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天から落ちた最強だが性格が悪い最低ランクの勇者が地上で独立部隊パーティーの一員に任命され帝国と戦う  作者: 元々島の人


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クリウのポリシー

「行こう」


 シギアはばれてしまってはいるものの、辛さを抑え元気に皆を先導しようとした。


 多少、無理があった。それが透けて見える。

 実は彼は怪我がばれてしまった事がかなり悔しかった。


 自分の弱さを隠す演技が十分でなく隙があった事、弱さが見えてしまった事を不覚と感じていた。


 しかしそれは弱さを見せたくないプライドよりも勇者学校で言われた「絶対弱音を吐くな」と言う教訓がかなり彼を支配していたからだった。


 しかしばれてしまったのに彼の中では余計に怪我の痛みを隠し元気に振る舞おうと言う気持ちが強くなってしまっていた。


「じゃあ、大丈夫だから、行こう」

「ちょっと待って」


 クリウが強い調子で呼び止めた。

 いつもより強い言い方だ。


 シギアはどきっとし、自分はまた他の人にはっきり見える様に痛さを表情などに出してしまったのかと思った。


 またいつもよりクリウの言い方が強い事もどきりとした理由である。


「駄目よ、そんな無理しちゃ」


 そこには心配する雰囲気と自分を偽ろうとするシギアへの戒めの両方の響きが言い方にあった。

ただ優しさだけではなかった。


「いや、大丈夫さ」


 シギアは振り払うように割と楽そうに深刻にならない言い方にした。


 しかしクリウには通用しなかった。


「大丈夫じゃないわ、私はあばらを怪我した事ないけど、前にあばらにひびが入った人の手当した時すごく痛そうだったから肌で感じてるわ」


 申し訳なさと弱みを見せたくない両方の気持ちがこもった口調で答えた。


「俺は、勇者だから、そんなすぐ弱音吐けないんだ。鍛えてるから」


「ほら、やっぱり無理してる」

 また厳しさと優しさの両面がある言い方をした。


「あっ……」

 また気まずくなった。


 しかしシギアは気を取り直して言った。

「まあ、大丈夫だから、行こう」


「駄目! 絶対行かせない!」

これまでで1番強い調子だった。


 しかし誤解も招いた。宝児とドレッドが反応した。

 皆もしやクリウがシギアの事を好きでは?と思わせてしまった。 

「え?」

「おっ、何だ何だ」


 シギアはクリウの強い止め方に予感を感じどぎまぎして言った。

「あんた、まさか俺の事……」


 しかしクリウの返しは至ってクールであった。


「はい、違います。そういう意味で言ったんじゃないわ。勘違いしないで下さいね。私は目の前に怪我した人がいるのを放っておけないだけ。好きな人も嫌いな人も関係ない。例え悪人でも」


「ええ、悪人でも⁉」

「ええ、私帝国兵の人手当てした事あるから」


「ええ」

 これはかなり皆をぎょっとさせた。


「そんなの初耳だ」

 レオンハルトは言った。


「野戦病院に紛れてた人がいた。皆捕虜にしろと言ってたけど私はそれでも最低限の治療だけでもしなきゃいけないと思った。それは昔から変わらないわ」


「貫いているポリシーなのか」

 レオンハルトは聞いた。


「ええ、私の母は医者。そして昔から学校実習とかで結構重い怪我の人目の当たりにしたから。それに痛い痛いってうめいてる人もだけど、貴方みたいに我慢してる人のサインも見落としちゃいけない、見落とすのは自分が未熟だからだと思ってたわ。うめく人も隠す人も痛さは同じ。そして決して怪我人には無茶をさせたらいけない」


「いやまあ、勇者は人前で弱音はいちゃいけないと言われてたから」

 シギアは申し訳なさそうに申し開くように言った。


 宝児は横から言った。

「でも言わないと逆に後から皆の心配大きくなりませんか」


 レオンハルトも言った。

「俺もいつも厳しい事言うけどいくら何でも我慢しすぎだ。そんな時は周りに甘える時さ。後でもっと心配が大きくなる」


「うん」

 シギアはバツが悪そうに微笑んだ。


「貴方はもっと周りから心配して貰ってる事に鈍感じゃだめだと思う」

 クリウはシギアが皆に心配されているのに気づいてない事を少し悲しんだ。


 シギアは指摘にハッとし流れで過去を話し出した。

「そうだね、俺は意地でAランク勇者になろうとしていた、それは能力だけじゃなく精神が強い事が評価ポイントになるんだ」


 クリウは過去の事は関係なく、かなり強く言った。

 切羽詰まった感じで、医者が無理をしている患者を止めたり怒ったりするようだった。


「とにかく皆が完全じゃなくても最大限回復するまでここから先は進ませないわ」


「わかった」

 シギアはクリウの意を汲み出来るだけ誠実にきっと答えた。

 彼女の迫力に押された。


 レオンハルトは言った。

「ここの敵は倒したし火をともして小休止しよう」


 一行は松明をともし休んだ。

 シギアは自分の心の内側を話した。


「俺が打ち明けなかったのは弱みを見せたくなかったからかそれとも勇者学校に言われたからなのか。意地、責任感、教訓を守る事色々な理由を自分が堅物になっていて分からなくなっていたのか自分の心の本音を解析出来てないからだろう」


「本音を言える相手がいないって事か」

 ドレッドは思わず言った。


「ド、ドレッドさん、言い過ぎ」

 宝児はさすがに止めた。


「す、すまない」


 シギアは怒らず微笑んだ。

「いや、良いんだ、堕天使学校出で差別されて皆に意地を張る様になったんだろう」


 クリウはシギアのあばらを魔法で治療した。

「回復よ」


 シギアの傷口に白い光が当たる。

「すまない」


「骨折は完全には治らないけど出来る限りやるわ。シギアもアレーナも、皆、戦闘で前に立たないでね」

先程までより少し優しい心配のこもった。口調だった。


 シギアは言った。

「うん、いつぶりだろう、戦闘で自分が後ろに下がって人に任せたのは」


 宝児とドレッドが言った。

「何か肩が張ってそうな考えですよね」

「自分を追い込みきつくしすぎだろう」



 シギアは過去を反省し話した。

「早く勇者になりたいと、早く優秀に。勿論人を守る事を再前提にだが、それが強すぎて人に弱さを見せる事が決定的に不足する」


「私も今後シギアのサインを見落とさない様にするわ」


 そして一行は出発した。


 先の2本目の道への曲がり角の先を階段から見てしばらく東に進むと3本目の道への左折入り口が見えた。皆はゆっくり慎重に進んだ。


 すると下り階段があった。


 そして階段からでると出るなり20メートル程先に奥行き2メートル、長さ4メートルほどの祭壇型の台がありその上に宝箱があった。


「あれすごい宝っぽいです」

「でも、怪しすぎる」


 グライは言った。

「私が見ましょうか」


「1人だと危険だ。俺も行こう」

 とレオンハルトは言い、2人は宝箱に近づき手を触れようとした。


 すると体が動かなくなり掴まれた感覚になりレオンハルトは首を絞められた感覚になった。

「何?」

「誰だ?」


「はあ!」

 レオンハルトが必死に振り払うとそこに半透明で文字通り幽霊の様な生命体が現れた。


 宝児は怯えた。

「お化け」


「宝の番人か!」


「よし、行こう」

 シギアは後ろに控え、レオンハルトとドレッドは構え切りかかった。


 しかし切りつけたが反応がない。


「何だこいつ!」

「ガスみたいで手ごたえがない」


 アレーナは魔法辞典を開いた。

「ゴーストは通常物理攻撃でダメージを与えられるはずなのに。」


 しかもドレッドは腕で殴られ反撃を受けた。


「何だこいつの攻撃! まるで手が当たる瞬間だけ熱いものを当てられたみたいだ!」


「はっ!」

 アレーナは思い出した。


「確か、別種類のゴーストは属性が『呪』であり、物理の様で呪いの力で打撃の様なダメージを与えると」


 クリウも答えた。


「あっそれ聞いた事がある。たしか呪属性には聖属性が大きなダメージを与えられると! なら私の聖魔法で!」


 シギアは心配した。


「あれ使うのか、でも君はさっき回復魔法を大分使ったろ」

「背に腹は代えられないわ」


 ゴーストは暴れていた。

 レオンハルトやグライ、ドレッドは大ダメージを受けた。




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