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天から落ちた最強だが性格が悪い最低ランクの勇者が地上で独立部隊パーティーの一員に任命され帝国と戦う  作者: 元々島の人


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レオンハルト対ドレッド

「あっ、この荷物持ってって」

 図々しい声が響いた。

「は、はーい」


 また、シギアは宝児に荷物持ちをやらせていた。

「頼むぞ荷物持ち」


 本人は悪気なく親しみを込めて言っているつもりだった。


 クリウはこれを見てさすがに怒った。

「やめなさいよ! またいじめて」


 しかし彼は悪びれていなかった。

 何と言うか本当に罪の意識が無い様だった。


「いやいじめじゃないよ。彼に荷物持ちとしての役割を与えてるだけだ」


 ったく、人使い荒いなあの人も、ちぇっ。

 と内心で思っていた宝児だったが思わず舌打ちする所だった。


 シギアは悪気なく言う。

「人生は下積みが大事、みんな最初はそう」

「あんたは最初からお客様待遇でしょ」


 レオンハルトは呆れていた。

「少し褒めたらまた元に戻りかけてるな」


 クリウも珍しく悪口を言った。

「褒められると安心するタイプかもね。それとももう忘れてるかも」


 宝児は僧侶の法衣とうさぎ帽の様な帽子を被る事になった。


 そこへ兵士の1人が呼びに来た。

「皆さん、2時から合同練習の時間です」

「よし、行こう」


 そして皆外に移動し屋外で勇者パーティは合同修練になった。

 まず始めに1対1で対戦形式で修練を行う。  

 

 レオンハルトとドレッド、クリウとアレーナ、そしてシギアと宝児の組み合わせになった。グライとコアは一騎討ちが出来ない為観戦になった。


 隊長が指示した。

 「じゃあ、最初の対戦はレオンハルトとドレッドから」


 そして、2人が前に出て円の中に向かった。

 歩く時の土と砂の音が空気を作り出す。


 レオンハルトとドレッドは場の中央まで移動していった

 そこから分かれ、竹刀を持って向かい合った。


 やはり、手合いの勝負では「はじめ」の合図の前には緊張感が漂う。

 ライバル同士ならなおさらだ。


 レオンハルトは彼自身生真面目な性格ながらも、相手が勝手知ったる関係であり実戦ではない事から幾分リラックスしていた。


 しかし、反対にドレッドは平静、リラックスを上辺では装っていても内心執念を燃やしていた。

 勿論、ドレッドに取ってレオンハルトが人格者である事は百も承知の上であった。


 そして「はじめ!」の合図と共に2人は向かい合った。

 にらみ合いの末にレオンハルトは先手を切った。


 ライバル同士だと最初は相手の出方を伺ったり構えなどで圧をかけて隙を探したり、誘い出そうとする物だ。


 素早さに関しては1日の長があるのはレオンハルトの方だが、この2人の対戦時はいつもドレッドは血気にはやる。


 「レオンハルトに勝ちたい」と言う気持ちを必要以上に燃やすのだ。

 執念、怨念、彼の生きる理由だ。


 それは今に始まった事ではない。学生時代からだ。


 彼が修練に激しく打ち込むのは半分以上がレオンハルトに負けたくない、勝つためだ。

 初対決では負けその後もしばらく負け続け、ドレッドは悔しがった。


 勝負を挑んだのは中学時代、ドレッドは一方的にレオンハルトに言った。

「お前の強さは噂に聞いている。俺と勝負しろ」

 レオンハルトは無言で答えた。


 その当時のドレッドは半分不良と呼ばれても仕方がない気の短さとすぐ他人を目ざとく思う卑小さがあった。


 細いのに強いレオンハルトが目についた。


 しかしレオンハルトの家柄が厳しく父親達に礼儀や剣術を厳しくしつけられている事は彼にとって知る由もなく知ったことではなかった。


 昔のドレッドはレオンハルトが突きが鋭く速いのは筋肉が優れていて鍛えている為だと思った。

 その為彼は負けた後激しく筋力を鍛えた。


 それに伴い筋肉と体格は上がった。


 しかし次の勝負から気づいた。柔軟さや技の切れ、瞬発力、体重コントロール等がレオンハルトの剣技の元である事を。


 しかしドレッドは筋肉が硬く柔軟性を付ける練習が合わなかった。

 そして、悔しさを激しく燃やし続け修練を続けその内何回かは勝てる様になった。


 ただやはり負け越している。

 その為、黒星を全て挽回し、その後の勝利を全て白星に近くする為彼は修練に励んでいる。


 実はドレッドは憎しみに近い感情をレオンハルトに抱いている。


 しかし普段はそれを言わない。

 何故なら卑小な人間だと思われ格下の人間だと思われるからだ。


 しかし彼の友人となり良かった事、楽しかった事は多くある。

 それも彼の人生に良い影響を与えている、だからこそ心がうずくのだ。


 結局彼は常にレオンハルトを見て技を盗める所は盗もうとしている。

 プライドを捨てて。


 しかし、今日の対決は先にレオンハルトが攻め手を切った。

 何故ならドレッドがいつも先制攻撃をついて来る為その逆を突いたのだ。

 

 レオンハルトは鈍感であるため、一応ドレッドのライバル心には気づいているがある種の複雑な憎しみを持っている事を知らない。


 レオンハルトの攻め、特に突きは速い、隙が無い、まだ新人に毛が生えた程度のキャリアにも関わらずその腕は同期生の中でも群を抜く。

 

 その様子を先輩騎士たちは見ていた。

「やはりあいつの腕は突出している。うらやましいくらいだ」

「いやねたむくらいですよ。もう我々とっくに抜かれてるし」


 そこへ隊長が来た。

「いや、才能だけじゃないぞ。あいつは何より陰で努力をしてるんだ。それだけじゃない少し細かいが几帳面で自分の服のわずかなすれも気づいて自分で良く直してるんだ」


「あ、そういえばよく植物に手入れしてますよね」


「く、くう」

 いつもは殆ど先に攻めるドレッドが後手に回った。

 ドレッドは大剣を防御にも上手く使う為防御も強かった。


 しかし1発を防げばすぐミリ秒単位で次の突きが飛んで来る。

 レオンハルトは様子見と相手の力を見る為細かい打突を出す。これが実に速い。


 ドレッドは必死に見切った。

 今までの練習の成果で。

 

 少しずつレオンハルトは弱く速い攻撃から重さのある攻撃にシフトチェンジしていく。

 その変化していく過程は余程腕のある者でないと気づかなかった。


 ドレッドは必死に自分も振りかぶらない細かい突きで対抗していった。

 そして、レオンハルトが少しずつ重い攻撃にしていけば負けじとペースを変えていった。


 必死に食らいつくとはまさにこの事だ。

「はっ、はっ! 俺は負けない!」


 ドレッドは血眼になっているのを隠した。それ位相手に弱い所を見せたくなかった。

「今ではスピードも瞬発力もお前に負けていない! 負けるはずがないんだ!」


 本当は力で押し切る自分の剣術で勝ちたかった。

 しかしそれだけでは勝てない事を今は分かっていた。


 激しく竹刀と竹刀がぶつかり観戦している物もどちらが勝つか分からなくなった。

 どちらかが劣っているようには見えなかった。


 「技はレオンハルト、力はドレッド」と言われても、ドレッドは技もスピードも身に着けるため練習してきた。その成果が出たと言ってよいだろう。


 しかし、やがて微妙なスピードの差が見えた。

 しかし一方、それが分かるほど今のドレッドは腕が上がっていた。


 そしてドレッドは防御を兼ねた水平払いでレオンハルトの突きを払って見せた。

 大振りをすればかわされやすいのは分かっていた。


 しかし、彼は技、スピードのレオンハルトに対して力であくまで勝ちたかったのだ。

 自分の中だけでなく誇示する為である。


 鍔がぶつかるとレオンハルトは冷静なのにドレッドは意地むき出しだ。一方的なライバル視だ。


 ドレッドは振りかぶり面を狙って行く。

 レオンハルトはギリギリまで剣を見つめ、体さばきでかわす。

 

 しかしドレッドは臆する事なく今度は間髪入れず胴打ちをしかける。

 これもレオンハルトはふせいだ。


 また45度の袈裟斬りを放つドレッド

 膠着から離れて突きを出す

 

 レオンハルトはこれも上手く体さばきでかわす。

 と言うような流れだった。


 ドレッドは思った。

 あいつは上半身に力が入りすぎたりつんのめったりせず、足に力を入れて突いたり移動したりしてるから強さがあるんだ。

 俺は力任せだったけど。


 少しドレッドの攻めが荒くなり振りかぶりや袈裟斬りをレオンハルトが払ったり体重移動スウェーでかわす。


 レオンハルトは構えを通じて圧をかけたが、ドレッドはそれに勘がさわり萎縮するどころか怒った。

 しばらく見ていた隊長は言った。


「うーん、そろそろ終わらせよう」

「えっ、何故ですか」

「勝負がつくとどちらかが傷つくからだ。



「次はクリウ対アレーナ、シギア対宝児君だ」

「えっ、シギア対宝児君って、宝児君がどうやって戦うんですか」


 隊長は微笑んだ。

「ふふ」


 シギアは言った。

「えっ? 宝児が俺とどう戦うんですか」


「むむっ」

と宝児はむっとした。


 隊長は言う。

「それらが終わったらお待ちかねの『あれ』だ」

「あれですか」


「ふふ」


一か所間違いがあり訂正しました。

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