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神界のシステム

 世界を滅ぼす?

 そんなこと神が言っていいのか……?


「神の発言としては少しだけ越権行為ではあるの」

「思考、読めるのですね」

「まぁ大体、高度な推測能力というだけだが」


 ふぅん。

 じゃぁ、見た目15歳前後の女だからその布の下はどうなってるのか、とか、そんな突拍子もないことを思ったら不味いかな。


「見るか?」

「結構です」


 高精度。

 嘘は無理だな。


「なんじゃ、お前もいい年の男なのだしそのくらい考えてもいいんじゃよ」

「いや……無理なんですよ、その母親が死んでから、そういう欲求とかも無くなって……」

「ああ、そうだったな、すまんすまん」


 言わすなよ。


「何故、滅ぼすかというと……これは個人的な恨みじゃ」

「神様が、特定の世界に、個人的な恨みねぇ……」

「そう、これは本来神にあってはならない感情じゃ、ただ……今回は神界の都合とわしの都合の利害が一致しておっての、……ああ、深くは聞かないでくれるのか、そうか」


 どうせ今の俺にはその理由を聞いたところで理解など出来ないだろう。

 さっさと何を為すべきかが知りたい。


「ああ、どちらかというと、そうだな、まずその世界のことを教えてほしい」

「うむ、ありがとう、対象の世界、エヌトルフォ、ここに生きる魂の幸福度の総量が絶大に大きい世界じゃ」

「それ、いいことなんじゃないんですか」

「そうじゃな、本来はどの世界も満遍なくこのように幸福だったらよいのだが、エヌトルフォの場合、ある年代から他世界に干渉して幸福度を吸収するようになった、その結果、エヌトルフォの幸福度だけが増大して世界全体のエネルギーバランスが崩れておるんじゃ」

「そのエヌトルフォを滅ぼせば、他世界のエネルギーバランスが元に戻ると」

「そうじゃ、理解が早くて助かる」

「神が直接手を下すことはできないのか」

「神となってしまってはもう、エヌトルフォに魂を送ることしかできない」

「……分かった」

「お前のいた日本もエヌトルフォの影響を少なからず受けておるの」

「へぇ……それが俺の不幸の原因とすることで動機付けたいのですね」

「ふむ…動機という意味では、な、申し訳ないが……」

「うん?」

「お前の母親の魂はエヌトルフォによって常に暗闇に固定されておる」

「……」

「あそこを滅ぼさない限りお前の母親だった魂はどこの世界に行っても、お前の親だった頃と同じ結末を何度も何度も繰り返す」

「お前……お前ええ! ふざけるなよ!!」

「ふざけている話なのは分かっておる、申し訳ない」


 死後の世界観につられて冷静に神と話をしていたが、一瞬で前世の怒りが自分自身を満たしていくのが分かった。

 それは肉体的な死を経験しても魂が怒りを忘れていないことを証明してくれた。


「ふむ、すばらしいな……」


 イムスは国崎の怒りの感情に伴って沸いたオーラに感心していた。


「分かったよ、お前に言ったってしかたないんだろ、あの人の魂を助ける為にはエヌトルフォを滅ぼす、これでいいか……」

「理解が早くて……助かるよ……」


――


「ところで、だ、よくあるだろ、転生する際に特殊能力をもらうとか、そういうの」

「いるのか?」

「そりゃあったほうが便利だろ」

「もうもっているだろう? お前はもう既に何世代もの転生を重ねる中で既に様々な能力を持ち合わせておる」

「え?」

「前世でお前はどう人を殺した?」

「果物ナイフで首をサクッと」

「それ、なかなかに簡単に実行することは難しいぞ」

「そんな、隠すのに便利で……あれで頸動脈をスッと撫でれば誰だって……あ……」

「思い出したか、この時代の日本で発現させることが難しいが、かなり高レベルの刀剣スキルの能力がお前にはある、生まれる時代が戦国であればかなり高名な剣士にでもなっていたろうに」

「あ……ああ……確かに、首を切った時に……妙な充実感があった、あれは……復讐を達成した喜びだと思っていたが」

「そう、能力に覚醒した喜びじゃよ」


 あの時はあまりにも非現実な状況下であったため、冷静に自分の感情など把握できなかった。

 今思うと……確かに。


「それと、スキルを付与しても良いが、それはお前の魂のエネルギーを必要とする、つまりその世界を滅ぼすための怒りのエネルギーが減少する、都合が悪いのだよ」

「……今回ばかりは確実にエヌトルフォを滅ぼしたい」

「ああ……分かったよ」

「お前は今まで128回の転生をしておる、その中であらゆる研鑽されたスキルを魂覚醒させるのだ」

「多いな、持ってるスキルの説明を求める気も失せる、要は現場で必要なスキルを覚醒していけってことだな」

「そう、その取得すべきスキルに迷ったらエヌトルフォの王都にある占いの館、セウィラヴィを訪ねなさい」

「占いの館? ……ああ、覚えておくよ」


――


「そして、次の課題だが……」

「まだ何かあるのか?」

「転生先での覚醒だ」

「覚醒? おい、記憶を保持したままの転生は無理なのか」

「無理……ではない、無理ではないがやはりエネルギー消費量が大きくお前の闇のエネルギーの多くを吸い取ってしまう、それではあの世界の幸福度にすぐに浄化されてしまうのだ」

「それじゃ俺があっちの世界で心を入れ替えたら世界間のバランスはもっと激しくなるだろ、今までどうしてたんだよ」

「闇の素質が強い魂を一か所に投入してお互いの作用で覚醒させるのを待っていた」

「成功率は?」

「大体2割程度だな……」

「やる気あるのか!? そんなのお前がどんどん魂を送る度にエヌトルフォのパワーが増大するだけじゃないのか」

「確かにな、ただ、結果的に幸福度の総量は今均衡を保ってるんじゃ」

「覚醒に成功した2割が幸福度の総量を抑えているか……、2:8の法則ってやつだな」

「ああ、今回ばかりは確実にいきたいどうするかだが……」


 不確実性の高い話だということが分かり、神の計画の杜撰さに苛立ちが積もってきた。

 が、ふと思いついた。


「……杉山と赤里」

「おお、お前が殺した魂か」

「あいつらが俺と近い場所に転生したら、怒りを思い出して覚醒する可能性は……高い」

「ふむ、いけそうだな、無縁の黒い魂より因果のある魂を一緒に送り込んだ方がいける可能性が高い、まったく、いい死に方をしおって」

「こいつ、本当に最低だな」

「これ、仮にも私は神なのだから、口に出していうな、表面上は敬え」

「考えが伝わるんだからしょうがないだろ……」


 アイツら……特に赤里……母親が死んだ後、日比谷でのうのうとランチで昇進した事を口にしていた場面を思い出したら一気に闇の力を充填できるに違いない


「あ、それと」

「ふむ、杉山の魂と赤里の魂の隷属だな」

「ああ、これはエネルギー消費的に無理か?」

「お前には奴隷隷属のスキルは既に備わっている、二つの魂にあらかじめお前に隷属するような隷属の盟約を刻印しておくことはできる、これはどちらかという杉山と赤里の魂のエネルギーを使う、問題は、ないな」

「分かった、転生先でこき使ってやる」


――


 「最後に、お前にはまだ世界を選ぶ権利がある、もっと中立的な世界でのんびりと過ごすこともできる」

 「ここまで話しておいてそれは無いだろ」

 「一応、手続上ちゃんと確認しておかねばならぬのだ」

 「お役所かよ! 前世で母さんやってくれた魂を救うために、幸福に歪んだ世界を滅ぼす、最高じゃないか、むしろこちらからも、その方向でよろしく頼むよ」

 「ではな、国崎邦彦であった魂よ、首尾よく行ったら、またここで会おう」


 ……


 …………


 自身が吸い込まれる感触。

 思考が途切れた。

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