青き翼
「はい、僭越ながら、私が王より青き翼の団の団長を拝命し、この地の竜掃討を勅命され参りました」
クラリエが答えた。
「ここ最近の竜の発生頻度は異常です、やはり厄災の竜の出現が近づいているのでしょうか」
「分かりません、我々も勉学を一時中断し竜討伐の活動に専念するようにとのご命令を受けた以外には……情報が入ってきておりません」
「そうですか……学徒出陣、そこまでするような状況なのですな」
会話にある通り現在エヌトルフォ全域で竜の出現が活発となってきた。
各州の軍事力がほぼ竜対処に取られており、相互連携する余裕がなくなったところで竜戦の成績が著しく優秀であった士官学校の学生にその救援役としての白羽の矢が立ったのであった。
また、そのリーダーに高名なクラリエと、武勲の高いリカルマを据え、あたかも救世主のように取り扱うことで各地域の士気を上げようという目論見である。
ここには、ティアラ州の星、クラリエが救援隊として登場したのだ。
その目論見通り、砦の魔術師団は活気づいている。
「先ほどの氷の矢が魔術矢ですかな、我々の未来を切り開くという……」
「さようでございますわ」
あれから、フォーア達は魔術矢を完成させたのであった。
クラリエの魔術出力をフォーアが制御して魔術矢に流し込む。
スギとリザイは軌道制御の魔術に専念して魔術矢を竜に打ち込む。
弓の形を保っているのは物理的な張力も合わせて活用するためである。
これにより竜の中でも魔術耐性の高い個体には物理的な力で皮を貫通し、物理耐性の高い個体に対しては魔術の力で肉を凍らせるのだ。
「それに……剣士の方々の対空技術はまた格別でしたな、まさかあのような連携を可能とするとは……、長年竜討伐に身を置いていたにも関わらずかの竜を対処することが出来なかった自分としては、クラリエ様のお手を煩わせてしまい、お恥ずかしい限りです」
「いいえ、シドー、私は何も行っておりません、フォーアやトルス州のイムス様、ヘヴンリア州のサクラ様の才能を合わせた結果、とてつもない相乗効果を生み出したのです、これは我々各州の英知が生み出した奇跡なのです、その力をもって、長年私達を守ってくれたシドーを助けることが出来たのですもの、私はやっと恩を返せる思いですわ」
「クラリエ様……ありがとうございます」
シドーはクラリエの幼いころの護衛役として任務についていたらしい。
二人の感動の再開に周りの兵士たちの士気はさらに高まりを見せていた。
その様子をイムルとスギはやや冷静に眺めていた。
「勅命部隊がこのような形で効果を発揮するとは……王もなかなか人の使い方が上手でいらっしゃる……」
「お前にしては軽率な言葉だな、どうしたんだ?」
「いや、何でもありません、それよりマイア殿から次の目標が伝達されたようですよ」
「そうか、フォーアさん、次は? 計画通りそのまま南下かな」
フォーアが砦に設置されている魔術具を使用して作戦の伝令を受けている。
魔術通信。
魔術は空間を飛ばすとその威力は減衰してしまい、そのままでは遠隔地とのコミュニケーションは取れない。
しかし魔術電動効率の高い結晶で作られたネットワークを構築することでその簡単な伝文であれば伝達可能となっている。
ネットワークの構築自体は莫大な費用が掛かる為、各主要拠点を結ぶ程度となっており、一般家庭に普及するまでには至っていない。
フォーアはそのネットワークに専用の魔術具を接続することで本部との通信を行ったのだ。
「……いや、至急王都に戻るよう指示が出ている」
「え? そうなの? クラリエ! 至急王都に戻れって!」
イムルが叫ぶと、一斉に魔術兵から睨みつけられた。
「……しまった!」
イムルは一国の姫をいつものノリで呼び捨てにしてしまったことを反省した。




