ミランディの過去
ミランディの少女時代、まだ7才の彼女はある夜突然父親に治安の悪い町の中に連れていかれた。
父親は背中の広い、ひげを多くはやしたたくましい男だった。
ミランディは行きかう人等を見て町の雰囲気に怯えた。
「お父さん、何か怖そうな人多い」
「……」
しかし父親は何も答えなかった。ミランディは段々不安になった。がたがた震えている。
「ねえお父さん、どこまで行くの?」
するとふいに父親はかがみ、ミランディの両肩を掴んで言った。
「ミランディ、ここから1人で家まで帰って来なさい」
「えっ!」
あまりに唐突な、意味が理解しかねる言葉だった。
もはや頭が混乱していた。
そしてそう言うと父親は全速力で走って行ってしまった。
「やだ! 待ってお父さん!」
置き去りにされた恐怖と言うより、何が何なのか何が起きているのか全く分からなかった。
それからミランディは泣きべそをかきながら町をこわごわ歩いた。どちらが自分の家かは分からない。
「お父さん、何でこんな事するの」
ミランディは思った。
私が何か悪い事したからかな。それとも前から嫌いだったのかな。ひどいよう。
そこへ柄の悪い14才程の少年たち4人が来た。
「おーい、おこちゃまはこんな時間歩いちゃだめでちゆよ」
「お母さんはどこかな?」
案の定からんできた。
ミランディはたじろいだ。
「何この人たち、怖いよう」
少年の1人は言った。
「こいつ親とはぐれたみたいだな。ちょうどいい」
「えっ?」
ミランディの背中に悪寒が走った。
「さらっちまうか。俺の先輩は人身売買にかかわってる」
「えっ! やだあっ!」
「暴れんじゃねえよ!」
少年はミランディの手を強く引っ張った。
「えい!」
やけくそでミランディは手から覚えたての魔法を出そうとした。しかし出ない。
「あれ?」
「だーっはっは! 何も出ねえじゃねえか」
「おら来いよ!」
「えい!」
すると2度目の挑戦で手から小さな火球が出た。
「うわ、こいつ魔法が使えるぞ!」
ミランディは手を振り払って逃げた。
「えーんえーん」
その後もミランディはどちらに行けば家なのか分からず町をうろうろしていた。かれこれ2時間。
「えっえっ、寒いよう、道が分からないよう。きっとお父さんは私が嫌いになったんだ。だから捨てようとして」
「ミランディ!」
そこに母が現れた。
「お母さん!」
2人は抱き合った。
「ああ、こんなに寒い思いをして!」
帰ってからミランディの両親は喧嘩をした。
「あなた! どういうつもりなんです!」
「ミランディは将来勇者にならなければならん。だから1人前になる為の訓練としてやった」
「訓練何てレベルじゃないでしょ! 私が見つけられなかったらどうなっていたんです!」
「私が子供の頃はもっと試練を積まされた。大変だったよ。あいつはいずれこの国を背負い戦わねばならん」
「あの子はまだ小さい女の子なんですよ!」
ミランディはドアの影で見ていた。
「何かケンカしてる」
この時以来急にこの時のトラウマが頭に浮かび怖くなることがしばしば起きる様になった。
現実に戻る。
そしてこのトラウマの為ミランディは動きが鈍くなり隙を付かれ腹や足を切られてしまった。




