頂上決戦
「皆、俺がやられたら後は頼む」
「えっ」
突如シギアは言った。
レオンハルトにとってはかなりシギアの言葉が意外だった。
こんなに明らかに弱音を吐く事は滅多にない。
しかしそれに反してシギアは1番率先して階段を上がり2階に行った。
そして
「俺がやる」
と言い、2階で待ち構えた7人の兵に一気に堕天使の羽根を浴びせ、生き残った兵には右手から出す波動で一気にやっつけた。
「はあ、はあ」
しかしレオンハルトは気づいていた。
シギアが肩で息をしている、弱みを見せるのが嫌いなあいつが。
「俺達も負けてられないぜ」
「道は俺達が切り開く!」
そう言って先輩騎士達は最後の力を出し切ろうと3階ではシギアが戦う前に暴れまわった。
最上階で部下がボスらしき男に報告に来た。
「サリディアス様、ヘリウムの勢いが止められません!」
椅子に座っていた28から30に見える幹部クラスの男は肘をつきながら戦闘意欲の高ぶりと自軍の負けぶりの苛立ちの合わさった表情をしていた。
「おのれ、かと言って今更マギーを人質にするのは卑小すぎる手だ。良いだろう。俺が迎え撃ってやる」
そう言って椅子から立ち剣を取った。
元々ヘリウムから攻めとったこの砦は暗黒時代のフランス同様木造である。
古代ローマのセルティウスが3.6メートルあったように並外れて城壁が厚い。
コントルフォールと呼ばれる控え壁がある。
城壁には木造櫓がありそこから矢で攻撃する。
城兵を守ると共に城壁から突出した場所にあり、城壁下部への敵に攻撃出来る様になっている。
木造櫓はやがて13世紀ヨーロッパの革新によって作られたように、シュトウルム帝国の技術により石造に設置するマシクーリに取って代わられて行く。
ヘリウムが石造を採用しなかったのは人員と費用が掛かりすぎたからだ。
ヘリウムは攻囲戦の際は破城槌と言う丸太で城門を打ち付けた。
猫と呼ばれるシェルターは13世紀まで攻城兵器の主体だった物である。
城壁下部をピックで攻撃した。
「皆、シギアをフォローするんだ!」
レオンハルトの号令でアリザインとアレーナ、エイスラーの4人で1気に4階の敵をせん滅した。
そして遂に最上階に到達するとサリディアスが今か今かと言う表情で待ち構えていた。
「あいつが親玉です!」
ガイは叫んだ。
「よし、一気にやっつけてやる!」
シギアはどこか焦っている。
サリディアスは挑発した。
「勇者様が最初から相手か、良いだろう、かかってこい!」
「うおお」
シギアとサリディアスは部屋中央でぶつかった。
剣がぶつかりバインド後にサリディアスは潜り抜けを使って突きを入れようとした。
これに対してシギアは右足を斜めに踏み出し潜り抜けを使った。
しかしサリディアスは防御しバインドになった。
屋根の構えのシギアに対し、サリディアスは上からのシギアの打ち込みを表刃で払った。
どうもシギアの剣に切れがない。
レオンハルトは思った。
どうもあいつ、切れがない上に焦っている。
シギアはテレパシーをレオンハルトに送った。
「俺いつまで持つか分からない、もしやられそうになったら皆で頼む!」
「シギア!」
シギアの珍しい弱音にレオンハルトは動揺した。
「あいつ、殺人気道術の特訓さえ我々に全く見せずにしていたのに……!」




