統制されし弓の部隊
「囮部隊の戦闘が確認されました」
「分かった、まずは、定石通りに行くか」
弓部隊長は言った。
弓部隊は囮部隊の約500m後方に展開している。
その数は約600ほどであり、そのうち約400が純粋な弓兵、残り約200が防御陣展開用の魔術師である。
全兵力の3分の2が弓の為に組織されているが、これは現在発生する竜の種類に飛竜が多く、それを効率よく殲滅するために弓が一番適していたためだ。
竜のヘイトを囮部隊に向けさせたまま、効果的に矢を竜に放てるよう、3班に分かれて横に長く展開し、交代しながら矢を放っていく。
一人の弓兵が1ターンで放つ矢の本数は3本だ。
対竜用に開発された弓矢は通常の物と比べると少し大きく、弦も硬く張られているため、並大抵の力では扱えない。
1本矢を放つにも相当な筋力と集中力を使うため、一度に放つ本数を3本までとし、別の班と交代することで継戦能力を上げているのだ。
このような事情もありエヌトルフォでは、弓とは力自慢の大男用の武器というイメージが強かった。
細身のスギや低身長のリザイは元々対竜用の弓は扱えないのである。
同級のダイアも、モルクもドラゴンハンターと呼ばれる力持ちの弓兵に憧れているのだ。
また、今回集まっている弓兵は特殊な装備の部隊もいる。
バリスタだ。
弓を引く力が無ければ機械的に矢を放てばいい。
これは当然の選択だ。
バリスタの開発も進んでおり人間以上の力で弓を引き、トクル魔術機構で矢の装填速度も速くなったようだ。
問題はそれ自体の大きさと重量から移動が大変なこと、扱う人間もそれなりに操作の習熟が要るということか。
己を鍛え弓を持つか、機械を研究しバリスタの性能を上げるか。
選択の幅と切磋琢磨する相手がいるというのは良い事だろう。
通常の弓兵で1,2班を組織し、バリスタと青き翼の団の魔術矢は3班に組織された。
今、1班の攻撃が始まろうとしている。
――
「1ターン目が終わりましたね、飛竜に矢は効いていますか?」
望遠鏡をのぞき込むフォーアに対してクラリエが様子を聞いた。
「う~ん、取り巻きを2匹ほどは撃ち落としたか、ただ、それが翼根にヒットしているかどうかはよく分からないな、まあ厄災には効いていないようだ」
「翼根が今まで確認されている弱点なのですよね」
「ああ、そこを貫けば飛竜の飛行能力を奪い、地に落とせると言われている、私の想定では竜の弱点とはその身体機能的なものではなく、竜を動かしている機構のスイッチをオフにするような意味合いが強いと思っているんだ、しかし……今回は機械的に矢の照射をしているだけなので個々の飛竜の弱点を狙っていない、ちょっと判断がつきにくいな」
厄災の飛竜イエドアの周辺には百近い飛竜が飛んでいる。
イエドア周辺に機械的に矢を放っている状態である。
ジャブを撃って様子をうかがっている状況だ。
飛竜撃墜を数匹確認したが、このペースだと囮部隊の防御陣が持たないだろう、各部隊が打ち終わる3ターンまでに大きくダメージを稼ぐための方針を決定した方がいいだろう。
「リザイ君、君はどの飛竜でもよいので今まで通りアイス級の魔術矢で翼根を狙ってくれ、スギ君、君はイエドアにアイスア級の魔術矢で……どの翼の付け根でもよいので狙ってみてくれ」
「分かりました」
「了解だよ」
青き翼の団の魔術矢は命中精度が対竜弓と比較しずば抜けて高かった。
前述のとおりその矢の出力強化をクラリエ、フォーアの魔術が担当し、狙いをスギとリザイが担当するため、弓手が狙いに集中できること、魔術制御による軌道修正がある程度可能なことが理由だ。
今までの戦闘で竜の翼根を正確に貫いてきたが、その竜のダメージを見ると魔術矢の威力が高すぎて弱点をついたかどうかに関わらないほどダメージを与えていた。
オーバーキルとなっていたのだ。
そもそもの話となるが、撃墜後の飛竜はほどなく砂化し、その亡骸を解剖して研究する等の事が出来なくなる。
また、イムル達が剣で切った後の切り口を見てみると、骨と肉が見える為、竜はやはり生物であろうということが伺える。
しかしその生命を絶った後は砂になってしまう。
戦闘中に情報をかき集めるしかないのだ。
フォーアは青き翼の団として竜戦を担当してからは嬉々としてその一次情報を集めている。
彼女の対竜研究は戦闘とともに始まったばかりだった。
フォーアがトクル供給源のクラリエからトクルを抽出し矢に対して魔力の装填を始めた。
彼らが1ターンで放てる矢は一人2発、計4発だ。
まもなく、青き翼の団の出番となる。




