父から継承した剣、桜色付く
前線で置き去りにされたサクラとイムルは次の話題を探していた。
「イムル……」
「は、はい、イムルですが……何か……」
「あの、リロとは、仲がいいみたいね」
「え、あ、そうだね、いい友達だよ」
「普段、どういうことをお話してるの?」
そういえば、以前リロからサクラと仲良くしてくれと頼まれたものの、その後そこまで親しい会話を三人でしていたわけではなかった。
サクラは対人戦闘訓練ではっちゃけたと言っても、塞ぎがちだし、コミュニケーションを率先して取るタイプではなかった。
「そうだねぇ、学食の夕飯のメニューの話とかかな」
「それだけ?」
「昼食の話もしてるね、追加してほしいメニューとか」
「ごはんの話だけ?」
「え……えと……どうだったっけなぁ~」
サクラの質問攻めに答えあぐねているとき、弓兵側から鋭い光が上がった。
「うわ……すっげえ……」
「わぁ~綺麗な光、あれ、フォーアさんだよね」
遠くから見ていると良く分かった。
光の筋が通った瞬間、半分ほどの飛竜がバタバタと落ちていった。
「や、やばいね、あれ」
「ほんとに、私たち剣士って、存在意義あるのかな……」
本当にすごいものを見ると語彙力が乏しくなる。
まぁそんな中ではあるが、サクラの口から「私たち」という言葉がでた。
イムルはサクラが自分を同じ括りにしたいのだろうな、という予感を感じた。
「飛竜に対して私たちは無力だ……」
ゴゴゴゴゴ……
うなだれるサクラの背後から飛竜が数匹沸いて出てきた。
今いるここが、実は正に竜の発生源だったようだ。
発生した竜は3体ほどであった。
「え……そんな、こんな事って……」
「下がって」
「逃げましょう」
「いや、まだ撤退命令は出ていないよ」
確かに、イムルの場所までは撤退命令は伝わっていなかった。
「でも……」
「サクラ、君は一つ勘違いをしている」
「え……」
「アルゼルート流剣術……ツバメ返し!!」
イムルは発生した竜の真下に入り込んだ。
次の一瞬、垂直方向へ剣の軌跡が上がった。
シュピーーーーーーン
まず一体の竜が真っ二つになったかと思えば、イムルが空中で軌道を変え、その近くを飛んでいた竜についても二つに切り裂かれた。最後の竜は、数10メートル離れた距離を飛行していたが斜め線の剣閃が発生した瞬間に真っ二つとなった。
竜が分断された落ちていった先から人影が現れ、それがイムルだと分かった。
「これ、今イムルがやったの……?」
「そうだよ」
「す、凄い……、あ、あの勘違いって、なに?」
「俺たちの刃は、飛竜に届く」
この言葉は、サクラに刺さった。
本来のサクラであれば自分との格の違いを見せつけられ、また自虐に入るところであった。
が、一方で強い男子に守られるというのも憧れていた。
今回は後者が圧勝してしまった。




