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占いの館セウィラヴィ

 占いの館は王都の中心街から少し離れたところにあった。

 華やかな中心街とは対照的で、建物もまばらで樹林も手入れされておらず未だ日は落ちていないにも関わらず暗い印象をイムル達に与えた。

 ちょうど自身のスキル習得を占う目的を持っていたスギに加え、イムルと、クラリエと同じように恋愛運を占うんだ、という意気込みを持ったリロがついてきた。

 

「うわー、こんなところに占いの館があるんですね、私一人じゃ怖くて来れなかったかも」

「いかにも、という雰囲気がありますね、確かに中心街の喧騒の中で占われても落ち着いて話は聞けなさそうです」


 スギとリロの話をよそにイムルは物思いにふけっていた。

 自分の為すべきこと。

 サクラをはじめとしてクラスメイトのそれぞれの想いに触れ、では自分は何なのだろうか、漠然と考えていた。


――


「よく来たね」


 そこには小柄な老婆が立っていた。

 黒いベールを何重にも重ねたようなドレスをまとい、そこにその年齢のものとは思えないような綺麗な金色のストレートの髪が伸びていた。

 

「……ふむ、珍しい客人だの……」


 老婆は一人ずつ占うとして、最初はスギを部屋に招き入れた。


「イムル君、イムル君は何を占うの?」

「あ、俺? 何となくスギについてきちゃったけど、俺も……そうだな、とりあえず自分が磨くべきスキルについて聞いてみようかな」

「そっかー、イムル君は恋愛運は占わないのかな?」

「え? どうして?」

「ほら! サクラちゃんと最近仲いいじゃない? え? 占わないってことはもうすでに成立しちゃっているとか?」

「いやいやいや、そんなことはないよ」


 イムルはリロの好奇心にタジタジになっていた。

 正直下心は無いと言えば嘘になるので、時間が来るまでヘヴンリア料理の作り方について聞くことにした。


――


「じゃあ、最後に、そこのボケッとしとる若いの」

「あ、俺? はい」


 老婆に呼び出された。


 占い部屋の中は意外に広かった。

 周りにはそれに使うであろう道具や書籍等が乱雑に置かれていた。

 粗暴な話ぷりや、この部屋の状況が老婆の性格を如実に表しているようであった。


「で、お主は何を占うのじゃ」

「あ、そうですね、これからどんなスキルを習得すればよいかお聞きしたくて」

「それがお主の知りたいことなのか?」

「え……」


 老婆の一言で我に返った。

 確かに、とりあえず口からだしたのはスキル習得の件であったが、確かにそれが本当に知りたいかというとそうでうではなかった。

 イムルはうまく言葉にできるか分からなかったが今の想いを率直に話してみることにした。


「あ……、はい、実は今迷い……というか、自身がどうこれから生きていけばよいか分からなくて……」

「ふぉっふぉ……急に素直になりおったな、まぁそれでいいじゃろ、自身がどう生きるかなど、雲をつかむような話じゃのお、そのような状態から答えを手繰り寄せる糸口はあったかの?」

「それが……見つからなくて」

「そうか……では、お主が最初に言ったスキルに着目してみるのも良いかの」


 イムルは話をスキルに戻されたことがちょっと引っかかった。

 スキルに着目するならこのくだりは要らないだろう、と。

 単純にこの老婆はぶっきらぼうではあるが、話をするのが好きなのだろう、と勝手に解釈することにした。


「お主が今まで研鑽したスキルで一番代表的なものはなんじゃ」

「剣技……ですかね……」

「それは何故身に着けたのじゃ」

「人を……守るため、でしょうか」

「人、とは?」

「え?」


 一瞬何を言っているのだ、と思ったが、主旨は分かった。

 誰を守るか、ということなのだろう。


「それは……家族……領民……そして……学校で知り合った皆、です」

「うむ、いいだろう、では一度守るということをより深く考える為に、極端なケースを考えてみるか」

「はぁ」

「仮にお主の領土を竜が襲った時に、お前はその剣で領民を救うことができるか?」

「まぁ、中型程度の飛竜であれば、何とか」

「倒せるのか、では、大型の飛竜がやってきたらどうする?」

「私が食い止めている間に領民を安全な場所へ逃がします」

「では大型の飛竜が二匹やってきたら? お前は一匹は抑えることは出来てももう一匹が領民を殺すぞ、そこでお前の目的は達成できたか?」

「……なるほど、身に着けるべきスキルはもっと他にあると?」

「いや、そうとも言っておらん、まずはお前の口から領民という言葉がでたからいってみたまでよ」


 自分の予測が否定されてやりずらさを覚えた。

 展開の想像できないコミュニケーションは疲れる、イムルはそう感じた。


「まぁ、もうちょっと辛抱強くわしに付き合え」

「はぁ」


 まるで心の中を見通されているようであった。




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