キングへイルの恐怖
シギアははるか上級から降下し突撃急加速した。
「うおおお!!!」
一方、地上のキングへイルにとってもこの空中からの攻撃をどう受け止めるかまたは避けるかで勝負がどうなるか、一種の駆け引きだった。
「ぬうう……」
しかしキングへイルは恐らく初めて食らうであろう空中からの攻撃に対しても思いのほか冷静であった。
少しは焦りもあった。
しかしここで慌てふためいては相手を調子に乗らせる。
シギアは超高速落下状態でこれに賭けると言う気持ちと初めて出す攻撃の為決められるか容赦なく切れるか恐怖心が頭をよぎった。
「恐怖心に体が負けている!」
シギアは回想した。稽古の場面だった。
高校時代修行中、何度となく彼は指導教諭に言われた。
それは相手の間合いに飛び込んで無防備になってやられる怖さだけでなく、すごい勢いで相手を切り命を奪う「非情性」あるいは「残酷性」との戦いでもあった。
落ちるわずかな時間のみでも彼は恐怖心が遂に頭をのぞかせ勢いを何パーセントかそいだ。
俺は弱い、と彼は恐怖への負けを認めた。
ついにシギアがキングへイルの地上すぐ上の位置にいた。
あいつは受け止めに来るのかそれとも避けるのか。
流石のキングへイルも先程までの余裕はそがれどう対処するか決めかねている様だった。
そして、シギアは剣を出し垂直両断しようとした。
その残酷さに迷いはあっても今はこれしか自分には思いつかなかった。
はるか空中から剣で相手を真っ2つ、何て残酷なんだ、と彼は戦っていて実は負けていた、甘さ故だった。 それゆえ少し反応が遅れた。
キングへイルはさすがに手で受け止めるのは無理と考えたのか、体を横に逸らして避けようとした。
しかし剣は長い為そらしても剣は鎧に当たりそこから切り裂いた。
「おお!」
ドレッド達の声が上がった。
皆シギアの剣がキングへイルの鎧にものすごい勢いと共に切りかかるのを見た。
しかし手ごたえ、つまり鎧の厚さに対し肉へのダメージはどのくらいか。
「切れているのか⁉」
ドレッドは希望を込め叫んだ。
シギアの剣は鎧とわずかにかかっている肉を垂直に高速で切り裂いた。
「ぐおおお‼」
どの位効いてるのか分からないがキングへイルは叫んだ。
シギアも超高速で相手に突っ込む恐怖、そして残酷さ、効いているのか分からない恐怖と戦い自分では最大級に力を込め叩きつけた。
切りおろしの凄まじい力とスピードで鎧を上半身中切った。
「勝ったか?」
とドレッドは言ったがレオンハルトは
「いやまだやってない」
と冷静に言った。
シギアは、何て奴だ確かに切ったのに! しかしこいつの肉体だけでなくそもそも鎧がとんでもない硬さだ、一体何で出来てるんだ、と思っていた。
キングへイルは剣が鎧と少しの肉に突き刺さったままにやりとシギアを見た。
「俺を両断する事は出来なかった様だな!」
「うっ!」
シギアの顔に恐怖が芽生えた。
「まだだ!」
なんとシギアは切りおろし終わった場所から斜め上に切り上げようとした。
「す、すごい!」
「ぬ、ぬ!」
「ぐおおお!」
この切り上げに全てがかかっている。危機感から恐怖と圧迫、気迫全てに満ちた顔でシギアは切った。
しかしそもそもキングへイルはあまり血を流しておらず、それからも鎧のみ切れ肉体は傷ついていない事が推測出来た。
「がっ!」
ところがついにシギアは頭をつかまれた。
凄まじい握力だ。
一方アレーナは中程度の稲妻をけん制と攻撃に用いブルビ2世と離れた距離で戦っていた。
しかし相手は剣で避雷針の様に防いだり横にジャンプして避けたりし中々あたらない、そして距離を縮めて言った。
ブルビ2世はにやりとした。
「距離を縮めていけば私の剣で簡単に貴方は倒れる」
「……」
アレーナは出来る限り思惑や不安を悟らせない様にした。
その頃カーレルの治療をしていたクリウに彼は言った。
「クリウ、私はもういい、それよりアレーナに加勢しなさい。あの刺客が言う通り魔法使いは接近戦は不利だ。君の防御壁で防ぐんだ」
「……」
「行くんだ。私はもういい」
クリウは言葉を受けアレーナの元へ行きバリアで2人分の体をガードした。
「ぬっ! こしゃくな!」
一方シギアは頭を押さえつけられ何発も腹をすさまじい重さで殴られた。
血を吐くほどの威力だった。
そしておもむろに地面に投げ捨て今度は重い踏み付けで何発もシギアの腹に食い込ませた。
「がはっ!」
シギアはもはや飛んだ攻撃だけで体力を相当使い消耗はすさまじかった。
しかも相手に切りかかる恐怖心が心に負担をかけ修行で心の弱さが克服出来ていなかった事を認める辛さ、そして何より鎧の頑強さを含めたキングへイルの力に畏怖した。




