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テントの中

 拠点には青き翼の団用の大型テントが既に用意されており、一同はそこで待機することとなった。

 床はしっかりと基礎土台に木板を並べたフローリングになっており、その上に上質な絨毯を引いているため、座ると非常に心地よい。

 骨組みも木材を使用しており丈夫に組み立てられており、幕屋のように厚手の布がかけられていて風を凌いでいる。とても簡易的に作られたテントとは思えなかった。

 荷を下ろして、自分に割り当てられたスペースに腰を下ろした瞬間に、これは住めるな、とイムルは思った。

 皆大きく伸びをしたり、屈伸運動をしたりして長旅の疲れをいやしている。

 そんな中、テントの外では手早く水を調達してきたスギが湯を沸かし始めた。

 石材で作られた調理用の竈も用意されているほどの優遇っぷりだ。

 その動きを察知したフォーアが持参した大きなカバンの中から何かを取り出した。

 角砂糖だ。業務用の。

 スギによって手際よく6人分のお茶が淹れられ、団は本格的にくつろぎ始めた。


「あの……なんかさ、こんな事言っちゃアレなんだけど、キャンプ……みたいじゃない?」


 スギのお茶に一同がほっこりしている中、サクラが口を開いた。


「あ、それ俺も思った」

「私も、不謹慎ながら、そう思いましたわ、竜はすぐそこにいるっていうのに……」


 今が平和であれば、こんな学園生活も送れたんだろうなぁと思った。


「僕も、正直テントに入った時、凄くときめいたんだ! でもさ……、皆が外で準備している中で休息しろって言われてもそわそわしちゃうよね」


 普段から緩いリザイも気が引けているようだ。


「まぁ竜戦前の一時くらいは、いいのではないですか、役割分担なのですよ、戦士は戦いの時まで休息する、有志の市民は拠点や料理を作る、医者は負傷者を直す準備をする、今はそういうときですよ」


 スギが口にした言葉に、何故か一同はこのひと時の安らぎが許されたかのような錯覚を覚えた。


――


「クラリエ、そういえば、リカルマたちはどうなったんだ?」

「赤き翼の団はですね……本拠点の護衛任務です」

「え……ってそれ、リカルマ納得しないだろ! アイツ厄災倒すって相当息巻いてたじゃないか」

「まぁそうなのですが、そうせざるを得ない理由がありまして……」

「何なのよ」


 クラリエが少し沈黙した後、サクラが突っ込んだ。


「イムガルド王子が、自らこの拠点にやってくるのです、リカルマはその護衛隊の隊長として任命されました……」

「ええ! 王子自ら? そんな危ない事していいの?」

「王国の兵と民に任せて自身が前線に立たないなどあり得ない、と、王子はそういう方です」

「うっわぁー、 もしかして僕王子に会えるのかな!?」


リザイが期待したようにキラキラした目で話した。


「ああ、でもさ、王子って言ってもここにはクラリエみたいな超絶トクル保持者で超有名人がいるじゃん、俺らそのクラリエで慣れてるから案外期待はずれかもよ、なあ、クラリエは会ったことあるんだろ? どんな感じだった?」


 イムルは軽口をたたいてみせた。


「あ……あの……凄い人です……」

「クラリエ、語彙力」

「あ、はい、すみません、何というか白神褒章の授与で拝謁した際は、その所持トクル量による輝きもそうなのですが、同時にその奥に深い闇のようなものも一緒に併せ持つ……そのような感じの印象を受けました」

「想像つかないな……」

「そうですね、うまく言い表せません、とにかく私はその時の王子の笑顔が忘れられません」

「恋をした……とか?」

「い、いえ! そういう部類のもではなく……」

「ん?」

「その……このようなこと……」

「皆には言ってもいいのではないか? クラリエ」


 発言を戸惑うクラリエにフォーアが口添えした。


「分かったわ、その私が感じたのは……」

「感じたのは?」

「恐怖です」


 一同はお茶を飲む手が止まった。

 サクラはティーカップに口をつけたまま目を見開いて固まっている。


「ああ! すみません! 今のは忘れてください」

「あ、ああ、クラリエがそう感じたというなら、そうなんだろうな、確かに、リカルマたちの前では言えないな」

「だろ? イムル君スギ君なら大丈夫だと思ったのさ、リザイ君は……どうだい? ショックだったかい?」

「えー、僕は何ていうかなあ、大丈夫だよ、偉い人ってなんだか怖いって感じることもあるよね」

「あーそうそう、そういう感じです、リザイ」


 王子の印象に関して貴族が軽い気持ちで話し合うものではないな、とイムルは反省した。

 フォーアは前々からその話を知っているようであったが、スギは興味を示さず、幸いにもリザイは事をあまり理解していないようであった。

 となると一番心配なのはサクラだ。

 ヘヴンリアは王族への忠誠心が特に高い。

 不敬な話となると、サクラも黙ってはいられないかもしれない。


「サ、サクラ、お前も聞かなかったことにしろよ、な」

「あ、あのね、イムル、クラリエさん、私もね……道場への行啓でお姿を拝したことがありましたが……」

「う、うん」

「その……同じ事を思いました」


 意外であった。

 話の行先がリカルマの話題からそれたこともそうだが、サクラが同意したことに対してもだった。


「あ、ありがとう……というのは変かもしれませんね、少し安心しました、サクラさん」

「あ、あたしもよ、同じ印象を持った人がいるんだって少し安心したわ、特に家でそんなこと口が裂けてもいえないから」


 クラリエの爆弾発言も何とか収まったようだ。

 イムルは今のうちに話題の転換をかけたかった。


「リカルマは王子の護衛隊隊長に任命された、ということで納得したんだな」

「そうみたいです……ただ、竜戦に直接参加できないことに対しては複雑そうではありましたが……今回、王子からのご指名、ということもあって相当張り切ってらっしゃいました」

「それは良かった、では、あいつらの出番が無いように、厄災を拠点に近づけないことが俺達の仕事だな」

「そうですね」


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