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その勢いに乗って

 戦場の東、接近戦部隊の駐留する地域に簡易的な櫓が設置されていた。

 部隊長のハリスはそこから厄災の様子を直接監視していた。

 そこに慌てた様子の兵士が伝令を伝えに来た。


「速報です、弓兵部隊が飛竜イエドアを討伐しました、現在残りの飛竜の掃討戦となっております」

「なんだと? 誰が打ち取ったのだ、詳細は?」

「青き翼の団のクラリエ様です、決め手は……例の魔術矢によるものと思われます」

「な……クラリエ……ディーアムスの所の娘か……」


 ハリスは思いもよらない報告に普段見せないような驚きを見せた。

 本来であれば、人類にとって喜ぶべき報告なのであるが、ハリスにとってはやや複雑な心境であった。

 普段ヘヴンリア側の総大将を張っている以上、ティアラ側に大きな功績が残ることは今後のヘヴンリア側の処遇にも影響するからである。

 青き翼の団の団長はクラリエである。

 クラリエ自身の名声が突出して高いため、青き翼の団 = クラリエの団 = ティアラの団 という偏った認識を持たれているところがある。

 世界を代表できる名将として名高い彼も、立場上自身の所属する組織の利益の最大化に関しては目を背けられないのである。


「おい! ラルアハはいるか?」


 ハリスは櫓の上から、待機中のラルアハを呼び出した。


「はい、なんでしょう」

「報告が上がってないぞ、何でも屋」

「ふん、私は、どんな竜でも切ります、という意味での何でも屋なんですがね……」

「そんなことはどうでもいい、青き翼の団、どういう団なんだ? 息子がいるっていうからお前に調査を任せたんだぞ」

「私はただ単に倅に会いに行っただけですよ…… ってそんな怖い顔しないでくださいよ、名将ハリスの名が泣きますよ……すみません、結論から言うと何も分かりませんでした」

「貴様、ふざけているのか」


 ラルアハは軽口を叩いたがハリスの形相に今は冗談が通じないと分かると、仕切り直して報告した。


「いや、そもそも部隊台帳に書いてある以上の事は何もないってことです、矢にアイアンショップ直系のフォーアが魔術を込めて弓手が竜を狙って矢を放つ、矢が対象に接触、及び接近した際に魔術発動した際に魔術ダメージを与える、という寸法です、それを彼女たちはイエドアに実行して成果を上げた、ということでしょう」

「17そこそこの子供にそんなこと……、そんな理想的な兵器の構築が可能なのか?」

「その点に関しては……可能なのかもしれませんね」

「どういうことだ」

「手前味噌で申し訳ないのですが、倅の年代、今17歳の子供に奇才を持った人材が多い気がしますね、私の息子もそうなのですが、同時期に生まれたフェルベートのスギにしてもどこか途轍もないものをもって生まれた、そんな気がします、私が確認した限りではティアラのクラリエ殿やフォーア殿、サクラの直系の娘も同じ雰囲気を感じましたね」

「抽象的な言い回しだな」

「そうとしか言いようがないです」


 ハリスは少し考えて、落ち着きを取り戻した。

 いつものスマートな涼しい表情となった。


「ラルアハ、お前の発言は、分かった、……というのもクラリエには私もあったことがあるのだ」

「そうですか、まぁ彼女は言わずもがなですかね」

「ああ、2年ほど前か……予算会議の際にティアラ側とひと悶着あってな、あの偏屈貴族のディーアムスに直談判をしに行った際、クラリエに全て対応されたよ」

「まじですか……」

「折衝事項は全部彼女がやってたな……、なんでそんなことをしているのか、政治に興味があるのかを問うてみたら、彼女は何ていったと思う?」

「さあ?」

「トルスに旅行に行きたいから、父からその許可を得る為に執政を手伝っていると」

「ははは、あそこは色々おかしいですからね」

「ああ……、まぁいい、最近のティアラにはうまい具合に駒を進められているが青き翼の団にはサクラもお前の所の息子もいる、3州の英知が集った結果ということでティアラだけの武勲にはならんだろうな」

「その認識で大丈夫かと」

「まぁ若い連中に遅れず、我々も厄災を倒せということか……」

「はい、勢いに乗りましょう」


 ハリスは竜の監視用に用意した櫓かおり、部隊の前に立った。


「厄災、巨大飛竜イエドアはエヌトルフォの若き力、青き翼の団の手によって倒された! 青き翼の団は剣聖サクラの直系、魔術師アイアンショップの直系、トルスアルゼルートの公子が所属する3州の英知が集まった、新進気鋭の団である! 我々も彼らに続き残りの厄災を打ち倒すぞ!!」


オオオオーーーーーーー!


 戦士たちの声が戦場に響いた。


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