疑惑解剖
シギアはあっさり負けた。
もちろんこれほどあっさり負けたのは地上に来て初めてである。
呆然自失でいた。
勝ったアリザインは倒れているシギアを立った状態で見下ろし
「ふん、大した事ないな」
と言ってダウンしたシギアを踏み付け、さらに蹴り飛ばした。
「あっ」
皆アリザインの卑劣な行動に驚いた。
さらにアリザインはシギアに
「増長しやがって」
と言い倒れているシギアを蹴っていった。
「俺はレオンハルトと同じで前へならえが出来ない人間が嫌いでね」
「よせ!」
騎士とレオンハルトは止めた。
「ふん」
と言いアリザインは自分を抑え罪の意識もなく去った。
「あいつ……」
レオンハルトは去ったアリザインをにらみ疑惑の目を向けた。
ずっと去った後ろ姿を疑いの目で見ていた。
俺があいつの素性を調べる、と思った。
その夜……
「絶対怪しい」
と言いレオンハルトはアリザインの部屋まで探りにきた。
するとそこにアレーナも来た。申し合わせたわけでなく。
「えっ?」
「私もあの人が怪しいと思って来たの」
「そうか、心強いよ」
レオンハルトは安堵した。
アレーナは聞いた。
「あの人はもしかして偽物とかじゃあ」
「ああ、俺もその線を考えている。もしくは催眠術にかかったか」
「帝国の?」
「うん」
2人はアリザインの部屋のドアにへばりつき耳をそばだてた。
何か聞こえないか、見つからないよう慎重に。
すると突然ドアが開き衝撃波が起き2人は吹き飛ばされた。
角まで吹き飛ばされた2人は体勢を立て直し部屋に入ろうとした。
すると声が聞こえた。
「ふははは!」
暗い部屋には待っていたようにアリザインがいた。
「おそろいでようこそ。俺の秘密を探りに来たってところか」
「アリザイン! 貴様は偽物だろう!」
「ふん違うな、正真正銘本物だ」
「じゃあ操られている?」
「まあ、そうだな。だが単なる催眠じゃない。取引をしたんだ。俺は勿論操られるのは嫌だった。しかし俺と父親や一族の秘密を隠してくれると言ったんだ」
「なんの事だ」
「これ以上は教えん」
「操られているんだな。じゃあ一緒に来い!」
「ふん!」
アリザインは手を前に出した。
「うわっ!」
レオンハルトは手をほとんど触れず投げられた。
「レオン!」
「こ、これはさっきシギアを投げ飛ばした技? 操られてから使える様になったのか?」
戸惑うレオンハルトに対しアリザインは冷笑した。
「違う、元から使えたんだ。隠していたがな」
「お前はそういえば柔道の技が得意じゃなかった。でも俺はわざと負けているように見えた。そうだろう?」
アリザインは平然と宣言した。
「鋭いな。俺はいずれヘリウムの王の座に就く」
「何?」
アリザインは脅迫した。
「良いか、1回だけ逃がしてやる。でなければここで殺す」
「く、わかった」
レオンハルトとアレーナはひいた。
よく分からないがあいつには全く歯が立たない、ここでやられるわけには……と思った。
レオンハルトは思った。
しかしその割に命は取らず無傷で返したな。
まあ何かあると問題が大きくなるからか。
翌日レオンハルトはアリザインの履歴書を見た。
「あいつの履歴書? 殺人気道術? あいつの一族は殺人気道術を使うのか! でもあいつは騎士団でそんなそぶりを見せなかった、何故だ、帝国に操られているのか?」




