表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天から落ちた最強だが性格が悪い最低ランクの勇者が地上で独立部隊パーティーの一員に任命され帝国と戦う  作者: 元々島の人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/225

誇りの咆哮

 夜の闇を割き、アリザインの咆哮が辺りに、そしてメガスの耳にとどろいた。


 それは数分前の彼とは違った。確かに違った。

 変わっていた。殻を脱ぎ捨てた。


 完全に催眠術にかかっていた頃を捨て、新しい勇気を纏った姿の象徴だった。


 アリザインは宣戦布告の様にメガスに向けて叫んだ。


 メガスは、飼い犬に強く噛まれたような見下した上での苛立ちを持った眼差しでアリザインを見た。


 人格も能力も存在も全て見下した。

 機械音の様な歯ぎしりもした。


 そして見下しながら脅した。

 脅迫であり最終宣言でもあった。


「貴様、我々のおかげで貴様の腐った一族の秘密を公にされず表を堂々と歩けるようにしてやったものの……貴様は『敵』ではない『裏切り者の裏切り者』だ。ヘリウムを裏切って今度は我々をも裏切った。もう、お前の居場所はこの世にない」


 メガスは念を送ろうと手を伸ばした。

「ぐっ!」


 アリザインは激しい念波で首を拘束された。

 強い力で締め付けられた。


 メガスは少なくともシギア達の前に現れてから最も重く低い声で言った。

 死刑宣告だった。


 そしてアリザインの血筋まで徹底して罵倒した。


「お前はここで殺す。苦しんで死ぬ。そして1族の恥は消すものもいないまま汚れた名前を世に残す。貴様の1族は殺人一族だ。殺人気道術は殺人をする為作られた悪しき汚れた格闘術だ。貴様の父も祖父も汚れた人間だ。まあ、確かに強いがな。我々に大人しく従っていればヘリウムの王になれたかもしれぬのに、それもお前の本心だろう?」


 レオンハルトはそれを聞き、この前アリザインが「ヘリウムの王に」と語っていた事を思い出した。


「そ、そういえば……この前言っていたのはお前の本心なのか? 操られていただけじゃないのか?」


 レオンハルトも聞くのが不安だった。


 本心を認めレオンハルトに言うのが恥ずかしい気持ちはあったが、アリザインは開き直る様に全て心の内を吐いた。悪心も弱さも。


 信用されなくなる覚悟、いやそれをも乗り越えていた。


 今ならシギアも、レオンハルトも皆を信じ言えると言う気持ちだった。


「……催眠術もあるが、俺の心には確かに欲も野心もあった。最初は小さかったが、こいつらに『大人しく利用されれば大きな地位を与える』と言われて心が動いたんだ」


 その申し訳なく思う気持ちにメガスは追撃をかける。

「だから貴様は弱く小さい人間だと言うんだ」

だから言ったろう、とでも言いたげだった。


 しかしアリザインは何倍も強く言い返そうとした。


「ああ、今だってそうさ! 俺は欲望で汚れた卑怯な男さ! だけどシギア達が必死で戦うのを目にして俺は誓ったんだ。今日から俺は完全に変わって見せる! 悪にも一族の秘密にも屈しない!」

「貴様の言う事など所詮口先だけよ!」


 メガスはさらに圧を強くした。

 開き直った様な態度がさらに癪にさわった様だ。


「ぐ、ぐわっ!」

 万力で頭を締め付けられるような痛みだった。


「はっはっは! 苦しいだろう! どうだ貴様の小さな脳が攻められる感覚は!」

「ぐうう!」


 必死の形相でアリザインはそれでもメガスを睨み抵抗の姿勢を示した。


 メガスはほんの少しだけ動揺した。

 本人は認めたくなかったが。


 ……こいつ、意外と根性があるな、簡単に屈すると思ったが……3人分念波を送るのはさすがの私でも……、と。


 アリザインはまだ降参しない。

 力の限り耐え叫んだ。


 そして自ら挑発した。

 決してやけではない。


「来い! もっと拘束を強くしてみろ! それともこの程度か! 言ったろう! 俺はもう決して悪には屈しない! そして殺人気道術も汚させない! 人を守る術として俺が受け継ぐからだ!」


「何……?」

 メガスは真意を図りかねた。


 そしてアリザインは念波を送り返した。


「俺の脳波を逆に貴様が受けろ! 念波返しだ! これも殺人気道術の奥義にはあるんだ」


 メガスは意表を突かれて念波を送り返され、信じられないアリザインの精神力に認めたくない畏怖を感じた。


 そして隙が出来、シギアの拘束が緩くなった。


 シギアはついに反撃のチャンスをつかんだ。

 かなり疲弊したがそれを忘れるほどだった。


「拘束が緩くなってきたぞ! レオンはどうだ?」

「俺もだ! アリザインのおかげか!」


「だが俺は外せるところまで来てるがペンダントに波動を送られて動けないんだ」


「おーい!」

 そこへ宝児とクリウが来た。

 アレーナが呼びに行ったのだ。


「何でこんな大事な事黙ってたの!」

 クリウは責めた。


 レオンハルトは謝った。

「すまない、君らに危険が及んだ時守り切れるか分からなかったからだ」


「僕たちだってパーティです!」

 宝児は少し怒った。


 シギアは時間がない為話を後回しにした。

「すまない宝児! お前の脳波をペンダントに送ってくれ」

「は、はい!」


 宝児ははっとして即答し、渾身の念をペンダントに送った。

 メガスはまた動揺した。

「あの小僧か⁉ 何て念の強さだ!」


 ペンダントに力が戻る。そしてシギアは遂に自由になった。

「やったぞ! あの魔法使いを倒せば!」


 エイスラーが追い詰めたマルラボをシギアは堕天使の黒き羽で追撃し切り、倒れかけた所をアレーナの魔法も追撃した。

 マルラボは血を流し焦げて倒れた。


 そしてメガスの映像は消えた。

「やったぞ!」

 皆歓喜した。


 アリザインは疲れて倒れてしまった。

 そこにシギアが駆け寄った。

「しっかりするんだ!」

「す、すまない。お前たちを騙していた」


「何言ってるんだ! お前がいなければメガスに皆やられてたさ!」

「お前の勇気に影響を受け教えてもらったからさ。だから俺は変われた。ありがとう」


「これから宜しく頼むな」

 シギアは優しく言った。

 その様子を皆は笑顔で見ていた。


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ