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嫌な予感

 無数の氷柱に貫かれて砂化している竜を囮部隊とともにイムルとサクラが見上げていた。

 竜の防御陣から炸裂した氷柱はイエドアの巨体を何本も貫通している。

 スギが撃った頭部側の氷柱の拡散と、リザイが撃った胴体側の氷柱の拡散が綺麗な模様を描き、砂化したイエドアを支えており、さながら巨大な芸術作品のようであった。


「何というか……氷の破片がキラキラしてて凄く綺麗だわ、これこのまま保存できないかしら」

「どうだろうな、竜は砂化してしまうと脆くなるし、氷は解けるからな」

「もう、ロマンが無いのね」

「厄災戦中だっていうのに、サクラはロマンを語るのかい?」


 キャオーーーーー……

 キャオーーーーー……


 上空ではボスを失った飛竜の叫びが空しく響いている。


「こっちは、もうあとは雑魚しかいないし大丈夫っしょ」

「まぁな」


 竜を見上げて一息ついている二人に囮部隊長が割って入ってきた。


「これが、クラリエ様とフォーア様が開発した魔術矢だ! 流石ティアラの星の力! 一瞬で厄災を屠ったぞ! がはははは! どうだぁ! 恐れ入ったかぁ!」

「はぁ、まるで自分の手柄のように話すんですね」


 イムルが突っ込んだ。


「何をいう! 当たり前であろう! 弓部隊と囮部隊は二つに一つ、弓兵が矢を当てられるのは我々が前線で囮になっているからだ!」


「「おおーーー!!」」


 部隊長の大声に隊員が掛け声を上げた。

 気持ち悪いほど統制が取れている。


「あははは、流石です」

「何をやっている! お前たちも継続して残りの飛竜の気を引くぞ! さっきの攻撃で弓部隊へのヘイトが高まっている! 休んではおれんぞぉ!」

「そうですね!」


「いくぞぉーーーー! エーーーーー! アーーーーーー!」


「「「エーーーーーー! アーーーーーー!」」」


「エーーーーー! オーーーーー!」


「「「エーーーーー! オーーーーー!」」」


 サクラは突っ込んでくる飛竜を捌きながらニコニコ顔で楽しそうに掛け声を上げている。

 場数を踏んで来たこともあって、通常の飛竜の攻撃くらいならもう余裕だ。

 イムルは未だに掛け声には慣れなかった。


――


「な……なんということだ……これが魔術矢の威力なのか……フォ、フォーア殿、この力は一体……これは今までの厄災戦でも最速討伐記録にもなるのではないか……」


 弓部隊長が唖然としていた。

 それもそのはずである、本来であれば飛竜群を地竜群から引き離すことが第一目的なのだ。

 飛竜をおびき寄せて距離を稼いだうえで本格的な対空戦を展開しようとしていたところをジャブ撃ちの段階で本気のストレートパンチを当ててKOしたのである。

 驚くのも当然だろう。


「部隊長! 次は雑魚飛竜の掃討だ! 班を交代するのか!?」

「は、はい! 1班に交代する!」


 フォーアが気の抜けていた部隊長の目を覚ました。

 まるでフォーアが隊長のようだ。


 攻撃のターンを終え、青き翼の団は一息ついた。


「ちゃんと目論見通りに竜を倒せました、皆さまありがとう」

「こちらこそありがとう、クラリエ様」


 クラリエと一同がお互いに称えあった。


「スギ君、リザイ君、高出力の魔術矢のコントロールはどうだった?」

「やはり、軌道修正が難しい、重い物をコントロールする感じです」

「そうだね、今回は対象が大きかったから大体のところに着弾したけど、小さい対象を狙うとすると難しいかも」

「そうですね、私は目を狙うように指示されましたが、防御陣が無くても目には貫通しなかったでしょう、結果的には頭部にダメージを与えましたが……」

「うん、そうだね、やはり魔術出力を上げるとコントロールが課題になりそうだね、まぁ幸いにも厄災級の竜は体が大きいので狙いやすくはある、よし、この調子で飛竜を掃討して地竜戦に合流しよう!」


 次の3班のターンまで時間がある、飛竜戦を見据えながら物思いにふけっているフォーアにスギが近づいた。


「勝ちを焦っているように見えましたが、いかがしました?」

「ああ、スギ君、そうだね、嫌な予感がしたんだ」

「嫌な予感?」

「そう、我々から竜までの距離が約500m、竜のブレスの効果範囲が約100m、もしイエドアがこちらに対してこの距離でも攻撃可能な手段を持っていたら、どうなっていたと思う?」

「それは……考えたくないですね」

「バリスタの矢が防御陣に阻まれた瞬間そんな事が頭によぎった、だから時間をかけずに切り札をすぐだそうと思った、それだけさ」

「なるほど、それは英断だったかもしれないですね」


 魔術矢を使った戦闘方針は主にフォーアが決めていた。

 フォーアの事だから実験を行うような思考で竜戦を進めていくかと思ったが、意外にも使命や人命を優先するものだな、とスギは感心した。

 


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