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竜戦、成長の糧

 眼前を飛竜の大群が馬車の移動先と並行に移動している。

 その大群から発生られる咆哮は何重にも重なってイムル達に降りかかった。

 それだけで、普通の人間であれば震えあがり、その場から動けなくなるであろう。

 ただ、今回は相手が悪かった。

 これからの時代を動かす13人が集結しているのである。


 震えているのはルルーアだけであった。


 部隊は計画通り広く見渡せる草原地帯で飛竜群とぶつかることが出来た。

 囮役が最前エリアに配置され、弓兵がやや後方のエリア、回復、補給役は後方の森林エリアに位置付けた。


 回復魔術が使えるリロは囮役担当、クラリエは弓兵担当となった。

 傷ついた兵は後退して、彼女たちの支援を受けるのである。

 回復可能であれば、即回復して復帰、不可能であれば後退、これを繰り返して前線を維持するのである。

 さすがにここはクラリエも担当改竄をしなかった。

 理由はフォーアが弓兵団にいるからである。

 リカルマと同じく、いざというときのことを考えていた。

 クラリエはいざとなったらフォーアと組んで大魔法を発動して竜の群を一掃するつもりであった。

 一応、州対抗戦での切り札として残しておくべきだとは考えていたが、彼女もイムルと同じく、そのような考えはすでになく、純粋にこのクラスを守りたいという一心を持っていた。


――


 予想をはるかに超えて、飛竜の大群の攻撃は厳しかった。

 数は、もしかしたら当初想定していた20匹を超えて、30はいるかもしれない……。


 最終責任者であるブレイスは状況の見極めに苦慮していたが、それでも静かに戦況を見守っていた。


 囮役の部隊には一人につき、4,5匹の竜が襲い掛かるのである。


 「サクラちゃん! あぶない!」


 サクラを背後から滑空してきた飛竜をイムルは斬撃をもって対処した。

 しかしその斬撃は竜の致命傷を得られるものではなく、何事もなかったかのように上空へ舞い上がっていった。

 

 「ははは、さすがに剣士はバカにされるなぁ……」

 「あ……ありがとう……ございます……」


 一方、リカルマとベルナは難なく竜の攻撃をさばいている。

 フォローをいれたイムル対してにあのリカルマがウィンクをするくらいの余裕だ。

 彼も戦闘の高揚感からそんな態度をとったりするのだな、とイムルは安心した。


 しかし、サクラは震えていた。


 「なんで……なんであたしばかり狙うのよ……」


 サクラを狙う飛竜をイムルが捌く構図が出来ていた。竜としても本能で敵の中で一番弱い個体から倒して数を減らそうとしているだ。

 馬鹿にして……サクラは思った。

 こちらを狙ってくる際に彼女が得意とする対空剣術エアリアルで仕留めてやると目論んだ。


 「来た!」


 サクラは跳躍した


 「サクラ!迂闊だ!!!!」


 竜はすかさず反転しサクラの斬撃は空を切った。

 次の瞬間、弓兵の流れ矢が彼女の肩をかすめた。


 「大丈夫か! リーダー、一旦後退する!」


 「了解した」


 リカルマの槍が生み出す球状の軌跡が大きく揺れ動いた。

 その揺れに呼応するように竜が吸い込まれていく、これが彼の挑発術だった。

 実に見事な誘導だった。

 無事にサクラをリロの元へ送り届けることができた。


 「サクラちゃん! 大丈夫!」

 「うあーーーん、ごめんなさいいい……あたしのせいで……」

 

 泣き虫サクラの再登場だ。


 「謝罪はいい、それより無事でよかった」

 「うん、大丈夫よ、この程度だったら治せるわ!」


 傷が癒えてもサクラのプライドはずたずただった……。


――


 弓兵が攻撃に慣れてきたのか、一匹一匹、飛竜の撃墜が確認できるようになってきた。


 (やったか! よし、その調子だ……)

 

 ブレイスは戦況を見守っていた。

 開始から一時間が経過し、このクラスの竜戦の形が出来つつありほっとしている。

 周りの部隊に緊張感が走る一方、弓兵部隊は和気あいあいとしていた。

 

 「やったな! リザイ! そうその要領だ」

 「そうです! 今の良かったです」

 

 モルクとダイアは弓を習得したてのリザイを褒めた。


 「えへへへへ……フォーアちゃんに支援してもらったおかげだよ」

 「何をいう、君の日々の訓練の賜物ではないか」


 普段愛想のないフォーアもめきめきと上達するリザイを褒めている。


 囮部隊とは打って変わって弓兵攻撃部隊はリザイの保護者会パワーレベリング会場であった。

 スギも持前の要領で竜にダメージを与えられるようになったが、もたついたリザイをパーティメンバーがフルサポートして経験値を稼がせている形だった。

 当のリザイもその状況の意味は分かっていたが、経験値を着実に実力に変えていったのであった。


 竜が撃墜されるようになって、程なくしてターゲットは弓兵に向いた。

 その転換に時間はかからなかった。

 大群は一期に弓兵に襲い掛かった。


 「来たな」


 フォーアはやっと出番が来たと言わんばかりに瞬時に防御魔術を展開した。


 群がる竜は展開された魔術フィールドに弾かれた。

 しかし、魔術フィールドに対しその数は多すぎた。

 一機にフィールド周辺が竜の大群で埋められてしまったのである。


 (しまった!これでは大魔法が発動できない!!!)

 

 弓兵支援役のクラリエは焦った。

 近づきすぎたクラリエに護衛のルルーアが叫んだ。


 「クラリエ様、下がって! それ以上近づくと貴方までターゲットにされます!!!」


――


 一方前線。


 「イムル殿、手筈通り、ベルナとともに弓兵の救出に向かう!」

 「了解です! よろしく頼みます」

 

 ちょうどイムルとサクラが前線に復帰したタイミングで入れ替わるようにリカルマとベルナが離脱した。

 この空域には飛竜はいなかった。

 我々もそうだが、飛竜もなんという統率力だろう……。

 竜には高度なコミュニケーション方法でもあるのだろうか、ターゲットが変わるとしても、こうも簡単に大群が誘導できるものだろうか。


 「サクラ、少しやすもう」

 「あ……あのイムルさん?」

 「どうした?」

 「えっと……あの……よ、呼び方ぁ~~~」


 しまった、ついアコに話しかけるノリでサクラに話してしまった。


 「ご、ごごごめん! サクラちゃん」

 「ま、待って……  いいの……私を呼び捨てにしてくれても……」

 「うええええ? それは流石に」

 「イムル……私を助けてくれて……ありがとう……」


 妙な空気が流れた。

 イムルはサクラの呼び捨てにしてくれ、という提案を受け入れるしかなさそうであった。

 この子は雰囲気に飲まれやすいタイプなのだろう……。

 イムルはこの束の間の休息に今後どのようにサクラを口説くか脳内でシミュレーションした。


――


 竜の攻撃に対して展開したフィールドの耐久も限界に近づいていた。

 竜がぶつかる度、フィールドの表面から光が拡散し、すこしその厚みが減っているのが目視できた。


 「どああああああああああああ!」

 「らららっらららあああああああ!」


 間一髪、リカルマとベルナの槍と斧が竜の群がりを散らした。


 ただ、まだまだ不十分である。

 竜はターゲットを変えることなく、弓兵のフィールドを目標としている。


 「くっこれだけはやりたくなかったが……」


 「たのむ!」


 ベルナの顔が思いっきり赤面した。


 「ぷえろぉ~~~~~~~~~~~あうあうあぁ~~~~~~!」


 ベルナは奇声を発すると同時に、奇妙な踊りを踊った。


 それは……そのベルナの大きな体に似合ったゴリラのような……動きであった。 

 彼女は死ぬほど恥ずかしかった。


 この展開に、ティアラとトルス勢は唖然とした。

 普段冷静なフォーアも目を丸くしていた。


 竜も含めて時が止まったかのようであったが、その瞬間をリカルマは逃さなかった。


 槍を一匹の飛竜に貫通させたのである。



 「な……なんてやつだ! 槍で飛竜を倒しちまうなんて……」


 「フ……」


 リカルマは皆に自分の戦技をクラスメイトに見せつけられたことで少し安心した感があったが、それよりも弓兵救出に間に合ったことに安堵していた。


 「ほらっどんどんいくよ!」

 「応!」


 徐々にターゲットがベルナとリカルマにシフトしていた。

 ただ、彼らの攻撃は竜を散らすことは出来るものの致命的な攻撃を当てることは難しかった。

 ベルナの斧のクリティカルヒットも発生し討伐数は稼げたものの、竜の数の暴力の前に膠着した。


 そんな中クラリエが弓兵部隊に到着した。


 「フォーア!」

 「ここは……私たちの出番だね」

 「いいのよ、ここは大魔法を使って」

 「大魔法? そんなの必要ないさ、君と私なら上級魔法くらいで大丈夫かな」


 クラリエとフォーアが手をつないだ時、強大な光が放たれた。


 「「トクルの恩恵、氷の意志をもって今眼前の敵を撃たん、アイスレア!」」


 フォーアとクラリエの周りを氷の線が取り囲んだ。

 対人戦闘訓練の時と違い、氷は逆に細く、繊細に、数十本もの線が織りなされている。


 「「散!」」


 その掛け声と同時にその線は軌道を変え一直線に竜の大群に向かった。

 線はリカルマとベルナを避けるように角度を変え、竜の喉元、翼の付け根、急所という急所を貫いた。


 この魔術展開で、中空域の竜は全滅したと言ってもいいだろう……。

 

 「流石に、上空までの追跡はむりかぁ、もっと出力を上げる必要があるな」


 上々の戦果であるにも関わらず、フォーアは技術向上の事を考えていた。


 ベルナの挑発、リカルマの槍術、フォーアの魔術どれも奇跡の技であった。

 一時静かになった空間で、他のクラスメイトはこの状況を目を丸くしてみていた。


 「ってったーい! 撤退よ! 誤算だったわー」


 唖然とした一同を一変させたのはマイアだった。


 「ここ、まだ竜の発生源になっているみたいなの~」






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