなり大きく、地竜を3匹同時に引き裂いた。
顔は涼しいままだ。
ハリス直属の兵士も同じように竜を捌いていく。
直属の兵士は3人で一組になって一体ずつ竜を切っている。
彼らの武器はソウルの斧のレプリカだ。
準神器として3,000トクル以上の所持者でないと扱えない代物であり劣化版ではあるが、通常の竜に対しては相当な力を発揮している。
それに多種の部隊が続く形となり、混戦となった。
土煙と地竜のブレスの焦げ付く匂いが混ざって、そこは異様な熱気に包まれていた。
汗は噴き出て喉は乾き、いつも以上に戦士たちの体力を奪っていく。
ただ、戦士たちの士気は高い。
あのクラリエの部隊がイエドアを倒したという報告が戦士たちを鼓舞していた。
ハリス自身もそのままの勢いにのって厄災にたどり着けるかと考えていたが、地竜の物量も多く、そこまで甘くは無いようだ。
「ム……何か……来る!?」
ハリスは攻撃を中断しとっさにその場から離れた。
その瞬間奥の砂煙から何か光が見えたかと思うと、2mほどの幅があるであろう灼熱の光線が戦士たちを襲った。
ゴゴゴゴゴゴ……
轟音とともに風が吹きすさび、辺りの砂煙が吹き飛ばされたかと思うと、そこには無惨な風景が広がっていた。
その光線の跡には、それはかつて戦士であったであろう、黒く焼け焦げた物体が転がっていた。
これにはハリスもただ驚愕するしかなかった。
通常のブレスとは異なる威力のものだ。
それは厄災から放たれたものであろうことは容易に想像がついた。
「撤退だ! 一時撤退する! 皆なるべく散開しろ!」
ハリスは叫んだ。
この時、接近戦部隊は厄災のブレスによって4分の1の勢力を一瞬にして削られたのであった。




