これから
フォーアはイムルとスギに対し、士官学校で学ぶ基礎魔術論を一から彼女の認識する魔術理論に一説ずつ書き換えするように二人に解説していった。
イムルとスギは、初級魔術アイスと中級魔術アイスレアを基準として消費トクルを抑えつつ出力を増大させるためのトレーニング方法について学んだ。
外はもう暗くなっていた。
「フォーア、ありがとう、君が言うところのトクル魔術の感覚が何となくわかったよ」
「ああ、そういって貰えると嬉しいよ」
「でも俺達が教えてもらうばかりで結局提供できるものがないな、今度何かしらお礼をさせてほしい」
「いや、お礼というほどのものは……そうだな……スギ君」
「はい、なんでしょう」
フォーアは何か思いついたようにスギを見直した。
「君は魔術矢の習得を検討していたね……、それを……そうだな、先ほど教えた観点で技術を伸ばしてはもらえないだろうか、もちろん改良には私も関わらせてもらう、どうも新技術の開発には教義と前提を共有できる人間との方が良い」
「なるほど、いいでしょう、ではこれから私たちは技術的な同盟関係を結ぶということになりますね」
「そういうことになるな、クラリエ達には私から言っておく、いいですか、イムル君」
「俺は異論ないよ、スギ、まさに今後の方向性が決まってよかったじゃないか、占いまでしていたしな……」
「占い……」
フォーアはクラリエの占い結果を思い出していた。
「はい、まさに今後習得すべきスキルについてセウィラヴィに占いをしていただきました、結果はまさに、魔術矢の事が触れられていました」
「どんな結果だったのだい?」
「……汝の魔術の矢が運命の子を導く、と」
「運命の子……とは? クラリエの事か?」
スギは少し考えて答えた。
「どうやら、そのようなのです、クラリエ殿は行く行くは王家に入る身という噂が立っておりますよね、もしかしたらそれが実現し、私が彼女に仕官するのかもしれませんね」
スギは解釈を態とフォーアの言葉に合わせて返した。
スギの占いの結果についてはイムルとの間で既に話し合っており、スギは運命の子をイムルであると捉えていた。
イムルは黙って聞いていた。
「フ……」
フォーアは不敵に笑った後、少し落胆した表情を見せた。
イムルは何となくスギが本心を話していないことに対して彼女が落胆したのだと感じた。
「フォーアさん、俺たちの関係は始まったばかりだ、これから俺は君から学んだ魔術を元にその活用方法を考えていきたい、壁にぶつかった時は是非相談させてほしい」
「これから……そうだな、是非イムル君の行く道を見せてくれ、スギ、君もだ」
「分かりました、では私が貴方を寮まで送ることにしましょう」
「ああ、ありがとう……」
スギの送るという言葉はフォーア自身思いもよらなかったようだ。
少し顔が赤らいだ。
――
女子寮は士官学校校舎を挟んだ反対側にある。
女子寮までの石畳を二人は微妙な距離感で歩いた。
月が淡く二人を照らしていた。
「スギ君、今日は、そのお茶を7杯も頂いたね、君の淹れたお茶は美味しかった、本当にありがとう」
女子寮前で立ち止まりフォーアはスギに言った。
「最初の角砂糖はちゃんと16個、次は15個、その次は14個、4杯目は逆に増やして17個、5杯目~7杯目は16個かな、何がしたかったのかな」
「……ご名答です、味の違いが分かるのですね、糖分の取りすぎには十分お気をつけてください」
「ああ、乙女の糖分の消費は激しいからな」
「乙女……」
スギは突っ込もうと思ったが面倒なのでやめた
「私は君のお茶に惚れたよ、今度角砂糖は持参するのでまた飲ませてくれ」
「恐縮です、是非お時間があるときはお越しください、おもてなしさせて頂きます」
スギはクールに去るフォーアの背中を睨んでいた。
(ティアラ……何を企んでいる……)




