逆転の投げ
何と、2人がかりでの奥義でもジャブリールのバリアは破れなかった。
呆然とする2人。
ジャブリールは大きな口を開け笑った。
「はーっはっは! もう手は尽きたんじゃないか?」
レオンハルトは何かを思い立ち急にシギアの前に立った。
「くっ!」
「何する気だレオン!」
レオンハルトはシギアに叫んだ。
「逃げろ!」
「何言ってるんだ⁉」
シギアは彼の心意気が痛いほど辛かった。
ジャブリールは馬鹿にして笑った。
「ふん、美しき友情か」
意を決したレオンハルトはシギアが止めるのも聞かず果敢にジャブリールに切り込んで行った。
「くああ!」
激しい気迫の剣攻撃で何とかジャブリールを食い止め、文字通りシギアを逃がそうとした。
そしてさらにもう1発、今度はかなり近接広範囲用奥義を放った。
食いとめるだけでなく倒す意義もあった。
レオンハルトは踏んでいた。
さっきの奥義は直線型だった。
この広範囲奥義ならばどこかバリアの弱い所を切れる。
バリアにも弱い所があるはずだ。
シギアの奥義に似た扇形エネルギーが剣から放出される。
しかしこれもジャブリールのバリアには通じなかった。
「残念だったな! このバリアに弱点などない!」
そう言って奥義をバリアで防いだジャブリールは返す刀でレオンハルトを切った。
「ぐあ!」
レオンハルトは倒れた。
「レオン!」
「ぐぐ……!」
しかしレオンハルトは立ち上がって来た。
「ほう、まだやる気か?」
「当たり前だ! ヘリウム騎士の誇りはこんな所でついえん! 皆命を懸けそして死んでいったんだ。俺より年上の人達が」
「じゃあ貴様も死ね!」
しかしそこにシギアは立ちはだかった。
「何? じゃあ貴様から死ね!」
その瞬間、ジャブリールの体は宙を舞った。
「えっ⁉」
後方にどさりと叩きつけられた。
「何が起きたんだ? 何だと言うんだ? 魔法か」
シギアは苦しみながらも自信を持ち言う。
「魔法など使ってない。投げただけさ!」
レオンハルトは驚いた。
「まさか、空気投げ?」
ジャブリールは慌てた。
「馬鹿な、貴様は殺人気道術は素人だろう! 使いこなせるわけがない!」
と言って切りかかったがまたも投げられた。
「馬鹿な! 相手にふれずに投げる格闘技などこの世にあるわけがない!」
シギアは汗を垂らしながらも自信ありげにほほ笑んだ。
「いや、全く掴まないんじゃない。わずかなスキや面積を速い速度で掴んで投げるんだ。触れずに投げているわけじゃない。俺は集中すればバリアやあんたの隙が見えるぜ」
シギアの目はまるでターゲットにロックオンするような赤い丸がジャブリールの体に見えた。
ジャブリールは驚嘆した。
「まさか、バリアごと掴んで投げたと言うのか」
レオンハルトも驚いた。
「あいつバリアを柔道の襟をつかむ様に?」
宝児も感心した。
「す、すごい、あれを完璧にマスターするなんて」
「いやとても完璧じゃないさ」
シギアは否定し汗を垂らしている。
「えっ?」
「付け焼刃みたいなもんさ。投げられなければ負けていた」
レオンハルトは思った
こんな時にまで賭けをするなんて、あいつ、何てすごい奴なんだ。
「そ、そうだ、伝説の格闘術を貴様ごとき小僧がマスターできる訳がない! まぐれだ!」
ジャブリールはそう言って切りかかった。
シギアは投げようとしたが今度は失敗しまた胸を切られた。
「シギアさん!」
「ほうら見ろ! ただのまぐれだ!」
と思った瞬間またもジャブリールの体が宙に舞った。
「えっ?」
そこにはアリザインがいた。
「アリザイン!」
「今日、特別に謹慎が解け救援に来た! それにしても空気投げをここまで使いこなすとは! 貴様ここまで好き勝手やるとは、この俺が終わらせてやる」
「何? 貴様も殺人気道術の使い手?」
シギアはアリザインに言った。
「よし、俺と2人で投げてくれ」
「わかった」
起き上がったジャブリールを2人がかりの空気投げが襲いジャブリールは遥か上空へ投げられた。
「よし、今なら切れる!」
「よし!」
シギアとアリザインはジャンプして空中の無防備になったジャブリールを切った。
遂に勝負は決した。




