新人訓練2日目終わる
彼女は目も口調もこれまでになく強かった。
しかし怒鳴っているわけではない。
品のない大声ではない。
また「刺すような攻撃的視線」ではなく「情熱や覚悟を感じさせるまなざし」であり、まさに温厚なミラんの本気を見せる目だった。
目が強いと言っても敵意や憎しみで睨みつける雰囲気ではない。
決意と自分のやる気を見せたい。そしてそこには高名な戦士の娘として育った誇りがあった。
それに対してシギアは睨むのでなく彼女の目をじっと見た。
5秒、10秒。
シギアは目をそらさない彼女に対し、相手に敵意をぶつけてるのではなくあどけなさのある顔と目なのに、奥にすごく決意の強さと吸い込まれるような光を感じる、と感じた。
レオンハルト達はじっと様子を見ていた。
クリウは少しあたふたしていた。
シギアはじっと何十秒かミランディの目を見続けていた。
そして言った。
「わかった、やろう」
しかし騎士たちは言った。
「シギア、言っておくが彼女の査定は隊長、副隊長を始めとした皆で決めている。お前の意見も少しは参考にするが決めていい立場じゃないんだぞ」
「はい……」
「す、すみません、私のわがままです」
騎士たちは言った。
「シギア、あんまりきつい事を言って波紋を生むならお前には試合今後させんぞ」
そして臨時で2人は戦う事になった。
レオンハルトが試合した時と同じようにゆっくり横の端から中央に向かって行った。
シギアは表情がどこか疲れている様だった。
周りからは何故なのかわかりにくい。めんどくさいと言う感じではなかった。
「はーっ!」と言うけだるさを表すため息ではなく小声で小さなため息をついた。
心なしか厳しい事を言った事を反省している様に見えた。
一方ミランディはレオンハルトと戦った時と違いぎんとした目でシギアを見ながら横移動した。
それはシギアがきつい事を言った事への憎しみが少し感じられさらに今度こそ認めさせて見せると言う決意と負けない心、そして気高さがあった。
そこにはどこかたとえ負けたとしても勇者見習いとして育てられた意地とプライドを見せたいと言うのを感じた。
「殺気立ってますねミランディさん」
宝児は言った。
そして目を離さないままミランディはシギアと向かい合った。さすがにシギアも少し戸惑った。
すごい眼力だな彼女……とシギアは感じた。
そして手合いは始まった。
2人のハイスピードな竹刀はぶつかった。
ミランディはレオンハルトと戦った時と比べ最初からさらに激しい闘志を出した。
しかし口はあまり大きく開けないためそれに対する上品さがあった。
彼女は最初からある程度飛ばした。様子見をしないわけではないが、レオンハルトとの手合いに比べて仕掛けが速かった。
膝も足首も軽やかに動いた。
熟練した剣筋であった。確かに物覚え付いた頃から手取り足取り教えてもらったのだろうと言う雰囲気が出ている。
その剣筋に少しだけシギアは何かを感じた。
「良い太刀筋だな」
「……」
シギアの言う事にミランディは反応しなかった。
真剣に竹刀と相手だけを見た。
しかし必死になるだけで冷静さを忘れてはいけない、と自分に言い聞かせた。
そして2人の戦いは良いペース、流れる様に続いた。
そして徐々に剣を強くしシギアの防御を1歩も2歩も踏み込んだ攻めで壊しにかかる。
シギアに余裕があるのかはある程度剣に心得がないと分からないだろう。
シギアはまた少しミランディを認める事を言った。
「驚いたな、昨日の今日で俺に挑んでくるとは、優しそうな顔をして相当な負けん気だ」
「私自身の意地もありますが、私を育ててくれた両親の顔もあるからです!」
「そうか……まあ君の両親を悪く言うつもりはないが」
宝児とレオンハルトは離した。
「何か話しながら試合してますよ」
「ちょっと聞き取れんな」
なるほど、必死に立ち向かう顔だ、なかなかだな、とシギアは思った。
一方、手加減何てさせない!と言う意地がミラムロにはあった。
シギアはまた言った。
今度は少し優しく微笑みながらだった。
「いじめてると思っても俺はオーケーさ」
「思ってません」
「そうか」
しかし、気迫を出しすぎ先にミランディは疲れ始めた。
「くっ」
「……」
しかし飛ばせば息が切れる事など分かっていた。
何としても自分の戦う、パーティに入りたい気持ちをぶつけ理解してもらいたかった。
シギアはどこかその点を半分見透かす様だった。
そして戦いはさらに白熱した。
シギアは防御する事が多くなり一見するとミラムロが押している。
しかしシギアは汗をあまりかいていない。
ミランディは思った。
余裕があるのかないのか分からない様にふるまうのもこの人の力のなせる業!
そしてシギアは防御しながら言った。
「腰がひけてるぞ」
「えっ⁉」
ミランディはこの一言で腰に注意が言った。
そして少し攻めが大味になり、シギアに軽くかわされた。しかしミランディは諦めなかった。
「まだっ!」
さらにミランディは汗をかきながら飛ばして来た。
まだシギアを負かすほどではなかったがその伸び具合に少し感心していた。
シギアは思った。
成程……でも彼女時々少し目をそらす癖もある。
ミランディは力を振り絞った。攻撃ばかり考えて防御をおろそかにせず両方を120で行った。
「ほう、やるじゃないか!」
「はっはっ!」
シギアは段々と優しく励ますように言った。
ミランディはシギアの言葉に返さなかった。
それだけで精一杯だった。
「はっはっ!」
レオンハルトは言った。
「かなりスタミナあるな彼女」
剣に心得がある人なら互角の様でミラムロが焦っている感じなのはわかる。
「それまで!」
騎士は言った。
「もう良いだろう。みんなミランディ君の事は認めてるんだ。疲れすぎは良くない」
「はい」
2人は剣をひいた。
クリウと宝児は駆け寄った。
「よかったわ!」
「すごかったですよ」
「ありがとうございます」
ミラムロは丁寧におじぎをした。
ミランディは慎重にシギアの方を向いた。
「シギアさん」
「ああ、だめ、お話にならないな」
シギアは若干軽い口調で言った。
「なっ!」
皆これに震撼した。
さらにシギアは言った。
「100点満点の5点が10点に上がった位だな」
クリウと宝児はかばった。
「ちょっとなんて事言うのよ!」
「また新人いじめですか!」
「新人いじめじゃないよたしなめただけだ」
レオンハルトも口を挟んだ。
「ちょっと前まではお前がたしなめられる側だっただろ」
アレーナも来て褒めた。
「よかったわよ宜しく」
ミランディは1人去ろうとした。
それをクリウと宝児が引き留めた。
「気にしないで! あの人性格悪いけど根も悪い人なのよ」
「新人が入ると必ずいじめるんですよ」
くそ、と聞こえたシギアは舌打ちした。
そして一転、ミランディはシギアの方を向き強いまなざしで言った。
「シギアさん! 私、必ずあなたに認められて見せます!」
後ろ向きで手を挙げ振ったシギアががんばれと小声で言ったようにミランディには見えた。
「頑張ってください、みんな応援してます」
「宝児さん……」
ミランディは微笑んだ。
騎士はシギアに聞こえる様に言った。
「誰かさんのせいで初日から大騒ぎだな。明日男性1人来るけど揉めないでくれよ」




