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想い貫く

「3班! 撃てー!」


 弓部隊長の号令をもって、スギとリザイは手渡された魔術矢をフォーアから受け取った。

 対竜弓と比較し一回り小さな弓を握りしめ、ゆっくりと構えた。

 スギはその細い目を大きく見開いて、エイミングの魔術に集中した。


「厄災の急所に氷の柱を打ち立てる!」


 スギの見開いた目を中心に光の魔法陣が展開される。

 スギの狙いは厄災が持つ6本の翼の内の一つ、その付け根だ。

 スギから見えるビジョンではターゲットとなる箇所がロックオンされた。

 矢を放つとそれは細い氷柱となり、空を駆け抜けた。


シュフィーーーン!


 甲高い音を立てて真っすぐとイエドアに向かう氷柱。

 スギはエイミングの魔術による軌道修正を行っている。


「そこだ!」


 ガシュン!


 氷柱は見事にイエドアの前方の翼根に突き刺された。

 その瞬間、軌跡となった氷柱が粉々に砕け散った。

 どうやら、貫通することは流石に出来なかったようだ。

 イエドアへ矢が刺さったことを確認したフォーアが叫んだ。


「発動しろぉ! アイスアァァ!!」


 ズッバァ!


 矢を中心にイエドアの体の一部が氷づいた。

 姿勢を崩したイエドアが地上へ落ちる。


「今だ! バリスタ部隊! イエドアを集中砲火しろ!」


 弓部隊長が叫ぶ。

 直下にて竜を引き付けていた囮部隊が退避した。

 それを機にバリスタ部隊は射角を下げイエドアを狙った。


バシュン!バシュン!


 乾いた音が戦場を響き渡る。

 一斉に放たれた矢がイエドアに集中する。


コアアアアアァァァ!


 イエドアの咆哮と共に竜の周囲に複数の防御陣のようなものが展開された。

 矢はその防御陣に突き刺さり、直進が止まった。

 防御陣の解放とともに矢は力なく地面に落ちた。


「これか! 竜の魔術防御というのは!」


 弓部隊は唖然としていた。

 確かに、先ほど竜が見せたものは魔術師が使う物理防御陣と酷似していた。

 しかし、竜の体からはトクルのようなものは感じない。

 一体どういうことだろうか。

 一連の展開を確認したフォーアは叫んだ。


「大丈夫だ! この程度の防御陣であれば、私たちならいける! 奴に最大魔力の矢を打ち込むぞ! スギ君は奴の目を狙え! リザイ君は胴体だ! 部隊長ぉー! 私たちにもう一発うたせろぉー!!」

「わ、分かった!」


 クラリエは既にトクルの魔術変換に専念していた。

 フォーアはそれを魔術矢に込めている。

 先ほどのトクル量とは比較にならない量だ。

 青き翼の団からクラリエの青い光が爆発するように輝いている。


 一連の攻撃でイエドアにはこちらの存在とトクルの異様な光を察知されている。

 イエドアの気を引こうと囮部隊が叫ぶも効果が無いようだ。


「これは……時間との勝負だね、イエドア! スギ君、リザイ君、準備は!?」

「いつでも大丈夫です」

「こっちもだよ!」


 ひと際光る魔術矢2本がスギとリザイに手渡された。

 スギとリザイは落ち着いた所作で構えた。


「イエドアよ……氷の檻で眠れ!」


 矢を放った瞬間、周囲に冷たい冷気の風が吹いた。

 先ほどの矢の氷柱とは違い、粗く太い氷の柱がイエドア目掛けて進んでいく。

 

コアアアアアアァ!


 イエドアの咆哮と同時に防御陣が展開される。

 氷柱は防御陣に直接突っ込んだ。


パアアアアン!!


 激しい閃光が発生したのと共に、魔術矢が防御陣で止められたことが確認できた。


「魔術矢でも駄目なのか!」


 落胆する部隊長にフォーアが返す。


「これからが魔術矢の本領だよ!! 発動しろ! アイスレアァ!!!」


ズバババババァ!


 防御陣に留まった魔術矢から氷の最上級魔法、アイスレアが発動し無数の氷柱がイエドアを貫いた。

 スギの放った矢は頭部を、リザイの放った矢は胴体を狙っているが、発動したアイスレアはイエドアの体全体を氷漬けにするほどの魔力を有していた。

 魔術効果は距離によって減衰するが、魔術矢は疑似的にフォーア級の魔術師2人がゼロ距離で大魔法を厄災の竜に当てたことと同じ意味を持った。

 前線で竜からの攻撃を防御しつつ大魔術を行使することが難しかったが、魔術矢がこれを可能としたのだ。


 望遠鏡を覗くフォーアが言った。


「うん、効いたみたいだよ、イエドアの砂化が始まっている、皆、ご協力ありがとう! はーっははは! 私たちの魔術が厄災に勝ったぞ!」


 スギ、リザイ、クラリエもフォーアの喜びににこりと笑って返した。

 短時間で起こった一連の出来事に弓部隊長をはじめとする歴戦の戦士たちは目を見開くしかなかった。


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