冷静なシギア
「ドレッド、アレーナ!」
クリウは2人に駆け寄った。
いやクリウだけでない。
シギア、レオンハルト、宝児も駆け寄り薬や包帯で傷を治そうとした。
「大丈夫か」
シギアはしゃがみこみ今までになく心配する表情を見せた。
マドンはにやりとしてからかった。
「ほう、これはこれは。もしかしてそなたが先日キングへイルに負けそうになったが逃がしてもらった弱小勇者様かな?」
「そうさ」
シギアは全く怒らずかつ冷たく言い放つのでもなく、穏やかににこりとしながら言った。
実はこのシギアの反応は少しマドンに取って意外だったがからかいは続く。
「ほう、否定しないのだな。では何をしに来たのかな」
「キングへイル殿に会いに来ましたがあいにくご不在の様ですね」
またシギアは穏やかににこりと言った。
あまり攻撃心はなくかといって冷徹でもない。
マドンは余裕綽々でからかう。
「はい、ご不在です。でも相手が欲しいなら私はキングへイルと同等かそれ以上ですが代わりに相手をしますかな」
シギアは同様の口調と態度でまた返した。
「それは光栄ですね。キングへイルさんには負けた後努力して今日勝つために来たんで都合が良いです。勝つために努力してきたのを見せたかったんで」
マドンはシギアの言う事が少し引っかかり真面目な口調に変えた。 ただからかいながらでもあるが。
「何? 努力をしてきただと? あれからわずか数日しか経ってないだろう。数日で勝つだと? 頭がおかしくなったか」
「もともとおかしいけど努力したのは本当さ。あんたが相手してくれるのか」
シギアは平穏状態を変えない。
「何? ふん。まあいい、さっさと終わらせてやる」
シギアは全く怒っていない表情でこくりと頷いた。
マドンは聞いた。
「しかし貴様は仲間がやられて怒っていないのか? 随分穏やかな表情だが。隠しているだけか?」
「俺は怒っていない」
「何」
一貫してシギアは穏やかな表情と口調だった。
「何故だ? 仲間が重傷を負ってもか?」
「皆、自分の意志で戦って倒れ傷ついたんだ。あんたが悪いとかじゃなく、あんた達は確かに街を占領して町民を苦しめたけど」
マドンは思った。
こいつ、確かに口の悪い奴だと報告を聞いていたが、もっと色々言ってくると思ったが、挑発には思ったほど乗ってこない、と感じていた。
そしてシギアは立ち上がり戦う姿勢を見せた。
マドンは言う
「やるか」
緊張感と言う隙間風の様な雰囲気が場を覆う。
そして両者は一騎討ちで戦う為剣を抜いた。
隙間風が流れる雰囲気の中、両者は向かい合った。
しかしシギアは一貫してあまり怒りを前に出さないため何とも言えない不思議な雰囲気が流れた。
マドンも確かにシギアが感情的でない事に疑心を抱いた。
そして1人は沈黙の時間の後ついに正面からぶつかり相まみえた。
と思った次の瞬間であった。
シギアはマドンの鎧は水平切りで切ったなり懐をくぐり後ろに回り込んでいた。
「なっ?」
マドンは唖然とした。
矢の様な、いや閃光とでも言う様な見えない、かつ素早い、速すぎる動作だった。
しかも空気を切り裂くような鋭利さであった。
マドンは何が起きたのか困惑している。
「さ、さすがに鎧は傷がついただけで切れてないとはいえ、私が動きを捕らえ損ねただと?」
シギアは一貫して落ち着き怒りの無い顔をしていた。
しかしマドンは焦った。
「馬鹿な、こんなはずはない!」
マドンは仕切り直し、再度2人は向き合った。
「行くぞ!」
2人は剣をぶつけ合った。
しかしシギアは最初の攻撃をうまくいなすとその後の少し焦ったマドンの剣を軽く何発もかわして見せた。
マドンは焦った。
「おのれ! 何故だ! 何故当たらん!」
マドンは思った。
何故だ、こんなに動きが速いなどと言う情報は聞いていないぞ。本当に腕を上げて来たのか
マドンははっとした。
「わかったぞ! 貴様はあの娘と同じように高速移動の魔法をかけているんだろう」
「かけてないさ」
宝児は驚いた。
「す、すごい、シギアさんはあんなに動きが変わるなんて、やはり天界の住人だ」
レオンハルトも褒めた。
「ああ、あいつはまるで吸収するように成長する。いや進化と言う感じだ」
シギアはつぶやいた。が目はそんなに怒っていない。どこかわびしさも漂っていた。
「ドレッドとアレーナの無念を晴らさないと」
「でも、あまりシギアさんは怒ってないみたいじゃないですか」
宝児の言う通りであった。
シギアは爆発する程怒っていなかった。確かにマドンたちは町を荒らした。
しかしドレッドとアレーナに対して卑劣な手段は使わず正々堂々と戦って倒したため、卑怯な敵とは認識していないのだった。ここで下手に熱くなると負けてしまうと言う念もあった。
そしてここに来るまで目にしてきたヘリウム兵たちがいや帝国兵も傷つき倒れるのも生々しく見て戦いの虚しさを悟った様だ。
シギアは抑えながら少しトーンを上げた。
「よし、奥義だ!」
それに対し宝児は反応が大きかった。
「シギアさん、新しい奥義を⁉」
シギアは構えると剣から光が出た。
「ぬう? あの剣は確かデータ通りだが何か違うのか?」
シギアは手を剣に添えながら光を十分に溜めた。皆ごくりと唾を飲む。
「はあああ!」
シギアは突進した。
いや突進と言うよりまるで高速で滑る様な動きだった。
足を派手に動かしていない。前傾姿勢で高速で前方に滑るような動きだった。
そしてシギアは光った剣で1閃した。しかしこれはマドンには多少鎧に傷はついたが効いていなかった。
「これが貴様の奥義か! データ通りだ! 大した威力じゃない!」
シギアは言った。
「ああ、いつもの奥義と同じだ」
レオンハルトは気づいた。何も聞かされていない様だった。
「いや、シギアのモーションが違う!」
ドレッドの無念を晴らす、シギアはそう思っていた。
レオンハルトは気づいた。
「あのモーションはドレッドの技?」
「俺の技かよ?」
シギアは叫ぶ。
「ドレッド! 技を借りるぞ! 複合技だ!」
「そんなあいついつ覚えたんだ? まさか!」
それは先日の訓練の中のやり取りだった。
(42部分の回想部分に入る)
ドレッドはジャンプしすくい上げる様に切る技の練習をしていた。
そこへシギアが来た。
「すごい技だな、俺もちょっと真似させてもらっていいか」
シギアはすくってジャンプする動きを見せたが勿論すぐ上手くは行かない
「うーん、出来ない」
シギアは頭を掻いた。
「はは、さすがに勇者のお前でもすぐこれは真似出来ないだろう」
「うーん、もう1回」
しかしシギアは上手く出来なかった。
回想は終わった。
ドレッドは驚嘆した。
「あ、あれだけで!」
シギアは叫んだ。マドンと向き合って初めてかもしれない。
「俺の技とドレッドの技の複合技だ!」
シギアは横に光の剣で切った後、即座にしゃがみこんでドレッドのしゃくりあげて切る奥義のモーションに入った。
そしてしゃがんだ体勢から起き上がり飛び上がるすさまじい跳躍と瞬発力でマドンの懐に光の剣のしゃくりあげ切りをお見舞いした。
レオンハルトは気づいた。
「あれは通常の奥義とドレッドの奥義の連続複合技」




