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青の慧眼

 イムルは厄災竜用の駐屯地へ向かう馬車に乗り込んだ。

 クラリエはいつもの通り馬車内ブリーフィングを始めるつもりだ。

 手元には作戦内容が記載された資料と彼女お手製のサンドウィッチが添えられていた。

 青の翼の団では、これが毎度の竜戦最初の試練となる。


「今回の厄災について、竜の正式名称が決定されました、巨大飛竜イエドア、鎧竜レイドア、走竜ロウドア、それぞれ個性が異なるようですね」


 クラリエは対象の説明を始めた。


「まず、巨大飛竜イエドア、こちらはその名の通り飛竜の体が巨大化した個体ですね、飛行可能な個体であり、今は発生源周辺を飛び回っているようです、先行隊と交戦しましたが飛竜の弱点とされている翼の付け根付近への矢の攻撃が効かなかった、とのことです」


 イムルはルルーアとの会話を思い出した。

 どうやら竜の弱点はここ最近で変化していることは間違いなさそうだ。


「次に、鎧竜レイドアです、こちらも名前の通りなのですが、皮革が鎧のように硬い、地竜です、こちらは発生源から一歩たりとも動かず、じっとしている……とのことでした」


 ずっとその場に居てくれるなら無害だ、出来ることならそうしていてほしい。


「最後に、走竜ロウドア、こちらが……少々やっかいそうです」

「というと?」

「走るんです」

「……はぁ……」


 一同は地竜といえば、巨体を重たそうにのそのそと動き、攻撃時高出力のブレスで敵を焼き払う、といういったイメージを持っていた。

 そんなごつい地竜が2本足で立ってマラソンする姿を思い浮かべて、変な笑いがこみあげた。


「ああ……えっと、その、地竜にしてはスリムで、凄く動きが早いそうなんです」

「なるほど、そういうのとは戦ったことないな」

「あとは資料を各自読んでおいていただければ……、そして、これからが本題なのですが」

「……」


 一同は真剣な表情になった。


「今回の任、私達青き翼の団が、先頭に陣取ることになりました」

「ああ……そうか」

「現在共有されている機密情報と照らしあわせると、やはりまともに厄災と対応できる師団は私たちのみかと思われます」

「そうだな」


 一同はクラリエの発言を驚きもせず受け止めた。


「私たちが使っているトクル式の魔術障壁……どうやらそれが竜自身に展開されているようなのです」

「それはもう先発隊に確認されたってことか」

「これは今回の件で教会も対竜戦研究機関も竜自身がトクル魔術を使えることを公認せざると得なくなりますね」

「では、初運転だね、術式解除矢と」

「剣、だね」


 一同はこの事態を想定していたかのように、今後の対処に対して話していた。


「一方で厄災の攻撃方法は未だ不明の状況ですが、魔術攻撃が来ると仮定すると……」

「対魔術用障壁展開を準備している師団は少ないだろうってことだね、フフフ、私の障壁は計23枚の魔術と物理の層から成る混合障壁だよ、むしろ竜の攻撃が楽しみなくらいさ」

「……とまぁフォーアの心強い防御陣が無いと戦線に留まり続けるのはむずかしいでしょう」

「いずれこうなることを想定して準備してきたんだ、首尾よく討伐できることを祈って戦おう」

「そうですね」


 フォーアは竜戦のデータから既に竜自身がトクル魔術による物理防御展開を行うのではないかという予想を早々に立てていた。

 王国の黎明期では発生する竜は地竜のみであり、それに対する手段も、剣とトクル魔術であったとの記述が古い書物にあった。

 その中には、剣でないと倒せない地竜、魔術でないと倒せない地竜の2種がいた事が確認されていたという。

 そこから、魔術による物理防御と魔法防御、どちらかを付与されて竜が生成される可能性があるのではないか、と考えた。

 イムルはルルーアとの会話でどこまで話すか迷ったが、仮定に仮定を重ねた話に巻き込んで混乱する恐れがある為、この話まで踏み込むことはやめた。


「では、皆さん、最後に私特性の勝利を祈願したサンドウィッチをお召し上がりくださいませ」

「お、おう……」


 一同は目をつむり一気にサンドウィッチを口にねじ込んだ。


「今日のお味はいかがでしたか?」

「く~~~~~~、いやあ~~~~やっぱりクラリエのサンドウィッチは効くなぁ~~~~ちょっと馬車と並走する!」

「イムル様!? いくらなんでもそれは無茶です!」

「イムル、私もお付き合いしますよ!」

「スギ様!? 貴方もですか?」


イムルとスギが無謀にも走行中の馬車から飛び出した。

そうドタバタしている間に残ったリザイとサクラとフォーアは対クラリエサンドウィッチ用に開発された味覚を抑えるお茶でサンドウィッチを無理やり流し込んだ。


「ああ~~~(お茶が)美味しかった」

「あら、そうですか、それは良かった」


 クラリエは満足そうだった。


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