恐怖を隠す戦い
「くっ」
さすがに幹部と部下に囲まれた状況でミランディはじりっと後ずさりした。
汗をたらし歯をがちがちし自分を守る様に腹に手を当て何とか自分と戦い歩をとどめた。
逃げられない事は分かっていた。
ザネリーはミランディの逃げたい気持ちを見破ったか釘を指すように言った。
「ちなみに逃げようとしたらどうなるか」
手下の一人が死ぬ寸前まで痛めつけた町民の男をまるで材木のごとく運び盾のように体の前に出した。
「あっ!」
ミランディは戦慄した。
これから町民が殺される予感がした。
「やれ!」
ザネリーの指示で矢で何本も狙い撃ちにし盾のようにされた町民は息絶えた。
「ぐっ!」
ミランディは唇を噛み目を背けた
ザネリーはにやりとしながら死体の顔を蹴り言う。
罪の意識などない。見世物としか思っていない。
「言っておくがこいつら痛めつけた民衆はただの盾だ。いや余興も兼だが。貴様が部下を攻撃して逃げようとすればこいつらは盾になって死ぬ」
そして近くにいたマルラボの様な帽子を深くかぶった魔導士は映像を出した。
するとメガスの映像が現れた。
ザネリー達はかしこまった。
「ははっ!」
メガスは映像から指示した。
「ザネリー、ゆくゆく勇者たちもここに恐らく来るだろうが、その娘はある高名な剣士の娘だ。将来勇者になる様育てられている。ゆくゆく成長すれば我々の脅威になるやもしれぬ。ここで芽を摘んでおけ」
「ははっ!」
「ほう、この純情そうな娘がねえ」
と部下たちはくっくっと嫌らしい笑いをした。
ミランディ体に走る悪寒に汗を垂らしながら身構える。
ザネリーは余裕を出しながら言う。
「よし、部下たちには手は出させん。私が一人で相手をする」
ミランディも負けじと言い返す。
「私も父と母の名に懸けて、貴方たちを討つ!」
「ふん」
勇者の娘である事に相応しくなるよう、そして町民をいたぶる事に国を愛する物としての怒りと一人で幹部を相手にする心細さがあった。
ミランディは構え間合いを取った。
しかしスカーフをいじる動作をしたり右腕を無意識に押さえたりした。
それは既にザネリーに心を見抜かれる材料となった。
「ふん、貴様は自分を既にかばう動作をしているのに気づかんか。右の剣を持つ手で体の前面を覆う様に構えている」
「うっ」
ミランディは心を見透かされた様で怖くなった。
相手は自分より経験豊富で様々な点をよく見ていると思うと委縮しそうになった。
「どうした」
ザネリーは言葉でミランディの心をつつき、お前の心の中はお見通しだと言う優位性を誇示した。
ミラムロは心の穴を見られた気になりながらそれを隠し通そうと闘志を振り絞った。
「はあっ!」
一気に切りかかった。
ミランディは剣を構え突撃した。
勿論、最初から飛ばしてしまえば隙は出来るし体力も減る。
そんな事は父たちとの修練でさんざん言われた事だが、この状況下とどぎまぎしやすい性格でつい突っ走った。
そして先日のシギアとの戦いの事が頭に浮かんだ。
「私は勇者になる為、ゆくゆく国を守る為と育てられた。この国を汚したり人を苦しめるのは許さない……両親の名に恥じない戦いを。そしてシギアさんにも認められて見せる!」
しかし突進して出した剣は軽く払われた。
「ふん」
「ぐっ」
しかし、気迫全開で挑んだものの軽くかわされてしまったため少し覇気が弱くなってしまった。
後方に下がるミランディだがそれを後ろの部下が逃げられない様塞ぐ。
気を取り直し再度気合を入れミラムロは突進して行った。
体力的にも飛ばし非常に速く仕掛けた。
激しい渾身の突きを序盤から何発も出して言った。
勿論相手もまだ本気でないが反撃してくる。
ミランディは相手の剣をひじを曲げ顔の上にあげて剣を斜め下四十度程の角度に出して決死の姿勢で防御した。
とても余裕のある防御ではない。
攻めが大味だったせいで防御も大味になっている。
しかもザネリーはまだ余裕綽綽である。
剣圧は強いが。ミランディの防御には悲壮感さえ感じさせた。
まだ様子見の段階のザネリーだから攻撃を何とか防げているだけだ。
ザネリーはミランディの弱気を見透かしていた。
自分の体、特に顔を守ろうとしているのが見え見えであった。
ザネリーは思った。
目が負けてるんだよ!
ミランディも反撃する。
突き出した剣を防がれると斜め上三十度からやや大振りに切りかかった。
一撃で決めようとするような大きな剣の軌道で気迫はあるが冷静さを欠いている。
「ふん」
これもがっしり受け止められた。
防がれると今度は水平より10度斜め上の切りを放った。
そして2発、3発目は角度15、20とずらしながら上から下に変化させながら剣を繰り出して言った。
彼女なりに緩急と変化を付けようとしてはいる。
しかし危機的意識から柔軟性が下がった。
シギアと手合いした頃よりもっとだ。
剣を後方に引き絞り渾身の闘志と力で繰り出した。
しかし本来の彼女の太刀筋に比べ大味で気が出すぎていた。
恐怖で目をつぶりたくなるのをこらえていた。
しかし目をそらしたくなかった。
一方ザネリーには「そらさないようにしている」のが見え見えだった。
宝児は恐怖と戦いながら必死にミラムロを探していた。
「ミランディさーん!」
ミランディの胸中に私の怖がりは、幼少時代のあの出来事で……と思い出がよぎった。




