表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天から落ちた最強だが性格が悪い最低ランクの勇者が地上で独立部隊パーティーの一員に任命され帝国と戦う  作者: 元々島の人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

65/225

手合いの後に

 レオンハルトとミランディは宮廷内で試合する事になった。 

 縦20メートル、横13メートルはある、宮廷内特別武闘場で2人が中央で向き合う。


 他のメンバーは少し離れて見守る恰好だ。

 外で行った時と違うのは、宮廷内の家臣もミランディがどんな人か知りたいからだった。


「では2人とも中央に」

 審判の兵士に言われレオンハルトとミランディは中央へと歩いて行く。

    

 皆は外側で少し緊張の面持ちで見守った。 

 その歩き方にお互い特徴が出ていた。


 レオンハルトは言うまでもなく生真面目だが数々の経験のおかげで少し心に余裕と寛容さが生まれた。


 訓練を気を抜いてすると言うわけでない。

 しかし実戦程緊迫した空気でやれば新人は特に戸惑う。

 その為歩き方に少しの余裕が出ていた。


 ミランディは対してぴんとし毅然とした感じで中央を目指した。

 新人だからと思われない様にしているのか、レオンハルトの事も勿論見ている。


 しかしよりどこか遠くをまっすぐに見て見えないものや相手に向かっているような視線のやり方だ。


 その見えないもの、とはこれからの未来や出会うであろう敵などレオンハルトのみならず様々な敵や困難に向け視線をやっているような雰囲気だった。


 気高さと覚悟、そして内に秘めた誇りが歩き方で伝わった。

 

 新人として緊張を隠しきっと見据え背筋を伸ばし堂々としていようとするのが感じられた。

どこか引きつる点も見られたが。


 レオンハルトはその堂々とした態度に、さすがは高名な親の娘だ、勇者見習いだ、と感心した。


 しかしよく見るとミランディは歩行の際足が少し硬く、足の踏み出し方にがくんがくんと体重がかかっている様だった。


 毅然としていてもやはり緊張しているんだな、とレオンハルトは観察して思った。


 そして2人は向かい合った。ミランディは厳しさと不安が混じったようにレオンハルトを見た。

歩いている時でなくレオンハルトに神経を集中した。


 2人が向かい合うと、先程の大人しさとは違う戦士的意志の強さと気高さを目とアゴ、口元に感じた。

また直立時も構えも隙が無くなっていた。


 しかしシギアは何かを思う様にミランディを見ていた。

 どこかぎこちないな、とレオンハルトは思っていた。

そして勝負は始まった。


 2人は最初からある程度勢いを付けて行こうとした。


 それはレオンハルトが恐らく新人のミランディは最初から緊張して勢いよく攻めてくるだろうと予測していた為もあった。


 その為2人はペースがかみ合い、剣が同じ勢いでぶつかり火花を散らした。

 ミランディはなかなかの太刀筋でまだ出だしとは言えレオンハルトに後れを取らなかった。


 なかなかだな、とレオンハルトは思った。

 ミランディには初めて自分の事をアピールし認められる為の場だった。

 冷静を装っていても必死に認められる為緊張の中自分の力を見せようとするのだった。


「すごい! レオンハルトさんといい勝負してる」

 宝児はそう言ったがシギアは腕を組み黙って厳しい目で見ていた。

「うーん」


 宝児はシギアの態度に気づいた。

「どうしたんですか」

「少しレオンが押してる」

「そうですか、僕は素人だから分からなかったなあ」


 シギアはじっと査定するように厳しい目で見続けた。

 レオンハルトの攻めに少し押されたミランディはこわごわ防御している様に見えた。


 そしてレオンハルトが威圧するように目を武器にし睨むと、一瞬怯えながらきっと睨み返した。


 レオンハルトはその毅然とした眼光に驚いた。レオンハルトは思った。

 

 これが勇者として育てられた人の貫禄の目つきなのか。驚いた。確かに目の奥に力を感じる。時折見せる少し怯え気味な目と差があるな、しかしこういう相手は底力がある。


 レオンハルトは少し踏み込みを深くしたがこれは少し甘かった。

ミランディはまた睨み剣をどんどんと踏み込ませて出していった。


 レオンハルトは自分の考えが聞こえて伝わっているようだと感じた。


 だからこそミランディがその自分らしさをもっと出そうとしている様にも見えた。


 しかしミランディは汗をかき始めた。

 シギアは腕を組みながら言う。

「ああ、彼女先に汗かき始めた。ここからだなあ」


 ミランディは必死に汗を隠し必死になって動いた。運動部の新人が必死でアピールするようだった。


 レオンハルトは感じた。

血筋が良い事へのプライドや自己顕示欲はあまりないようだな。とても必死に動いている。ただその一方で気高い誇りを感じる。


 ミランディはレオンハルトより先に汗だくになっていた。

 レオンハルトは見ていた。

 冷静で良く見ているようで目に少し揺れがある。

 疲れか。


 そして時間が来た。騎士が言う。

「はい時間切れ! お疲れ!」


 宝児が駆け寄った。

「何かすごいですね!」

「あ、ありがとうございます」

 ミランディは汗を流しながら宝児の褒めを受け取った。


 兵士は言った。

「次はアレーナと魔法勝負を行う」


 宝児は言った。

「魔法も使えるんですかすごいです」


 シギアは何故かミランディに話しかけず腕を組んでいた。


 他の騎士が言った。

「あした男性1人来るんですよね」

「あいつは異動してくる騎士だから勝手知ってるけど」


 そしてアレーナとミランディは向かい合った。

「はじめ」

 様子見の状態から機を見てアレーナは手を組んで詠唱を始めた。


 そして弱めの雷をけん制用に出した。これをミランディは少し怯えながらかわした。

「ほう、なかなかの動きだな」


 ドレッドは感心した。普通の人間からして高速の呪文をかわすのはかなりの反射神経と素早さを要する。


 ミランディはかわした後姿勢を直した。

 アレーナは様子を見ていた。


 強い意志を感じる。血は争えんな、とレオンハルトは感じた。


 そしてミランディは手を組み詠唱を始めた。先程からの疲れもあり汗もかいている。指の組み方も不器用だった。


 しかし彼女はそんな中必死に目をつぶり詠唱していた。叫ぶ口の動きもついて行こうとする姿勢が見える。


「積極性をアピールするべき箇所だ」

 レオンハルトは言った。


 ミランディは叫んだ。

火球ファイア


 手から低いレベルの直径20センチ程の炎魔法がアレーナ目掛けて跳ぶ。アレーナは見極め即座に稲妻で迎撃し相殺した。


 ミランディは防がれた事に戸惑いながらも再び必死に詠唱した。汗が流れ落ちる。神に何かを懇願する様に詠唱した。


水球ウォーター!」

 今度は火に対し水と言う事なのか、低いレベルの水魔法が発せられた。しかしこれもアレーナは稲妻で迎撃した。


 そしてアレーナは相殺後に攻撃用に稲妻を出した。これを再度火球で迎撃した。


 そんなやり取りが2、3度続き時間が来た。


「はい、それまで」

 再度宝児が駆け寄った。

「すごいじゃないですか!」


 しかし彼は渋い顔でシギアが見ているのに気づいた。

「シギアさんどうしたんですか」


 シギアはミランディにこつこつと歩み寄った。

 ミラムロはさすがに不安な顔を出した。

 疲れている時にさらに緊張が高まる


 シギアは厳粛に言った

「見たよ」

「はい」

 ミランディはこわごわ答えた。


 さらに質問した。

「君は剣と魔法どっちが得意だ」

「あの同じ位です」


「そうか、両方同程度か。どちらかを伸ばそうと思わなかったのか」

「あ、子供の頃から同じくらいで両方同じ位伸ばしました」


 そして顎に手をやりわずかに考える間を挟んで言った。決して投げやりではなく。


「そうか、ちょっと厳しいが難しいな」

「えっ」

 この一言はミランディだけでなく皆に波紋とどよめきを生んだ。


 しかしシギアは嫌味ではなく、きつい顔で目を細めながらミランディの今後を案ずるように、決して見下す様でない言い方をした。


「やっぱり生き残るには秀でた部分が無いと駄目だ」

「器用貧乏」

「そうだな」


 ミランディはがっくり肩を落としていった。

「ああ、気にしないで」

「そうです!」

 クリウと宝児が謝った。


 しかし次の日の練習時、ミランディはシギアに歩み寄って行った。


「シギアさん、私と手合いして下さい」

 それは目つきも言い方もこれまでで最高の力強い目つきを伴っていた。声も誇りが感じられた。




評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ