催眠術の正体
シギアは空中からの羽根攻撃であっさり3人を倒した。
少し安堵した。
肩の力が抜けた。
「命までは奪ってない、引き渡そう」
「ぐぬ、おのれ!」
地上で見ていたマルラボは苛立ち地団駄を踏んだ。
そしてシギアに金縛りをかけた。
「ぐっ!」
しかしシギアにはそんなに効いていなかった。
「貴様の金縛り程度すぐに解いてやる」
シギアは体に力を入れた。
しかしその直後その何倍も強い金縛りが彼を襲った。
「ぐあああ」
まるでシギアは鋼鉄の体の大蛇にがんじがらめにされた様なすさまじい圧に襲われた。
「くっくっく」
メガスは頬杖を止め物を握る動作をしている。
シギアはそれに気づいた。
「あいつが金縛りをかけたのか⁉ どう言う事だ。あんたの姿は映像じゃなく本物なのか」
「ふふ、そんな事はない。確かに映像さ」
シギアは強い圧に苦しみながら声を絞った。
「じゃあ、何で金縛りが使えるんだ」
「この映像は勿論物理攻撃も魔法も使う事は出来ない。だが脳から念を送る事だけは出来るんだ。どんなに遠くからでもね。部下に圧をかけたりするためだ」
「ぐ、ぐう!」
金属の鎖で激しく縛られるような圧と高圧電流に同時に襲われているような感覚だった。
「シギア! くそ」
レオンハルトは剣で映像に切りかかったがどうにもならない。
「どうする事も出来ないのか!」
メガスはレオンハルトの行動も見て相変わらずにやりとして穏やかに重い口調で圧をかけた。
「ついでに良い事を教えてあげよう。私は特定の脳波の物しか操れん物でも動かせる能力を持っているんだ。この意味がわかるな」
「何? ぐああ!」
シギアの頭に激痛が走った。
「ふふ、君が身に付けている賢者バククのペンダントに念を送り込む事だって出来るんだ」
「何だと⁉」
メガスは横目をシギアに向けた。
「少しくらい強いからと言って調子に乗りすぎたな。私が少し本気を出せば君などこんなものさ」
「ぐう……」
シギアは必死で外そうとしている、体に無理な力がかかっている。
メガスはマルラボに命令した。
「さあ、私が押さえている間に攻撃しろ」
「はっ!」
シギアは必死に声を絞り出してメガスに聞いた。
「お、お前やあの魔法使いを倒せばアリザインは元に戻せるのか」
「ん?」
「どうなんだ?」
「ふふっ」
そんな事か、下らない、とでも言うような表情をメガスはした。
シギアにはその真意が分からなかった。
「何だ?」
メガスはせめてもの親切で教えてやると言う態度だった。
「アリザインは確かに催眠術にかかっている。ただし私やマルラボを倒せば解けるわけではない」
「何?」
「……」
アリザインは下を向いていた。
メガスはさらに説明した。
「アリザインにかけたのは相手の弱みに強く働きかける特殊な催眠術だ。これは普通の催眠術と違い、術師が術を解いたり死ねば解けるわけではない。そのまま心の傷が悲鳴を上げる様に苦しみ続けるのだ」
「どういう事だ」
「かけられた人間の持つ弱点や悪心がそのまま術で傷つけられたままになり弱まり催眠術にかかったままでないと生きて行けなくなるのだ」
「な、何⁉」
アリザインはレオンハルトに聞いた。
「な、何故あいつはこんな状況で俺の心配なんかしてるんだ、レオンハルト達他の仲間の事ならわかる、でも俺はまだ仲間じゃない、敵みたいなもんだろう」
レオンハルトは苦しみながらも答えた。
これまでのシギアとのやり取りを思い出す様だった。
「あいつはよくわからない良い所があるのさ」
「!」
レオンハルトは説明する。
「あいつは多分催眠術が解ければお前は完全に良い人に戻ると思っているのかもしれない」
アリザインは自分が人つてに聞いた情報や先入観だけでシギアを判断しわかっていた気になった事や自分の弱さに猛省し答えた。
「俺は、良い人じゃない……」
メガスはにやりとした。
「そいつは良い人、悪い人と言うよりただの弱い人間だ。そいつは一族が前に多く殺人を犯した事が明らかになり外を歩けなくなるのが怖くなって我々に従おうとした保身第一の男、そして私が恐ろしくて言いなりになっている弱い人間だ」
「……」
「しかもスパイに仕立てようとしたのにあっさり秘密を知られたどうしようもない無能だな」
アリザインは思った。
激しく葛藤した。
俺は祖父と父から強くなり人を助ける術を学び誰よりも強くなろうとした。
しかし一族が人を大勢殺したのを知ってからはその秘密も自分の本当の強さも考えも隠すようになった、迫害されるのが怖くなったからだ、だがシギアは俺の事を心配してくれている。俺は…
その時波動が起き、マルラボを吹っ飛ばした。
「誰だ⁉」
「え、エイスラー」
「えっ?」
何とエイスラーが顔に手をかけるとそれは変装用道具で作った皮袋で、中から不愛想な顔と似ても似つかない本当の端正な顔が出て来た。
「そうだ、私は素性を隠した王国特殊捜査官エイスラーだ!」




