表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
天から落ちた最強だが性格が悪い最低ランクの勇者が地上で独立部隊パーティーの一員に任命され帝国と戦う  作者: 元々島の人


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

43/225

一応の終結

 キングへイルは馬の迎えが来て去る事になった。

 シギアはもうあまり力が残っていない。


 彼は内心腕を押さえ悔しがった。

 あいつの呼び出し連絡がなかったら負けていた、皆やられていた。守りきれないだろう、と思っていた。

 

 キングヘイルは馬にまたがり横目でシギアに言った。

「小僧、貴様との決着はまた改めてにする。待っていろ」

「くっ」


 決してキングヘイルはバカにした口調や表情ではなかった。

 シギアを称え再戦したいとまで言ったのだ。


 しかしそうであっても悔しさに体がむずがゆくなった。

 地団駄を踏みたかった。


 それは天界の勇者としてのプライドが人間界では誰にも負けないと言う意識につながっているのかもしれない。


 プライドは川に落ちた時捨てたつもりだったが捨てたくない気持ちもあったと気づかされた。


 シギアは腕を押さえ立っているのもやっとだった。

 昔の断食修行を思い出していた。

「ほとんど、いや完全に俺の負けだこれ」


 ヘリウムに来て最大の屈辱と無力感だった。

 昔の修行の事を思い出したのもそのためだ。


 それだけではない。

 急降下攻撃の際躊躇した恐怖心の為も負けた原因だったからだ。


 俺は弱い、臆病だ、と自分を責めた。


 一方クリウは、アレーナを入れ2人分入れるバリアでブルビ2世の剣を防いでいた。

 しかしブルビ2世はにやりとした。


「そのバリアを張っていればもう1人のお嬢さんは攻撃魔法をバリアの中からでは出せないのでは?」

「ぐっ……」


 クリウの表情を見て感じ取った。

「図星の様ですね、それに!」

「?」


 ブルビ2世は剣をおもむろにバリアの何か所かに突き立てた。


「この白魔法は確か聞いた事があります。全面が均等に同じ防御力を持っているわけではない、人間の体と同じ様に弱い点や急所があるはずと」

「……」


「例えば脇の下とか!」

 と言い剣を突き立てた。


「ぐっ!」

 ブルビ2世はバリアがそこだけ弱く薄く感じた。


「あるいは股間、足の下などは!」

 おもむろにブルビ2世がバリアを突き立てるとどうもそこは読み通り防御が浅く感じた。


 ブルビ2世は読みが正しかったとにやりとした。

「やはりそうですね。防御の厚さにばらつきがあると見ます」

「くっ!」


「ここを何発か突いて行けば、切り崩せる!」

 ブルビ2世は確信した。


 クリウは瞬間的にバリアを放棄し、直後アレーナが抱いたまま後方に高速ジャンプのスキルを使い5メートル以上の距離を取った。


 アレーナは構え直して弱めの魔法をけん制に2発、1発目はブルビ2世の胴体を狙い、もう1発は剣を破壊しようと狙った。


 剣を狙った雷は避雷針の様防がれたが、胴体への攻撃はヒットした。


 しかしブルビ2世はひるんでいない。

「やりますね。まだ弱めの魔法だったとはいえ、しかし」


 直後、返す刀でブルビ2世はナイフを2刀投げて来た。


「ぐっ‼」

 アレーナの肩と足に1本ずつ刺さった。

「ふふ、私はナイフも使えるのですよ」


 クリウは青くなった。

「は、早く回復させないと!」


 しかしアレーナは言った。

「だ、駄目よ、貴方が逃げられない」


 ブルビ2世は言った。

「その通りです。貴方も逃げられませんよ?」


 しかし、後方から声が聞こえた。

「待てっ!」

「ぬっ!」


 シギアは、まだ立ち上がって来た。


 ブルビ2世は苛立った。

「くっ、あれだけやられてまだ! 受けなさい!」

 とナイフが投げられたがドレッドがかばい腕に刺さった。


「ドレッド!」

「くっ、気にするな、俺の腕は鋼鉄だ」


「くうう、キングへイル様にあれだけやられたのに皆忌々しい! 1人ずつとどめを刺しましょう」

「ドレッドは手当てが必要だ。俺が相手だ」


「はじめから貴方が目的です。貴方を倒せば武勲を得られる」

 2人は一騎討ちする事になった。


 2人は剣を手にお互い睨み合った。

 皆が見守る。


 そして静寂の後、ほぼ同時に相手に向かって走りこんだ。


 まず、ブルビ2世は上段への切り攻撃を何発か見せた。

「うおお⁉」

 シギアは面食らった。間一髪避けたが髪の毛を数本切られた。


「はっはっ!」


 消耗したシギアを嘲笑う様にブルビ2世は速攻勝負をかけている様だった。


 シギアは出だしは防戦的になった。


「ふふ」


 さらにブルビ2世の高速の上方切りを中心とした攻撃が続くとシギアは目が慣れて来た。

 

 見切れそうだ!と感じていた。


 しかし、ブルビ2世は今度はけん制の数発をはじめとして中断への突き連撃を中心に攻め方を変えて来た。


 これにシギアはひるんだ。

「ぐっ」


 レオンハルトはドレッドに言った。

「やはりあの剣の形は中段位からの突きの連撃が最もスピードが出る。シギアがそれに気づく前に攻め方を変えて来たな」


 シギアは思った。

 この攻め方にはこの剣の方が不利だ。何とか有利な展開にしないと、と


「ふふ。さらに!」

 今度はブルビ2世は下からすくう攻撃に出た。

「このポジションと攻め方もこちら有利です」


「くっ!」

 シギアは攻め込まれていた。体力も大分消耗した。


「くそ、よし!」

 シギアは防御主体を止め、相手の剣より少し上に返す攻めに出た。


「ぬっ⁉」

 その後何発もシギアは相手のレイピアより上を押さえようとする攻めに出た。

「これはどういう……意識的にやっているのか?」


 レオンハルトは言った。

「あれはもしかして精神的優位に立とうとする攻め方か? 俺も途中まで習ったが」

「くっ、奴の方が腕が上に見えてくる、何故だ」


 ドレッドは聞いた。

「相手の上を意識的にとり精神的優位に立つ?」

「そうだ」

「何故だ?」


「よし」

 シギアの攻めは常に上を取った。

 そして中段や下段の突きや切りも多くなった。


 そして遂に踏み込み剣を払い落とし、ブルビ2世はダウンした。


「くっ!」

 ブルビ2世は半分覚悟したような顔をした。


 シギアは衝撃波でダメージを与え動けなくして言った。

「お城へ連れて行こう」

「えっ殺さないの」


 取り合えず今日の話は休んでからという事になった。

「今日はすごく疲れた」


 レオンハルトは反省していた。

「俺もろくに助けが出来なかった。すまない。キングへイルと言う奴があそこまですごいとは」


 しかしシギアは穏やかな顔で言った。

「俺は悔しいと思ってないよ。あいつが引き上げてくれてよかった。皆を守り切れる自信がもうなかった」


 少しレオンハルトは面食らった。

「お前にしては珍しい事を言うな」


「ああ、まず個人の勝敗より無駄に死なない様にする方が大事だと思ってるよ。良かった皆死ななくて」


 しかしシギアは離れてから拳を握り唇をかみしめた。

「く、悔しい!」


 そこへ宝児が走って来た。

「すみません! 僕何も出来なくてシュミレーションの時も判断ミスばかりでさらにキングへイルとの戦いも僕のせいで迷惑をかけて!」


 シギアは疲れ顔で言った。

「気にするなって、ほらこれでも食ってくれ」

「りんご?」


「じゃあまた明日話し合おう。俺休むから」


「シギアさん」

 リンゴを握りしめシギアの優しさをかみしめた。



 


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ