明日を占いに
イムルは自室で実家とアコへの手紙を書いていた。
実家への手紙は書き終わったものの、アコへの手紙を書きあぐねていた。
士官学校に入学してから、アコへの手紙を毎週は送っていたが、アコから返事が返ってきたのは一度きりだった。
―
親愛なるイムルへ
変わりないようで安心しました。
こちらは暖かくなり、祖母の腰の様子も大分落ち着きました。
イムルが最近顔を出さないということで心配しています。
こちらに帰った時に顔をだしてくださいね。
また、今年は春キャベツやたまねぎも豊作です。
今度そちらに送りますので皆さまで食べてください。
私のことは心配せず、今は大事な時期であると思いますので、貴方は貴方のことに集中してくださいね。
アコより。
―
アコからの手紙を何度も読み返した。
内容は母親から送られてきた内容とほぼ同じで家族の様子と自分のことを頑張れという励ましの内容であった。
イムルは苦笑いした。
「貴方は貴方のことに集中してください」
イムルは自分のこととは一体何だろう、と考えた。
アルゼルートに帰り、アコと楽しく過ごすことなのではなかったのか。
そのはずであったが、何故かそのままではいけない、というような焦りがイムルを襲った。
何を書いていいのか分からず、アコへの手紙を書く手がとまり、その日はついに書くことを止めた。
――
昼下がりのクラスではお昼ご飯を食べながら女性陣が会話をしている。
いつもでは賑やかに、会話に花を咲かせるといった感じであるが、今日は様子が違った。
どうやらクラリエの様子が少し落胆したように見える。
それをリロが慰めているようだ。
「クラリエさん、元気を出して、あくまで占いよ、そうと決まった訳ではないわ」
「でも……、王都で一番高名な占い師様に占っていただいた結果ですわ、どうしても気になってしまって」
イムルが事情を聴きに入った。
「どうしたんだ?」
「ああ……イムル様、王都の占いの館セウィラヴィってご存知でしょうか」
「ン……、ん~~~~、何か聞いたことあるような」
スギが割って説明した。
「王都にある占いの館ですね、恋愛の占いがよく当たるとかで今若い女性に人気があるとか」
「そうなのですわ、まさに私も占っていただいたのですが……」
スギは何でそんなことを知っているのだと、少し突っ込みたくなったが、クラリエが話を続けてきたので、少し黙って聞いておくことにした。
「私の運命の人を占ってもらったのです、その運命の方とはもうすでに出会っていると言われました、ただ……」
「ただ?」
「その方と添い遂げようとすることは命を落とすことになる、と占いにでました……」
「ええ!? 命がけの恋愛になると?」
「はい……なんて……不幸なのでしょう……」
報われない愛であることを占いに突き付けられた、ということでクラリエは感傷に浸っているのであった。
それを周りの女性陣が慰めている形であった。
フォーアの方に目をやったが、いつものことだ、と言いたげに頷いていた。
「それは、心中お察しします、そういった結果にならないよう、貴方の恋愛が上手く実るように祈りますよ」
占いの結果に対して、そうスギが返した。
「おい、スギ、お前のことだから占いなんて……その、あまり信用していないのではないかと思ったが、そうでもないのか?」
「信用? そうですね、偉大な始祖王も傍らに占星術師を置いたと言われています、自身の頭の中だけで考えるのではなく、別の視点を取り入れるという点では、未来を切り開く鍵になりえるのではないでしょうか」
一同はスギの意見に同調した。
そういうものか、イムルも思った。
「なるほどね……、ホントお前何考えてるか分からないわ」
「よく言われますよ、私もちょうど、今後の自分のスキル習得の方向性を占いに、セウィラヴィに訪問しようかと考えていたところです」
「恋愛運以外も占えるのか?」
「はい、相談したいことがあれば、なんでも話を聞いていただけるようです」
「へぇ……」
イムルはふと自室で感じた自分の心の焦りを思い出した。
「イムルもどうです?」
「ああ」
占いの館に出向くことにした。




