王子の言葉
王子の思わぬ洗礼を受けイムルは狼狽えた、しかし周りを見渡すと、流石は歴戦の勇者たちといったところか、大事に至っている部隊はいなさそうであった。
少しざわつきはしたものの、各人ともすぐに持ち直し王子に敬礼を向けた。
確かに、この状況の中でスギと自分だけ場を離れるわけにはいかなさそうだ。
王子は少し不気味とも思える笑みを浮かべ、話始めた。
「まず、私がここに来た理由だ、それは君たち国民に対して私が前線で戦うことをアピールするものではない、ということを言っておこう……、理由は、私が王都で結果を待っていても、ここで結果を待っていても同じだからだ、つまりここに集まった兵力が我が国の最大の兵力であり、最大の権力なのだ、ここで厄災の竜を止められなければ、その時点でこの世界は終わりだ……、で、あればだ、その結果をいち早くこの目で見たいであろう?」
イムルは改めて王子を見据えた。
彼の語り出しはどこか今考えたかのようであった。
台本が用意されたような形跡はなく、王子自身の言葉で話しているようであった。
イムルが想像していた王子は、もっとカリスマ性が高く、もっと劇場型のしゃべり方で集まった全軍を鼓舞するようなタイプのように勝手に想像していた。
しかし、目の前に現れた王子からはそのような威厳や、竜が迫っている危機感を何も感じなかった。
……というより、寧ろ、今、この状況を楽しんでいるのではないか? という印象すら感じた。
「そして、この作戦を決行した理由だ、史上初の厄災3匹同時出現の中、今のところ発生源に3匹とも留まっている、これが各地へ分散した際には兵力を分散する必要がある、その際に兵力を適正配分できなかった場合には……まず負け戦になることは確実であろう……、それが一か所であれば? その調整が容易にできる、そして厄災級同士の連携は……今のところ確認できていない、もし厄災級が連携して攻撃してくるとしたら? その時は撤退して厄災の分散を図ればいい、だから今、君たちを集めたのだ」
やはり、楽しんでいる。
このノリは、フォーアが自身の理論を展開しているときのそれに近い。
イムルはふとフォーアの方を見ると、彼女もまた同じように不気味な笑みを浮かべていた。
「私が総指揮ということだが、現場の戦闘判断はハリスに任せてある、私はこの砦で状況を注視し本国への調整が必要な事項は全て私がここから指示をだす、君らは存分に厄災と闘ってくれればいい、私の事は気にするな、最低限の護衛部隊で対処しよう……、またこの場にいる参加者全員の功労に対し褒章を約束しよう、もちろん特に功績を上げた者にも更なる褒章を用意する! では皆の者! 万邦の未来をトクルと共に!」
「「万邦の未来を トクルと共に!」」
集まった戦士たちが一斉に唱和した。
イムル達は一連の出来事に圧倒されたためか、唱和のタイミングがつかめなかった。
――
解散後はすぐに行軍準備だ。
テントに戻る中で先の集会の感想についてイムルが話した。
「クラリエの言ってたこと、よくわかったよ、何というか……竜に対する無邪気さというか、素直さというか、そういった王子の純粋さが奇妙に感じた」
「そう……ですね、私が褒章を頂いた際にも祭事の手順とかそういったことを無視して気の向くままに私に話しかけられましたし、かなり自由な人……だと思います」
「スギ、お前大丈夫だったか?」
「はい、持ち直しました、やはり精神に直接干渉するトクル魔術でしょう……王子を前に色々思惑することは難しいようです、リザイ、君はどうでしたか?」
「ん? 僕? なんともなかったよー?」
イムルとスギは言葉を発せずとも、そうだな、と目で意識合わせをした。
「なんか王子ってフォーアちゃんに似てるよね」
リザイの爆弾発言。
「んん~? リザイ君、君、目腐ってないかい? 私の研究する義眼技術で新しい目玉に取り換えてあげよう!」
「うう……フォーアちゃん……酷い……」




