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賢者バククとペンダント

9月13日より気持ちが伝わるよう改稿しました。

 次の日突然シギアは家臣に呼び出された。


 フィリオは尻を叩くように大声で起こした。

「シギアさん、起きて下さい! 今日は大事な用ですよ」


「う……」

 さながら母親と寝坊した子供である。


「怒られますよ!」

「わ、わかった」

 シギアは溜息とともに半身を起こした。


「でも何の話か少し楽しみじゃありません?」

「うーん、俺は悲観主義的だから、不安の方が大きいよ。まあ、大方説教じゃないか? 勝手に行動するなとか」


「はーねむ……」

 起きたシギアは瞼が半開きながら顔を洗い鏡を見て身だしなみを整えた。


 すると、フィリオは何かに気が付いた。


「あ、あれ?」

「どうした⁉」


 体に、いや心にも何か押し寄せている様だった。


「何かすごい、何て言うかオーラとか波動みたいな物を感じて体にビンビン来るんです。霊感が強いのかな私」


「そ、そういえば」

 波動は2人とも感じていた。


「シギアさんも感じますか? あ、それと女神様から何か通信があるとか言う話なんですが」

「な、何だ?」


「配置転換とかじゃないですか?」

「またかよ!」


 シギアはようやく着替え終わった。

 呼び出しが何だろうと予想がつかなかった。

 

 やっと着いた1室で家臣は出迎えた。

「ああ、来たか! 今日呼んだのは他でもない。君に会わせたい人がいるのだ」


「え……」

 会わせたい人と言う謎を呼ぶ言い方は少しシギアを不安にさせた。


「さあこちらへ!」


 別の家臣が言った。

「この方、大賢者バクク様じゃ!」


 まるで入場パレードだ。


 いきなり温和さと威厳が良い具合で混じった白髪白髭の腕の筋肉は もはやない少し猫背の法衣を纏った老人が現れた。


 しかしシギアにも感じられたが、「見えない」圧倒的威圧感を感じる。


 これはシギアの勇者能力でもある。

 相手の内在能力をある程度感じ取れる。


 家臣は説明した。


「何をかくそう、この人は我が国において数々の功績を残して来た大賢者様だ。当然そんじょそこらの魔法使いなど比べ物にならない魔力を持っている。君にも感じられるだろう」


「は、はい」

 シギアにはバククの右手に青い魔力のオーラが見えた。


 家臣は話を転換した。

「で、ここから本題だが、実はバクク様から君に話があるのじゃ」


「えっ?」

 また、不安になった。


 バククは向きを変えすごいオーラを持ってシギアに一歩づつ近づいた。


「うう」

 その圧にシギアはたじろいだ。


「ふふ、シギア君、はじめまして。いきなりだが。君にこれをつけてほしい」


「えっ」

 バククはペンダントを手渡した。


「つけてみたまえ」


 シギアはしぶしぶペンダントをかけた。

「ふふ」

「えっ?」


 突然額に力を入れたバククは叫んだ。

「ぬん!」


「ぐ、ぐあ!」

 突如シギアに激しい頭痛が走り、全身がしびれた。


 立っていられない程だった。

「ああ!」


 シギアはそれを外そうとしたがさらに電撃のような衝撃が走った。


「それは、君を戒め動きを取れなくする道具だ。さらに私の念が送られた時君の体に激痛が走る」


 家臣は言った。

「悪く思わないでくれシギア君。君に勝手な行動を取らせないために バクク様に頼んだのだ」

「ふ、ふざけるな! これじゃ操り人形じゃないか!」


「別に食事やトイレの時まで君を監視するつもりはない。ただ戦いから逃げないようにするためだ」


「君は女神様に使わされて来たんだろう。だったら我々の為に戦ってくれ」

「……今日眠いんですけど」


 バククは唱えた。

「まずは回れ右!」

「ええ⁉️」


 シギアの体が180度後ろを向いた。

「はい、歩く!」


 いきなりシギアは行進を始めた。

「や、やめてくれ!」


「では私の荷物を取って来てくれ」

「な、何で、ああ、体が勝手に!、今日首や肩がすごく痛いんです!」


 シギアは荷物のある部屋に歩き出した。


 フィリオが言う。

「シギアさん、これでもう悪さは出来ませんね」

「悪さってなんだ!」

「いい薬じゃないですか」


 ところが、城の中には密偵がおり、その様子を全て見ていた。

「くっくく、良い事を聞いたぞ」


 昼食の時間になった。

「シギア、人形みたいな動き方で食べてる」


 何てこったいまるで操り人形かよ。


「さすがにこれはやりすぎにも感じるな」

「バクク様も思い切った事をした物だ」


「かったるい上に疲れた。寝て疲れを取ろう、お風呂も」


 その後バククは疲れたシギアに話しかけた。

「色々話は聞いたぞ」

「……」


「両親を追い詰めた犯人を探してるそうだね」

「は、はい」


「てっきりただのワガママ少年かと」

「はっきり言いますな」


「君は戦うのが怖いとかそう言うんじゃないんだな」

「そりゃ勿論」


「この国に留まるのか」

「勿論!」


 しかしバククは疑念の目でシギアを見た。

「しかし君は『早くこの国のトラブルを解決して帰りたい』と思ってるんじゃないかな」


「!」

 急所を突かれてしまった。

 嫌認めたくなかったのだ。

 

 レオンハルトに言われた様に自分の事しか考えないのは止めたと決意したと思ったのに。


「うーむ、それも良いが、それでは戦い抜けないな」

「……」


 シギアは心を見透かされたのか、がっくりうなだれ膝をついた。顔が青かった。


 「図星だったみたいですね」

 家臣や騎士の何人かが見ていた。


 ところが突然集合の合図がかかった。

「敵襲だ!」


 レオンハルトは言った。

「よし、ドレッド、行くぞ!」


「どうしたシギア?」

「体が」


「お、おい!」

「体が上手く動かないんだよ」


 そこへバククが来た。

「君の出番だ。何の遠慮もなく行きたまえ」


「勝手だな全く」


 憎まれ口に対しまた激痛が走った。

「わかった行くよ行く!」


 クリウは笑った。

「でも少しだけシギアの面白い一面が見られたみたい」


 城下町では帝国の兵士が20人程来ていた。

「今日はボスクラスの奴がいないんじゃないか」

「下級兵士ばかりじゃないか」


 帝国兵リーダーはほくそ笑んだ。

「くっくく、油断させろ」

 そして町中で両軍が激しくぶつかり始めた。


 しかし数も訓練度も明らかにヘリウム軍が上だった。

 どんどんと優勢になって行った。

「もしかして援軍が来るかもしれん」


 戦いはしばらく続いたが援軍は来なかった。


 しかし突如、あの密偵の男が口笛を吹いた。

「あいつだ。あの賢者のじじいを狙え! あいつが勇者をコントロールしてるんだ」

「なっ!」


「間抜けどもめ! 我々に情報は伝わっていたのだ! 弓兵はじじいを一斉に狙え!」

「いかん! 皆バクク様を守れ!」


「うおお!」

 特にシギアは矢の様なスピードでバククをかばうため戻った。


 勇者はスキル「高速移動」を速く覚えるのだ。しかし……


 時すでに遅く、矢はバククの胸を貫いた。

 時が止まる様だった。

 バククはどっさりと倒れた。


「あ、ああ」

 シギアはゆっくり崩れ落ちた。

 兵たちは絶叫した。


「バクク様!」

「いや諦めるな! 城にお連れして手当するんだ」


「これで勇者は動けんぞ!」

 シギアはうなだれながら泣き憎しみに支配された。


 血が出そうなほどの歯ぎしりをした。

「く、くうう! う、うう」


 また救えなかった。

 また自分のせいで人が死んだ。 

 また死ぬのを見てしまった。


 何で俺はまぬけなんだ。

 何て弱いんだ、そして冷たいんだ。


 シギアは遂に立ち上がり鬼神のごとき勢いで帝国兵たちを切り裂いていった。帝国兵は畏怖した。

「どういう事だ!?」


 しかしそれはどこか悲しみと後悔をごまかし蓋をする感情から来ている様であった。


「シギアが動けるように?」

 しかしそれを感じさせる間もなくシギアは帝国兵たちを切り、帝国兵の生き残りは撤退した。


 城ではバククの通夜が行われた。

「何故シギアが動ける様になったんだ」


「いや、その話は明日にしよう」


 そして夜がふけた。

「シギア、大丈夫か?」

「体が痛い。全身が……」


 フィリオは言った。

「これで全身を冷やしてください! 医務室に行ってきます!」


 家臣は困った。

「どうすればいいんだ。これは前代未聞だ」


 シギアは深い悲しみに包まれた。

「俺のせいだ」


 レオンハルトは言った。

「お前は何も悪くない」


 家臣は言った。

「もしかするとバクク様の思念がお前を解放したのかもしれん」


 皆手を合わせていた。

「バクク様の魂が安らかに召される事を今は祈ろう」

「しかしシギア君が体がずっと痛いと苦しんでいます」

「念を送る方が亡くなる等前代未聞でどうしたらいいか分かりません」


 シギアは震えて拳を握った。

「戦う理由に、答えを出して見せる‼️」



 その夜またワンザは目覚めた。

「眠れん」


 するとまた神々しい光と共に女神が現れた

「何と!」


「大変な事になってしまったようですね。私たちの力不足です。わかりました。もう1人救世主をつかわします。でもそれは天界でなく人間界にいます」



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